こんにちは、高間です。
これまで、のべ2万人の悩みを聴き続けている、マインドフルな臨床心理士です。
この記事は、毎日を健康に生きるエッセンスをお伝えします。
・自分は幼稚なのではないかと、ときどき思う。
・ドラマ「35歳の少女」を見ていると、なぜだか分からないが苦しくなる。
・「35歳の少女」って、いったいどういう人なのだろう?
そんな悩み(疑問)を持って生きているあなたに、「35歳の少女」症候群から抜けるためのヒントを記事にしました。この記事のポイントは、
- 成人の数%は「35歳の少女」である(前半)
- 「35歳の少女」を「35歳の女性」にするには?(後半)
つまり「35歳の少女」は実在するのです。そしてそれは「35歳の少女」症候群といえるほど、同じような特徴があるのです。
■成人の数%は「35歳の少女」!
日テレのドラマ「35歳の少女」はフィクションではありません。次のようなツイートをしています。
35歳の少女は、柴咲コウ主演のドラマ。35歳だがこころは10歳という女性。これはあり得ない設定でしょうか?
実はカウンセリングをしていると、そういう感じの人は来ます。
どういうところで分かるかというと、こころは10歳なので大人のような葛藤がありません。こういう人には、怒りとさみしさをケアしていくと年齢が進み出します。(ツイート改訂)
10歳のとき事故にあって意識が戻らなくなった少女。その25年後、35歳のときようやく意識が戻ってみると、家族には問題が山積み…。そんな設定のフィクションが「35歳の少女」です。設定はちょっと変わっていますが、家族の物語と見れば、結構、普通のドラマです。
あえていうと、目が醒めてから急速に主人公の精神年齢が進んでしまうところがフィクションですね。もしもドラマのような事故があったとしたら、思春期を過ぎていくことも長時間かかりますし、精神年齢が進むことにはならないかもしれません。つまり自分で精神年齢を10歳のままでストップさせるかもしれません。
なぜなら35歳で思春期を始めるとなると、そこを抜けるまで15年かかるとしたら50歳すぎまで荒れ狂う時間を過ごすわけで、それは体験している人にとっては、リスクが高すぎるからです。周りの人もついてこられないでしょうし、当人はその中で孤立していってしまう。長い精神的な不調の時期を過ごさねばならず、そんなことにならないように、無意識が精神年齢を10歳のところでストップさせるでしょう。
◇本当の「35歳の少女」とは?
しかし驚かれるかもしれませんが、実際、カウンセリングの現場では、そんな35歳の少女がやってきます。それは【精神年齢が学童期・思春期あたりでつまずいている人々】です(*1 成人学童期を参照)。このような人は、このドラマのように【こころが10歳】なのです。また「35歳の少女」は女性にも男性にもいます。
学童期は、こころの葛藤はありません。親から受け継いだ、学校で習った倫理規範(生き方)がすべてで、それがすべて「善」ですから、それを信じています。だから葛藤する余地がありません。
思春期に入るとその規範に疑問が生じてきます。それによって親への反抗が始まります。学習してきた生き方に疑問を呈しての反抗ですので、これは成長していることになります。
しかし、これはまだ葛藤までいきません。「なんだか分からないけれどムカつく!」そんな感じで葛藤の一歩手前です。だから、葛藤という視点で考えると、学童期も思春期もだいたい同じだと分かります。「10歳の少女」としてしまっていいのでしょう。
◇なぜ10歳で止まってしまうのか?
