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ソレア心理カウンセリングセンター

2020.07.09(更新日:2020/07/13)  |愛着とトラウマ(虐待)

愛着のバトンタッチ~ゆりかごから墓場まで【愛着障害の理解のために】



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先日こんなツイートをしました。










通常、親との間にできた愛着は、中年期以降冷めていきます。その代わり、自分の今の家族(子どもやパートナー)との愛着が定着し(←訂正しました)、成長します。こうやって愛着のバトンタッチの起こる時期が中年期。これ以降、親との関係は野球で言うと、消化試合になります。メインシーズンは今の家族に移ります。






人間の成長というものを愛着という視点で眺めました。今回はかなり専門的な話になります。さらに【愛着の発達】という、ほぼ研究されていない分野です。今回の話は臨床心理士として、臨床の現場で、のべ2万人の悩みを聴くなかで学んできたものです。いま時点での知見としてのまとめです。いずれ心理学会で発表します。専門家の方々のご意見など、ぜひ伺いたいです。





心理職のみなさんは、この記事を理解したうえで相談者の話を聴くと、相談者の理解が進むでしょう。見立ても立てやすくなります。この標準的な愛着発達の知見があれば、この標準から外れた話を聴いたときに、愛着不全や愛着障害を見立てやすくなりますし、どう対応したらいいのかも、自然と分かってきます。





今回の内容について、まとめから入ると、次の3つが重要です。





  • 愛着は世代間連鎖する(虐待は世代間連鎖しない)
  • 自分の親との愛着は中年期に薄れ、薄れた分、自分の子どもとの愛着が強くなる
  • 老年期には、自分の子どもとの愛着が薄れる




前半では、幼少期に形成された親との愛着が、成長過程でどのように変化していくか、標準的な定型ケースを解説します。





後半では、定型ではないケースを簡単に解説します。





■愛着は世代間連鎖する





愛着を子と結べる親というのは、【子どもと情緒交流のできる親】ということです。標準的な親はこれが可能です。何か教育して身につくものではありません。標準的とは、だいたい肌感覚ですが、人口の60~70%くらいでしょうか。





愛着とは、別名でいうと【基本的信頼感】です。2歳までに親との間に形成される絶対的安心感です。安全基地とも言われるものですね。子どもにもともと備わっている愛着のスイッチがONして、親との間で愛着形成がスタートします。正式にいうと、胎児の時期からそれは始まっていますね。





ですから、愛着形成はマイナス1歳~2歳までの3年間ということになります。





そしてこの愛着は世代を超えて連鎖していきます。連鎖というと悪い意味にばかり使われますが、良い連鎖ですね。





では、この愛着の連鎖を受けなかった子ども(愛着障害の子)や愛着が不完全だった子ども(愛着不全の子)は、自分の子どもと愛着を結べるのでしょうか?





結論は、イエスです。両者とも結べます。なぜなら、情緒交流の図れない親というのは、ある種、脳機能に障害がある親だからです。ですから、その子どもが脳機能に障害がなければ、親からの愛着は足りなかったのですが、自分の子どもに対しての愛着は注げるわけです。愛着というのはDNAに刷り込まれた行動ですから、DNAが壊れてなければ、スイッチはONします。





ということは、脳機能に障害のある人は、そのDNAのスイッチがOFFのままで、一生ONしないということです。





これは子どもにとっては自分のファンタジー~いつか親は僕のことを分かってくれるはず~を壊すことになりますが、それも自分の回復には必要なことなのです。





ともあれ、愛着は連鎖します。子育てに悩んでいる愛着障害の人々にとっては、これは大きな希望でしょう。





◇虐待は世代間連鎖しない





愛着は世代間連鎖していきます。つまり、脳機能に問題がなければ、遺伝で受け継がれていくのです。心理的な話ではありません。





一方、虐待については、心理的な話として、世代間連鎖がすると誤解されていますが、これは誰が言い始めたことなのでしょうか。





厚生労働省が虐待家族の政策として「家族再統合」を打ち出しているので、虐待は心理的なものでないと困るのでしょう。心理的なものなら虐待行動は治り、再統合可能ですから。児相もこの政策に従っています。その結果、虐待事件を少なくすることができていません。関連記事もご覧ください。





