こんにちは、高間しのぶです。
これまで、のべ2万人の悩みを聴き続けているマインドフルな臨床心理士です。この経験から得た知恵をシェアします。
・自分は虐待されて育ったから、育児がとても心配だ。子どもはちゃんと育つのだろうか。
・自分は子に対してとてもドライで、ちゃんと愛情をかけて育てられているのか。
・虐待は連鎖するという話を聞くたびに暗い気持ちになる。
そんな疑問(不安)を持って生きているあなたに、この記事を読むと、虐待は連鎖しないことが分かります。子どもの頃、虐待されて育った育児中のママは安心してくださいね。
この記事のポイントは、
- 2つの大きな愛着研究について(前半)
- 研究結果を分析すると愛着スタイルは連鎖していかないことが分かった(後半)
※この記事は、精神科医・高橋和巳先生の児童虐待の研修で使うガイドブック(*1)を中心にして、高間が臨床で得た知見を若干追加しながらまとめたものです。詳細を知りたい方は、高橋先生の専門家を対象にした研修へご参加ください。申し込みはこちらです。
■2つの愛着研究
下記の関連記事では、虐待は世代間連鎖するという根拠はあいまいであることを示しました。この記事では、最新の愛着研究によって、世代間連鎖は否定されるものである、ということを解説します。
▼関連記事
【虐待】は世代間連鎖しない。つまり虐待心因説は間違いだった
愛着研究において、特に愛着の連鎖について、重要な研究が2つあります。SSPとAAIです。
◇SSP(ストレンジ・シチュエーション法)
実際にSSPとはどうやるのか。英語のYouTubeですがリンクを張っておきます。だいたいのイメージがつかめればOKです。やり方は今回の記事では重要ではないので、見なくても大丈夫です。
The Strange Situation | Mary Ainsworth, 1969 | Developmental Psychology
ボウルヴィによると、愛着とは子どもの恐怖回避の行動であり、親への親密さを求めるものです。その親密体験よって子どもにストレスがかかったとき、そのストレスを緩和できるのです。
この子どもの行動には4つの【愛着パターン】があることが示されました (*3)。
エインズワースによるこの研究は、SSP(ストレンジ・シチュエーション法)と呼ばれています。上の動画がそれです。また彼女によって【安全基地】という概念が生み出されました。4つの愛着パターンとは、
- 回避型(A):愛着を求める行動を最小化して、母親との距離を保ったまま維持する。岡田尊司氏は、このパターンの子どもは「安全基地をもたない」と言うが(*2)、現場で会う人々は、母親を安全基地としている。実際、母親も安全基地の機能はしている。しかし、それが非常に脆弱である
- 安定型(B):母親に適切に愛着を求める行動をする
- 両価型(C):愛着を求める行動を最大化して、母親の注意をひく
- 無秩序型(D):愛着を求める行動を最小化したり最大化したりして、その行動に一貫性がない。なぜなら親の行動が理解できないからである。結果、子どもは、愛着ということを理解できないでいる状態。
この愛着理論は1980年代に入って、大人へも拡大されました。
◇AAI(成人愛着面接)
それがAAI (Adult Attachment Interview) です(*4)。子どもの頃の愛着パターンは、彼らが大人になってから親密な関係を作るときに、大きな影響を与えるということが分かりました。つまり、夫婦や恋人関係、あるいは親友に対しても、【愛着スタイル】があるのです。
子どもは愛着パターン、大人は愛着スタイルと、使い分けされています。子どもは、親との間で、1つの愛着パターンを繰り返していく中で、生き方にまで固定されて、スタイルになったというイメージです。
大人の愛着スタイルは「不安」と「回避」の2次元で考えることができます。この組み合わせで大人の愛着スタイルは4つに分類されています。
- 愛着軽視型(回避型)(Ds, Dismissillg):不安は低いが、他人から距離を置く愛着スタイル。しかし、育児は放棄しない。
基本、他人を信用していない。子どもが求めてきても、避けようとする傾向がある。親として価値がないと思っている。 - 安定自律型(F):不安が低く、回避もない、健康的な愛着スタイル。他者と問題なく親密な関係を持つことができる。
子どもと自分の関係について肯定的に語ることができる。子どもに危険が迫っているとき、それを取り除く行動ができる。 - とらわれ型(不安型)(E):不安が高く、相手にしがみつく愛着スタイル。他者からの評価が重要で、見捨てられ不安が強い。
行動的に動けるが、子どもの行動の意味を理解できない。子どもの危険を察知できない。 - 未解決型(U):不安が高く、他人から遠く距離を置く愛着スタイル。恐れ・回避型ともいう。回避型と不安型の両方の質が高まった状態とも解説されています。
子どもを保護する能力がない。あるいは、子育てできないと、いつも思っている。
ここまで、愛着パターンと愛着スタイルについて解説しました。ここからは、それらの関連性を見ていきます。
■愛着パターンと愛着スタイルは連鎖しているのか?