それは親から引き継いだ倫理規範が、10歳でストップするように仕組まれているからです。規範は別に物質ではありませんので、DNAというものはありません。だから遺伝とはいえません。
しかし、物質世界を離れて、精神世界を考えると、精神のDNAというものはまだ発見されていませんが、子どものこころは親の精神構造を引きずってしまうシステムになっているのです。それを紐解くキーは【愛着】です。
愛着の糸を通って、親の精神構造(生き方)が子どものこころにインストールされるからです。子どもは親の倫理規範を愛着を介して学習していくからです(*1)。ですから、もし親の精神年齢が10歳の頃でストップしていたら、子どもも同じようにその辺りでストップします。
子どもは成長したいのですが、親からの精神年齢の世代間連鎖でそれ以上進むことができなくなり、ムカムカした苦しい時代をすごすことになります。そして、そのムカムカの原因がよく分からないまま年だけ重ねます。そして「35歳の少女」になります。これは男性も同じ。「35歳の少年」です。
愛着の糸が切れていればインストールされることはありませんが、それはそれで過酷な人生が待ち受けています。つまり虐待という領域に足を踏み入れることになるからです。「35歳の少女」とは違う苦しみに悩まされます。
◇ドラマのように精神年齢が進むには?
「35歳の少女」のドラマでは、自然と精神年齢が進むように設定されていますが、現実はそう簡単な作業ではありません。なぜなら、止めている葛藤を進ませる必要があるからです。それは苦しい作業になるため、誰もそちらの方向へは行きたくもないでしょう。
気づかなければずっと「35歳の少女」でいられますが、それに気づいてしまったらもう後には戻れません。できるだけ早いうちに、それが扱えるカウンセラーを探して、一緒に【大人の自分】に出会う旅に出ることです。早ければ早いに越したことはありません。
■「35歳の少女」は3タイプいる
「35歳の少女」のように見える人でも、実際はそうでない人も多いのです。では「35歳の少女」を含めて、それに見える人はどういう人なのでしょうか。
- 35歳の女性(こころの年齢が20~35歳):この人たちは、ある意味、普通の人々です。少し思春期でつまづいている人もいますが、こころの年齢は成人にまで達しています。生きづらさが残る場合もあります。カウンセリングでこれまでの人生を整理していきましょう。
- 35歳の少女(こころの年齢が10歳):この人たちが、今回の35歳の少女です。好きでこの年齢でストップしたわけではありません。親との空虚な葛藤を抱えた、この人なりの人生のストーリーが存在します。綱渡りの人生です。回復は、怒りの感情、さみしさの感情に直面していくこと。
- 35歳の幼児(こころの年齢が2歳):被虐の人々です。でも2歳では生きていけないので、なんとか形は成人を装っています。それが見破られないように他人を避けています。愛着障害からの回復が必要です。
■実際に「35歳の少女」をどうやってケアするのか
ではどうやって「35歳の少女」から「35歳の女性」へ持ち上げていくのか?皆さん知りたいところだと思います。精神年齢を発達させるには、
- 感情へアクセスします
思春期を通過できていないということは【怒り】の問題が、未消化、未噴火な状態ということです。ここで一発、大噴火が起きることが必要でしょう。それは相談者にもカウンセラーにもリスクの高いことですので、できるだけ避けたいでしょう。カウンセラーもかなり熱風の中に放りこまれるわけなので調子を崩すかもしれません。
そこを2人で、ボロボロになりながら耐えていくのです。相談者にとっては、そういうふうに自分を支えてくれる人は初めてかもしれませんね。親子関係ではないけれど、それに近いものがそこで生まれます。その信頼関係が、「次の感情」の段階では重要になってきます。次の感情とは、
- 【怒り】⇒【さみしさ】
怒りがある程度、通常域へ戻ってくると、次にやってくる感情は【さみしさ】です。ヒリヒリとさみしい。この感覚はACの人ならお馴染みのものかもしれませんね。
さみしさは怒りとかなり近い感情です。また恐怖とも隣接しています。
- 【怒り】←→【さみしさ】←→【恐怖】