▼家族再統合という幻をめぐって★千葉県野田市の虐待死事件から





虐待は世代間連鎖しません。しているように見える場合は、器質的な別の要因があります。器質的なものをチェックするというのは、精神医学上、第一選択肢となるはずなのに、なぜか虐待については、それが順守されていないところに、大きな矛盾を感じます。





器質的な問題がなく、しかし虐待行動があった場合に、初めて心理的な背景を探っていくという行動が発生します。なぜ虐待をしたのか。いまこそ、器質因→心因という古典的な診断方法に立ち戻るべきでしょう。





■自分の親との愛着は中年期に薄れ、薄れた分、自分の子どもとの愛着が強くなる





(冒頭に紹介したツイートの記事は、この部分を書いたものです。)





中年期とは40代が中心で、30代~50代の30年弱あります。人生で一番長い時期と言っても過言ではないでしょう。この期間は何をするかというと、自分で活躍しながら同時に次世代に色々なものをバトンタッチしていくのです。





このバトンタッチの中に愛着があります。今回の記事のタイトルですね。【愛着のバトンタッチ】





中年期には、親との間で形成した愛着が薄れていきます。その分、自分の子どもとの愛着が濃くなるのです。この時期は、子育ての真っ最中です。ですから親との愛着が、自分の子どもへ完全にシフトするのです。愛着のバトンタッチですね。





親へ向けられていたものが子どもへ方向転換する。愛着の充足方向が180°変わる。親との愛着は、これ以降、消化試合です。もうメインシーズンではなくなります。これは非常に健康的です。





世代間で愛着がこうやって連鎖します。この連鎖はDNAに仕込まれたものです。脳の機能障害のない限り、このスイッチはONし、愛着の方向が変わっていきます。





バトンタッチというのは素晴らしい仕事ですが、これは大きな変化です。それゆえに中年期は不安定な時期でもあるのです。関連記事も参照ください。





▼中年期は果たして最悪の時期か?【幸福曲線と愛着曲線の違い】





■老年期には、自分の子どもとの愛着が薄れる





そして60代、70代と、人生の終焉期に入ってくると、自分の子どもとの間で作っていた愛着が薄れていきます。なぜなら愛着が薄れないと、この世に執着してしてしまって、あの世へなかなか行けません。





あの世へ旅立つために、愛着のスイッチはときどきOFFするようになります。そのことについては、あれこれと考えなくなります。愛着が切れているときは、この世に生まれてきたことも忘れてしまいます。そしてやがて寿命がやってきます。完全に愛着スイッチがOFFします。





ここまでが標準的な愛着の発達ですが、後半は、定型ではない人々の愛着や、子どもがいない人の愛着の発達について解説します。





■愛着に問題のある人はどうなる?(非定型の愛着を生きる人)





ここで問題になってくるのは、愛着障害の人と愛着不全の人です。





  • 愛着障害の人は、親との間に愛着を作れなかった人です。安心感が希薄です。
  • 愛着不全の人は、親との間に愛着は作れていますが、親の精神的成熟度が不完全で、自分の愛着を正常に発達させることができなかった人です。




◇愛着障害の人





愛着が初めて登場するのは20代以降です。つまり出産・子育てのとき。そこで初めて「愛着」とは何かを体感的に知ることになります。自分が経験したことがないので、非常に恐怖です。





子どもとの愛着は、それでもなんとか作っていきます。子どものことは怖いのですが、ドライな母性という、母性のようなそうでないような感じですが、でも正真正銘の母性を発揮しながら子育てをします。





子育ての体験を通して彼女の愛着は育ちます。けれど、なかなかクールな愛着です。そのへんが精いっぱいですが、まぎれもない愛着です。





愛着障害の人は、こうやって愛着を回復させるのですが、回復というよりも成長ですね、クールな愛着は変わりません。クールゆえ、老年期になっても別に薄める必要もなく、そのまま死を迎えます。簡単に切れていきます。自然とあの世へ行きます。