結論からいうと、連鎖するものもあり、連鎖しないものもあります。下図を参考にしてください。
まず、親の愛着スタイルに応じて子どもがどのような愛着パターンを獲得するかを解説します。それが下になります。この獲得率は70%という高い確率で達成されます。
- Ds(愛着軽視)型→A(回避)型
- F(安定自律)型→B(安定)型
- E(とらわれ)型→C(両価)型
- U(未解決)型→D(無秩序)型
次に親から受け継いだものを、子どもは受け継ぎ続けるのか?つまり、親からの(負の)遺産に子どもは影響され続けるのかを考えます。これが世代間連鎖といわれるものの正体ですね。もし、影響され続けるとすれば、子どもは成長すると、親の愛着スタイルを継承することになります。つまり、下記の仮説が成り立ちます。例えば、「Dsスタイルの親に育てられた子どもは成人になるとDsスタイルになる」と推論できます。
・Ds→A→(Ds)?
・F→B→(F)?
・E→C→(E)?
・U→D→(U)?
しかし、研究結果では、確実に連鎖するものは1つだけであることが分かってきました。【安定したものだけが連鎖する】ということです。
- F(安定自律)型→B(安定)型→F(安定自律)型
つまり、「安定した愛着スタイルを持つ親に育てられた子どもは、安定した愛着パターンを獲得し、彼らが大人になると、安定した愛着スタイルを獲得する」のです。この連鎖は、家庭の環境や経済状況に影響されません。【安定した愛着関係は、世代間を渡って連鎖していく】という結果です。
これは考えてみれば当たり前のことかもしれませんね。心理的に安定した場所は、安全基地になり得ますので、子どもにとっても生きやすいはずです。安定します。
では、他のA, C, D型のパターンはどのようになるのでしょうか。子どもの頃不安定であっても、成人するとF(安定自律)型に移行するという結果が出ています。
- Ds(愛着軽視)型→A(回避)型→F(安定自律)型
- E(とらわれ)型→C(両価)型→F(安定自律)型
- U(未解決)型→D(無秩序)型→【統制型】
A型とC型の子どもは、なんと!30%ほどが、親から受け継いだ不安定型の愛着スタイルを、自分の中で変容させて、安定した愛着スタイルを獲得するのです。
自分の中で処理できなくても、周りの環境(サポーティブな人間関係)からの影響をうけつつ多くのA型やC型がF型へ変容します。成人になってから、カウンセリングを受けたり、友だちや配偶者に恵まれたりしながら、F型へ変えていく人もいます。
◇D型の変容【統制型】について
ここで特筆すべきは、D型の子どもです。人生の早期、イヤイヤ期のあたりからD型という自分自身に変更をかけて、小学生の頃には親子関係を逆転させて、自分で生きていくという道をたどりながら、自分の過酷な人生にコミットしていきます。この愛着スタイルを【統制型スタイル】といいます。
安定自律とは言えませんが、自律はするのです。D型の子どもも親の愛着スタイルであるU型にはなりません。統制型になるのです。F型にはなれなくてもそうやって人生を生きていきます。もちろんD型の子どもも、成人してから、カウンセリングを受けたり、友だちや配偶者に恵まれたりしながら、F型へ変わる可能性はあります。
ただD型の子どもは、幼いうちから人をコントロールしようとします。そうしないと生きていけないためです。支配、従属、操作の3つのコントロールがあるとされています。
- 支配:攻撃や罰を与えて、人を動かそうとする
- 従属:親の反応をみながら、親が嬉しがるように、親に合わせて動く
- 操作:相手に同情や反発を引き起こし、相手を思い通りに動かそうとする
このD型を主人公にした小説や漫画はたくさんありますね。衝撃的な人間関係を作るため、題材になりやすいのです。私が一番記憶に鮮明に残っているのは、1970年ジョージ秋山による漫画「銭ゲバ」です。最近では松山ケンイチのドラマにもなりましたね。あの物語自体は虐待とは少し意味合いが違うかもしれませんが、主人公の生き方は統制型そのものです。
