・小さい頃から過眠で、10代はほぼ寝てくらしていた。
・よく眠るが、これには原因があるのだろうか?単なるさぼりなのか?
そんな不安を持って生きているあなたに、何かのヒントになればと思い、記事にしました。この記事のポイントは、
- 過眠は3つの視点で考える。つまり、発達障害、心理的な過眠、睡眠障害。
- 心理的な原因と発達障害が影響する過眠に焦点を当てました。
■過眠いろいろ、発達障害によることも。
過眠は睡眠障害として捉えられがちですが、過眠にもさまざまな要因があります。特に、発達障害による過眠は見落とされがちです。次のようなツイートをしています。
【過眠】は睡眠障害ですが、睡眠専門外来でも過眠の原因を見逃す可能性はあります。特に発達特性については重要です。
— しのぶ@ソレア心理 (@soleapsy) August 31, 2020
・ADHD、ADD、ASDなどは要注意です。
・発達障害と日中の眠気の因果関係はまだ分かっていません。
・心理的な要因もあります。
このように広い視点での判断が必要です。
【過眠】は睡眠障害ですが、睡眠専門外来でも過眠の原因を見逃す可能性はあります。特に発達特性については重要です。
・ADHD、ADD、ASDなどは要注意です。
・発達障害と日中の眠気の因果関係はまだ分かっていません。
・心理的な要因もあります。
このように広い視点での判断が必要です。
ここ20年くらいに渡り、発達障害の知見も蓄積され、睡眠障害というよりも発達障害によるものとの診断が多くなってきています(*1)。
長期に渡る強い眠気をもつ人々は、幼少期から、次のような発達障害の症状のいくつかをもっているケースが少なくありません。
- 忘れ物が多い
- けがが多い
- 感覚過敏
- 不注意傾向(以上、ADHD)
- ほとんど一人遊びをしている(ASD)
過眠傾向は、小学校の高学年、中学校あたりから現れ、高校ではほとんど眠っているというケースもあります。
◇過眠、3つの視点
しかし、過眠は発達障害ばかりとは言えません。心理的な背景もあります。
【発達障害の睡眠問題】睡眠の問題がある人は、それが心理的なものなのか、器質的なものなのか、その切り分けがスタート地点です。睡眠障害専門医は発達障害に詳しい先生が少ないので、発達が疑われる人は、まず発達障害専門医への相談するのもありでしょう。
発達の視点から判断するのと、同時に心理的な視点からも検討する必要があるということです。つまり、下記の3つの視点が必要になります。
- 発達障害
- 心理的視点⇒PTSD(虐待)
- 睡眠障害
先に解説したADHDやASDのような症状があったとしても、すぐに発達障害とは診断できません。なぜなら、そのような症状は、虐待によることもあるからです。DSM-5によると、愛着障害の項目には、ADHDやASDと誤診することのないようにとの注意が喚起されています。
つまり過眠(あるいは不眠)が【幼少期】からある場合、心理的なものである可能性も浮上するのです。親御さんの養育状況へのチェックが必要になるでしょう。
■過眠~心理的な理由
睡眠障害は、もちろん、心理的な要因からくる場合もあります。不安や心配の大きいときは、眠れなかったり、ずっと寝ていたり、という経験は誰しもあるでしょう。次のようなツイートをしています。
【定型発達の睡眠問題】これは、心理的なものへのアプローチになります。睡眠外来は、睡眠衛生指導がメインになりますので、生活改善をしつつ、心理的なものへの改善に取り組むことになります。こちらはPTSDのことが多いので、薬では治りません。カウンセリングがメインになります。
発達の問題ではない過眠改善は、まず通常の睡眠リズムに整えて、プラスアルファで、心因に関しての治療が行われます。
睡眠指導は、睡眠習慣を作るうえで重要です。それをやった上で、心理的な背景の改善をしたほうがいいかどうかを決めます。
いいかどうかを決めるというのは、人によってはトラウマが大きい場合、時間もエネルギーもかかります。それをほじくり出さないほうがいい場合も当然あります。
トラウマの場合は、薬でどうにかなるというものではありません。長期にわたる支持的なカウンセリングが必要です。その時間と体力があるのか、本人がそういう回復を望んでいるのか、そのへんがポイントとなります。
カウンセリングに来られる方は、トラウマからの回復を望んでいるので、治療には前向きです。それでも、その部分を治療者が初回に、対話の中で確認したり、判断する必要があります。そこで相談者のみならず、治療者としての【お引き受けします】という覚悟も決まるわけです。
◇PTSDの治療方法
トラウマ用の心理療法があるから、そのパッケージを使えばいいじゃないか、という意見もあるでしょう。有名ところでは、認知行動療法系のEMDRやPE、ボディアプローチ系のSEやセンサリーモーター・サイコセラピーなどです。
治療者にとっての使い勝手のいいパッケージというのはあるでしょう。しかし、上にあげた療法では、良いところも悪いところもあるのです。パッケージ化した時点で、相談者に侵襲的に働くというジレンマがあります。
これはどういうことかというと、〇〇療法というふうに定義してしまうと、そこである程度の「やり方」が決定されしまうのです。ということは、治療者がそこから離れていくことができない、そこに縛られてしまって、その技法を使っていいのか悪いのかの判断がにぶるのです。結果的に、盲目的にそれを使うということが習慣づけられるかもしれません。
これを回避するには、治療者が常に、その技法に対して批判的になっていることが必要ですが、これはかなりのエネルギーを要します。もし、その場面でそのやり方がNGだと分かった場合、代替案に切り替えなければなりません。治療者が、それほどたくさんの引き出しを持っているか?と言えば、答えはNOです。
となると、心理療法という枠組みよりも【カウンセリング】のほうが侵襲度が低い分安全です。侵襲しなくても、お互いの信頼関係という安心感をベースに対話を続けていければ、こころの傷は改善されるからです。
これを集団で行うのが【オープンダイアローグ】です。これも心理療法ではないか?という意見もありますが、そうかもしれませんが、【操作的】な技法ではありません。その分、侵襲度は低いのです。オープンダイアローグは集団で行いますが、これは個人対象に行う【ナラティブ・セラピー】から出発しました。