何もないところから愛着のようなものが浮き上がってきて、プカプカしているうちに死を迎えるような感じでしょうか。定型愛着の人とは全く違う愛着の成長をまっとうします。(そうなんです。【まっとう】するのです。)





◇愛着不全の人





愛着不全の人は、中年期に入ると子育てが難航します。なぜなら愛着の成長が思春期あたりで不完全に停滞している人が子育てをしているわけですから。





子どもが小さいときは、子どもとの関係は悪くはないのです。両者とも子どもの精神構造で接しているからです。友だち親子です。しかし子どもが思春期に入ってくると、子どもは大人の精神構造になろうとし、親へぶつかってきます。そして、愛着不全の人は、この子どもの行動に対して(反抗期)、どう対処していけばいいのか分からなくなります。





定型愛着の人は、この時期に親との愛着が薄れますが、愛着不全の人は、親との愛着をまだまだ求め続けます。不完全な愛着を完璧にしたいと強く望みます。それは叶わぬ夢だと分かっていながら、強い飢餓感を持ち続けます。





この欲求は中年期を過ぎても持ち越します。親に甘えを求めているので、子どもを甘やかすこともできません。子どもに集中すべき年齢なのに、それができないのです。





ここで確認をしておくことは、子どもに集中するというのは、手取り足取り面倒を見るということではありません。子どもと距離を置きつつ、子どものことを見ているということです。【待つ】体制で見ている。そして子どもから相談されたら初めてそこで相談に乗る。これが思春期の子どもへの集中の仕方です。話を元へ戻します。





自分の飢餓感に自覚的でない人は、周囲の人を混乱させながら自分はそのままで人生を終えることができます。素晴らしい人生だったと、勘違いしながら終えられます。この場合、実際、本人的には幸せなのです。周囲から見たら「痛い人」ですが。





しかし、飢餓感を自覚してしまったら、ある意味、愛着障害の人よりも厳しい人生になるのです。この場合、一人ではどうしようもできないので、熟練のカウンセラーを探してください。「痛い人」から離れていくので、難儀なカウンセリングになります。





自分を見つめて、この飢餓感を持った自分と一緒にやっていこうと覚悟ができれば、不思議と飢餓感は収まっていきます。そこでやっと、標準的な愛着発達の人と合流します。しかし、長期戦にはなります。





■子どものいない人は、社会へバトンタッチ





子どものいない人も、幼少期に親との間で標準的な愛着を作ることができれば、標準的な愛着の発達を遂げます。子どもへのバトンタッチができないので、定型の愛着発達ではないと考えるのは間違っています。





そのような人は、子どもへバトンタッチする代わりに、【社会へバトンタッチ】する傾向があります。標準的な愛着発達の人に比べて、他人へ貢献することが多くなります。





他人への貢献については、関連記事も参照ください。
▼【自己肯定感】を高める最終兵器(ラスボス)はコレ!~自分編





社会とは、その人が生活する地域社会のこともありますし、その人が所属している会社のこともあるでしょう。分かりやすい例でいうと、部下を育てるということもあるし、自分の仕事の領域で貢献するということもあるでしょう。街角に立って、緑のおばさんをやって小学生を見守るということもあるでしょう。





子どもがいない人は、そうやって社会へ積極的に出ていくのが、精神衛生上良いことです。





■まとめ





親から受け継いだ愛着は、子どもへバトンタッチされていくという話でした。親との愛着が薄れ、子どもとの愛着が強まるのです。





そのバトンが渡される時期は【中年期】。そのために中年期の人生リスクは高まるのです。





後半では、愛着に問題のある人と、子どもがいない人の愛着発達について話しました。





  • 愛着障害の人は、その生涯の前半は愛着ゼロを生きますが、成人期以降はクールな愛着の世界を構築し、その世界をまっとうし、死を迎えます。
  • 愛着不全の人は、愛着の飢餓感にさいなまれますが、それが収まれば、標準的な愛着発達へ合流します。
  • 子どものいない人は、社会へ貢献していく中で、愛着を発達させていきます。




愛着というものは、生まれてから死ぬまでずっと持ち続けていくものです。あなたの人生が、どうぞうまく行きますように。





今回の関連記事は、
▼タマシイの発達―前編
▼タマシイの発達―後編





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