さみしさと恐怖を感じつつ、また怒りに戻ったり。この振り子は何度も続くでしょう。怒りの噴火だけでは済まなくなります。ブラックホールの淵にたたずんだような、引きずり込まれそうな恐怖も味わうでしょう。さみしさによって、カウンセラーへのしがみつきが強くなります。そこをカウンセラーは共依存にならないように、クールに対応しなければなりません。そうでないと共倒れになってしまいます。怒りのときに培った信頼関係がここでは威力を発揮するでしょう。クールに対応していても相談者が安心できるという信頼関係です。
こうやって、10歳の頃につまずいてしまった感情をケアすることで、精神年齢が進んでいくでしょう。
■自分のペースを見つけて、そのペースを守る。
精神年齢を進めるのは結構大変な作業です。ドラマのように自然に進めばいいのですが、そうはいきません。次のツイートは、その大変さを表現したものです。
年齢を重ねてから思春期のような行動をしないといけなくなっているのは、とてもつらくて苦しいことですね。
そんな人に出会うと、できるだけ早く(こころが)成人してほしいと願わざるを得ません。
しかし、急にジャンプすることはできないので、自分のペースでやるしかないですね。急がずにやりましょう。
自分のペースが大切ですね。相談者の人も真面目にカウンセラーに従うのではなく、自分のペースを見ておくべきです。
「35歳の少女」はこころが10歳で止まっているので、だいたいにおいて【完璧主義】です。そして正解を必ず求めます。小学校では正解を考えさせますね。あれです。「モノゴトには正解が必ずある」という完璧性です。
だからカウンセラーの言うことには盲目的に従います。これはカウンセラーにとっては都合がいいかもしれませんが、カウンセリング的には失敗です。
なぜなら、この関係は、精神年齢を進めないからです。自分で責任を取るところから遠くなってしまいます。
- 多くの判断をカウンセラーに頼ってしまっている
- 正解はすべてカウンセラーが与えてくれると思っている
この状態では「35歳の少女」のままなのです。そこは本人は自覚がないので、ちょっとくらい冷たいと思われてもいいので、カウンセラーはブレないことです。
カウンセラーに盲目的に従うことによって、しんどくても頑張ってしまいます。これはこれまでの親子関係の再現になってしまいます。それと同じことをカウンセリングルームでもやっている。これではカウンセリングが動きません。
そのためにはマニュアルを手渡さないことです。ということは、「35歳の少女」を回復させるためには、マニュアル的に実践する【認知行動療法は適さない】ことになります。ただ全く利用できないかというと、そうでもなく、精神年齢が20歳くらいを越えてきたら、感情の問題はクリアしているので、認知的なアプローチも効いてくるでしょう。
◇「35歳の少女」症候群にならない人
「35歳の少女」という症候群について述べてきましたが、終わりに、親との愛着はあるのに親の幼稚な部分を引きずらない人もたまにいるという話です。
非常にまれですが、愛着関係があるのに親の精神年齢を抜いていく人がいます。これは心理的側面から見ると珍しいことです。何が影響してそうなるのかはよく分かりません。チカラがあったとしか言いようがないのですが、このチカラとは何なのか?今後の臨床的な研究が待たれます。なんとなく思うのは、
- HSPのメリット
が効いているのかもしれません。HSPとは、いわゆる「超敏感さん」ですが、この超敏感は【マイナスに敏感】および【プラスに敏感】の両局面を持っています。生活で【プラスに敏感】な部分を使っていければ、HSPは大きな強みになります。「35歳の少女」症候群に十分なり得る人がそうならないのは、このHSPの【プラスに敏感】を使っているのかもしれません。
■まとめ
「35歳の少女」実際にも、成人の数%に存在します。なぜ彼女たちが10歳でこころをストップさせたのか。それは親から「ストップさせるように」引き継いだものだからです。これは無意識的な話ですので、意識的に動かそうと思っても思うようにいきません。
しかし「35歳の少女」はカウンセリングの現場にも登場します。ですから、ちゃんと治療方法はあります。ポイントは【自分の感情の確認を何度も経験すること】です。時間はかかりますが、カウンセラーとともに歩んでいきましょう。
「35歳の少女」が自分に出会って、「35歳の女性」になりますように!幸運を祈っています。
Reference:
(*1)高橋和巳:「母と子」という病, ちくま新書, 2016
自分が「35歳の少女」かもしれないと気づいてしまった人は、ソレア心理カウンセリングセンター(埼玉県)へ