まとめると、次のような連鎖をしていくのです。つまり、親のスタイルがそのまま世代間継承されるわけではないことが分かります。
- Ds(愛着軽視)型→A(回避)型→F(安定自律)型
- F(安定自律)型→B(安定)型→F(安定自律)型
- E(とらわれ)型→C(両価)型→F(安定自律)型
- U(未解決)型→D(無秩序)型→【統制型】
関連記事は、今回の記事をコンパクトにまとめたものです。
▼関連記事
愛着パターンは世代間連鎖するか?【4つの愛着パターンから考える】
虐待の世代間連鎖の発生率を予測した報告では、「子ども時代に虐待を受けた被害者が親になると子どもに虐待を行う」という傾向が指摘されています(*5)。世の中にはびこる都市伝説【虐待は連鎖する】を指示するレポートです。しかし、以上の研究結果より、その報告は否定されました。
■愛着スタイルと愛着パターンを深堀りする
ここからは、愛着スタイルと愛着パターンについて深掘りしていきます。
- その愛着スタイルを持つ親は、具体的にはどういう人なのか?どのような人格を持っているのか?あるいは何か障害があるのか?
- その愛着パターンをもつ子どもの愛着形成はどうなるのか?
◇愛着スタイルと人格および障害について
- Ds(愛着軽視)型: 愛着障害を抱えた親。神経症的傾向、対人恐怖傾向がある。知能的には正常だが、母親としての感情表現が極めて苦手である。
- F(安定自律)型: 知能的に正常で、子どもとの感情表現が豊かにできる。母性の良い面、悪い面を自覚している。悪い面とは、「子どもを守るために社会と敵対することもある」こと。
- E(とらわれ)型・不安型: 境界知能域(IQ70~85)あるいは正常知能域(IQ85以上)の親。子どもの情緒反応が分からず、安全を確保できない。【社会的ネグレクト】などのネガティブな心理コントロールをする。このE型の一部が、いわゆる毒親にあたる。
- U(未解決)型: 一般的には、恐れ・回避型と同じように用いられることが多い。軽度知的能力障害(IQ50~70)あるいは正常知能域(IQ85以上)の親。分かりやすい4つの虐待(心理的、身体的、性的、ネグレクト)が生じている。いわゆる毒親がここにあたる。(しかし、まれに例外もあり)
世間でいう「毒親」は、毒親自体の定義があいまいですが、「E型の一部&U型」であると推論できます。
現在では毒親の定義が拡大されて「E型&U型」を毒親と呼んでいる場合も見受けられます。毒親についての詳細は、ソレアの人気記事もお読みください。
ここで着目すべき愛着スタイルは、Ds型です。愛着障害を抱えているゆえに、【愛着はあるが、愛着関係が薄い】のです。そのため、厳しめのしつけ、育児になって、周囲の人からみたら虐待との誤報をされてしまうこともあります。このDs型の愛着スタイルを持つ親は子どもの頃、E型、U型の親に育てられた人々です。つまり虐待の中を生き抜いてきた人々です。
◇愛着パターンと愛着形成
- 回避型(A):母親との愛着は、希薄だが形成はされている。
- 安定型(B):正常な愛着関係が形成されている。
- 両価型(C):愛着形成がない、あるいは不完全。母親を安全基地として接しようとはするが、母親側にその能力が欠如(あるいは不足)しているので、結局、安全基地が見つからず、愛着形成に失敗する。
- 無秩序型(D):愛着形成がない。母親を安全基地にできないことを、はじめから分かっているので、親にそれを期待せず、自分でなんとか生きていく。典型的な愛着障害といえます。
C型、D型の子どもが被虐児になります。A型は被虐児とは言いません。ただ、A型を被虐と見る向きもあり、その視点で見てしまうと、母親側の育児がもっと大変になっていきます。
なぜなら母親側の対人恐怖傾向が加速されるからです。その結果、親子ともに社会から分断されていきます。親子とも社会から遠いところで、ひっそりと生きなくてはならなくなり、親子心中の危険性が高まります。
▼関連記事
親子心中は【虐待】による死なのか?愛着からみた心中の原因を探る
■不安定な愛着スタイルは1つへ統合できるのか?