ソレアでは、カウンセリングをやりますが、このナラティブ・セラピーの考え方がベースにあります。操作的にやっている部分は、①見立てを作るところ、②そして見立てに沿って方針を作るところ、です。そこまでできれば、あとはナラティブ・セラピー。相談者の物語が、カウンセリングリームの中を、治療者と共有されながら流れていきます。
■発達障害による過眠への対応
最後に、発達障害の過眠への対応を解説します。下記のようなツイートをしています。
【発達障害と日中の眠気】ADHDの不注意優勢型やASDに過眠タイプが見られます。中学あたりから顕在化してきて、高校になるとずっと寝ていることも。男女比では、女性に出やすいようです。この理由はまだ分かっていません。覚醒に関しての神経伝達物質が影響しているという仮説があります。
過眠症は、ナルコレプシーともいいます。楽しい話をしている最中でも、急に眠気が襲ってきて寝てしまう障害です。この症状を軽くするためにメチルフェニデート(リタリン)が使われます。医療用覚醒剤です。
このリタリンは、多動や注意欠陥にも効果があるため、かつてはADHDならリタリンと呼ばれるほど一択でしたが、乱用が問題になり使用不可になりました。現在はナルコレプシーにのみ使用されています。
ただ、ADHD特効薬として使われていた当時から、リタリンを使っても日中の強い眠気は改善しなかったのです。このようなことから、発達障害の過眠は、睡眠障害の過眠症とは違うものだと言われています。
【過眠】発達障害の場合は薬物治療も考えられますが、プラス睡眠衛生指導も重要です。生活全体から発達の不具合を改善していく感じです。過眠症から眠気による二次的な不注意症状が出ることもあり、その場合はADHDではないので、総合的な診断ができる医者にかかることが必要です。
発達障害の過眠に対しては薬物はあまり効果がないことが、経験上わかってきていますので、発達障害による過眠への対応は、薬物というより、適切な睡眠リズムを習慣化させることが主眼になります。
睡眠衛生指導(*2)とは、下記のようなものです。厚労省 健康づくりのための睡眠指針2014 (睡眠12箇条)です。
- 良い睡眠で、からだもこころも健康に。
- 適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
- 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
- 睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
- 年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
- 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
- 若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
- 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
- 熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
- 眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
- いつもと違う睡眠には要注意。
- 眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。
【光の利用】について:目覚めたらカーテンを開けて外の光を取り込み、入眠時は真っ暗よりは1~30ルクスくらいがいいそうです。ちなみに10ルクスがどの程度の明るさかというと、本は読めず相手の顔がかろうじて見える。Barのカウンターや上映前の映画館程度の明るさです。
発達障害の眠気は頑固で、薬でも効果がないことも少なくありません。つまり医療用覚醒剤でも覚醒しないことも多いのです。キーは【興味がないことをやろうとすると突然訪れる強い眠気】がくること。だから【好きな勉強では眠気を感じない】のです。この部分から生活を改善していく道筋を考えましょう。
過眠症は、ナルコレプシーでした。この過眠状態とは、楽しい話をしている最中でも、急に眠気が襲ってきて寝てしまうこと。それとは違って、発達障害の過眠は、「興味があることには眠くならない」でした。ここに発達障害の過眠対策の答えが隠されています。
つまり【興味のあることをする】です。しかし、それではできないものも出てきてしまいますね。
- 興味のあることから、興味のないことへつないでいく戦略が必要になってきます。
- そして興味のないことをすると、急速に眠気が襲ってくるので、適度に興味のあるものを混ぜてやっていくことです。
例えば、過眠気味の、プログラミングが好きで、メール処理が苦手な、発達障害の人を想定して考えます。次のような戦略が想定できるかもしれません。
- プログラミングを30分やる
- メールを10分(←苦手なものをはさむ)
- またプログラミングを30分やる
- 事務処理を10分(←苦手なものをはさむ)
睡眠が襲ってくる時間は個人差がありますから、自分に合わせて、ギリギリの時間まで苦手なことをサンドイッチしていくような感じです。
■まとめ
過眠には3つの要因を考えることが必要です。
- 発達障害
- 心理的視点⇒PTSD(虐待)
- 睡眠障害
心理的な理由からくる過眠はPTSDの治療になります。薬ではなくカウンセリングで回復させます。
発達障害による過眠は、
- 睡眠衛生指導
- 興味のあることに、興味のないことを短時間サンドイッチする工夫をしましょう。
過眠で生活がままならないあなたの苦しみが、少しでも減ることを祈っています。
Reference:
(*1)すなおクリニック:睡眠障害から発達障害へ https://sunao.clinic/qa/archives/276
(*2)厚生労働省: 健康づくりのための睡眠指針,2014
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
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