・虐待された人の言動にはときどきびっくりしてしまう。ちょっと常識からズレている、仕方ないとは思うが…
・普通のルールを教えてあげたいが、どんなふうに教えたらいいのか…
そんな悩み(不安)を持って生きているあなたに、何かのヒントになればと思い、動画にしました。この動画のポイントは、
- 虐待された人は常識のない行動をすることがある。教えるときは工夫が必要。(前半)
- 虐待された人に、どのように支援していくのか、具体例を示しています。(後半)
■虐待された人は世間知らず

虐待(ネグレクトなど)をされてきた人々は、愛着障害があります。それによって、ちょっと常識を欠いた言動をするときがあります。そんな人に注意するとき、普通にアドバイスしてはダメなのです。次のようなツイートをしています。
【ネグレクト】されてきた人は、常識が分からなかったり世間知らずだったりします。それは親から教えてもらってないからです。例えば歯磨きしなかったり、早食いだったり。そういうときは、歯を磨きなさいとかゆっくり食べなさいと教えてあげるのはいいのですが、教え方には工夫が必要です。(ツイート改訂)
バンデューラによる社会的学習理論はモデリング理論とも言われ、「人は自分の体験だけでなく、他者の行動を観察し模倣することによっても学習する」というものです。つまり子どもは、親の行動を真似して成長していくということ。基本的なしつけは親から教えてもらうのですが、それがなかった場合、つまりネグレクトですが、基本的なルールを習得できないことになります。
しかし、親からのしつけがなくても、「他人の行動を観察・模倣」によって学習できるのは事実です。他人に教えてもらったり、本などを読むことで自分でそのルールを形成していく場合もあるでしょう。ただ、この場合は、親から教えてもらったものと違うので、身体にしみついたものにはなりにくいのです。親との情緒の交流をしながら得たものの大きさとは比べようがありません。モデリング学習の限界といえるでしょう。
親と情緒交流できていれば世間とズレることはありません。なぜなら子と情緒交流できる親は、人によって程度は違いますが、少なくとも世界と交流できているからです。子どもは、普通はそうやって常識と言われるものを身につけていきます。でも、ネグレクトされた子どもはそれができないため、別の手段を探してなんとか社会で生きのびようとしているのです。その血の出る努力を分かってあげること。そうすることで、どのように声をかけたらいいのか考えるきっかけになります。
ではなぜ、教え方や声かけに工夫が必要なのか。愛着障害の人は、自分の感覚や感情を感じないようにして生きているからです。感覚や感情が閉じていると、交流の仕方としては認知に訴えるしかなくなります。しかし人間というものは、感覚ー感情ー認知の3つがそろってはじめて機能する生き物なのです(下の関連記事のETC理論をご覧ください)。ですから、感覚や感情が閉じている場合は、それらを刺激して、それが開くような支持をするようなサポートが適切だからです。
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普通、ルールというものは、「こうするのだよ」というふうに教えられるのですが、そういうやり方ではうまくいかないのが、愛着障害の人へ対応していくうえで難しさとなります。では、どういうサポートがいいのか。
- 助言(アドバイス)のように教えないこと
助言するのは結構簡単でしょう。通常の人は、安心感をたっぷり持っているのでアドバイスされたとしても、自分を攻撃してきたとは思わないでしょう。愛着障害の人は、ここで被害的に受け取ることが多いのです。ですから好意で行ったアドバイスも、振りかざされた「刃」のように感じるのです。難しいですね。精神科医の先生方は、ついついアドバイスしがちです。ご注意を。この点、カウンセラーのほうが愛着臨床には適しているでしょう。
なぜなら、カウンセリングとはアドバイスしないことだからです。そういう経験を日々の臨床で積んでいるはずです。
- アドバイスせずに信頼関係を結び、
- アドバイスせずに安全基地を構築していくこと を常に行っているからです。
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実際にどのような言葉かけがいいのかを、次で見ていきましょう。愛着障害の人は世間知らずなために、特別な、味のある言葉を使うというのも事実です。まるで詩人のようです。その関連記事も張っておきます。お読みください。
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■愛着障害の人への言葉かけ

愛着障害の人は世間のことがよくわかってないので、常識を教える必要があるときもあります。そのときどう言葉をかけるか?次のようなツイートをしています。
ネグレクトされた人へは、【〇〇すると気持ちいいよ】と教えます。「歯磨きすると気持ちいいよ」とか「ゆっくり食べたほうが美味しいよ」とか。気持ちいいとか美味しいとかぐっすり眠れるとか。そういう安心した感覚へ訴える言葉を使ってください。これは結構ハードル高いと思いますが心理士必携です。
このツイートの通りです。アドバイスするときは、気持ちいい感覚に訴える言葉かけをします。この【気持ちよさ】こそ、愛着障害の人々が必要な【安全基地】なのです。
- 指示を出すのではなく
- 安心した感覚を刺激する言葉をかける
- 具体的には、〇〇すると気持ちいいよ、〇〇すると美味しいよ、〇〇すると楽だよ、〇〇するとホッとするよ、〇〇すると暖かいよ。〇〇するとひんやりするよ。〇〇すると懐かしいよ。
色々あると思います。ぜひその人のために考えてあげてください。そのときの注意点としては、押し付けにならないように。押し付けは、その人にとっては恐怖そのものです。注意してくださいね。いい言葉が浮かばなかったとしても、一生懸命に考えることだけでも、愛着障害の人にとってあなたは、安全な場所(人)になります。
◇思春期の言葉かけも同じ
思春期の子どもへの言葉かけも同じです。「〇〇しなさい」という指示は反抗しているので入りません。「〇〇すると美味しいよ」など、虐待をされてきた人への配慮ある言葉かけと同じように対応してみてください。きっと新しい関係が築けるでしょう。
■まとめ
愛着障害の人は常識が分からないこともあるので、その場合、押し付けにならないように教えてあげることが必要です。
そのときアドバイスにならないように声かけをする工夫がでてきます。
どうやってやるかというと、気持ちよさに訴えた言葉をかけてあげます。
虐待された人々が安全なかかわり、言葉かけの中で、安全基地を作っていけますように。

話をしていても気づきが促進されない場合は、ソレア心理カウンセリングセンター(埼玉県)へ