大人になって獲得する不安定な愛着スタイルについては、次のような言い方もされますが、これまで説明してきた不安定な愛着スタイルを別名で呼んだものにすぎません。
- 回避型:Ds(愛着軽視)型と同じです。
- 不安型:E(とらわれ)型と同じです。
- 恐れ・回避型:U(未解決)型と同じように用いられることが多いが、回避型が強くなったものとも捉えることができます。後者の意味で用いるなら、回避型の亜流ともいえます。もともと回避型の人が年齢とともに恐れ・回避になっていく場合もあるように感じる。(高間の場合、後者の意味で使うことが多いです)
現場での不安定な愛着障害の見立てを詳細に検討すると、私の肌感覚というあいまいさはありますが、不安定型の愛着スタイルは【回避型(Ds愛着軽視)】に集約されていくようです。その理由を解説します。
◇回避型はソーシャル・ディスタンスが得意
一般的に【回避型】の特徴としてあげられているのは、
- 親密さを求めず距離を置く(いつもソーシャル・ディスタンス)
- どんなことに対しても醒めている
- 自己表現が苦手、感情表現も苦手、だから極力相手に合わせる
- いつもひきこもりたいと思っている
- 恋愛に希望をもっていない
- パートナーの痛みは理解はできるが、共感できない
これらは愛着障害の核心的な特徴です。つまり回避型愛着スタイルをもつ大人は、虐待の中を生きてきた人の特徴と似ている言ってもいいかもしれません。
◇恐れ・回避型は人間嫌い
これとは別に【恐れ・回避型(U未解決)】の特徴としては、回避型をさらにバージョンアップさせたような印象があります(高間の臨床体験からの試論です)。回避型と別のスタイルではなくて、回避型から連続しているようなイメージです。回避型と恐れ・回避型は1つのスペクトラムと見ることもできるでしょうか。恐れ・回避型は、より被虐に近いイメージがあります。回避型と違う特徴は、
- 極端に疑りぶかい
- 被害感がかなり強い
- 人間嫌い
臨床的には、回避型が修正されずにそのまま年をとっていくと、恐れ・回避型になるようにも感じます。人間嫌いが加速します。治療は、回避型で収まっている状態で行うべきでしょう。そのほうがリスクが少ないのです。
恐れ・回避型については、下記の追加記事を書いています。是非ご覧になって、一般的に言われている、「不安型と回避型の両方をアンビバレントに合わせ持っている」という誤解を解いてください。
◇不安型は見捨てられ不安が強い
一方、【不安型】の特徴としては、相手に合わせる、見捨てられることへの不安が強い、すぐに恋愛関係に入りやすい、甘えたい、依存体質である、パートナーに手厳しい、求める気持ちと拒絶する気持ちが併存している、などです。
この愛着スタイルは、愛着障害というより、愛着が不完全な場合(愛着不全)の特徴、あるいは軽度知的機能障害、境界知能の特徴と言えるかもしれません。あくまでも私の試論ですが、不安型(Eとらわれ型)愛着スタイルは、虐待とは別枠で考えたほうがよさそうです。つまり、不安型愛着スタイルは、
- 愛着はあったが不十分な(条件付きの)愛情の中で育った(アダルトチルドレンの特徴に近い)見捨てられ不安が大きい。
- あるいは、知的能力が少し低い
ただ、不安型の特徴の中でも、回避型にも該当するものがあり(表面的に恋愛モードに入りやすい、相手に合わせる、手厳しいなど)、不安型というものは、愛着スタイルとして独立しているものではなく、色んな愛着スタイルの要素が混在したものではないか、という疑問も生じます。
つまり不安型愛着スタイルについては、境界性パーソナリティ障害の診断基準のような、様々な病態をとりあえず1つに押し込めてしまおうというような、少々無茶な感じを受けます。AAIを分析したとき、統計的にどのような因子分析をやったのか興味のあるところです。
実際、不安型愛着スタイルの人の特徴としてあげられる「見捨てられ不安」は、境界性パーソナリティ障害の特徴としても顕著であり、この2つは重なる部分がありそうです。
そのように考えると、実際の現場としては、愛着障害の愛着スタイルは【回避型】、この1本でいいのかもしれません。いまのところの結論は、
- 愛着障害の愛着スタイルは、【回避型】に集約される。
- 不安型愛着スタイルは、愛着障害には入れずに別物として考える。
しかし、ここは流動的に考えなければならないケースも存在する。つまり不安型愛着スタイルで愛着障害のケースもある。
不安型愛着スタイル(愛着不全)の人は、流れ者でいる、ドイツ語圏(自己主張の激しい言語圏)への留学というトリッキーな方法も回復に役立つかもしれません▼
◇不安定型愛着スタイルという考え方
岡田先生(*2)は、安定型愛着スタイルと不安定型愛着スタイルという2本立てで考えています。安定か、不安定か、この2軸です。そして、この不安定型愛着スタイルで傷が激しいものを愛着障害と呼んでいます。つまり、下記の順で愛着障害の度合いが高まるというのです。
- 安定型愛着スタイル > 不安定型愛着スタイル > 愛着障害
そして、愛着障害と不安定型愛着スタイルの2つを合わせて「愛着スペクトラム障害」としています。治療はこの2つに対して行われます。
私の場合は、愛着障害と不安定型愛着スタイルを(一応)分けて考えています。不安定型愛着スタイルの場合は、愛着障害ではなく、愛着不全であると考えています。愛着不全とは、ACあるいは高橋先生の「成人学童期」に近いイメージです。
愛着不全という概念は一般的ではないので、今回の記事に照らし合わせると、不安型愛着スタイルに近いと言っていいでしょう。岡田先生のいう「不安定型」ではないことに注意してください。3つの愛着スタイルである、「回避」、「不安」、「恐れ・回避」の中の1つである「不安型愛着スタイル」です。つまり、
- 安定型愛着スタイル
- 愛着障害
- 不安型愛着スタイル
この3つは、別物であって、治療する方針も異なってくる。ということです。岡田先生と比べると私の場合は、愛着障害を「狭く」限定していることになります。
岡田先生は2本立てで「広く」愛着障害を考えていて、私の場合は3本立てで「狭く」考えている感じです。狭く考えている分、的確にターゲットにアプローチでき、治療効果も高いと考えます。
しかし岡田先生の愛着スペクトラム障害という考え方は、毒親というものを考えるには使い勝手のよい概念です。毒親の概念が拡大している現在、愛着障害の捉え方も変化を余儀なくされているのかもしれません。捉え方が広くても、狭くても、方向性が合っていて、治療方針も合流していけるなら、それが相談者には一番の福音になることは間違いないのですから。
また肌感覚なのですが、この不安型愛着スタイルの人が年を取ってくると、「超不安型」のような愛着スタイルになっていくようです。回避型の人が年齢とともに、恐れ・回避型になっていくような感じです。
■まとめ
2つの大きな愛着研究の結果を分析すると、安定した愛着は連鎖していくが、不安定な愛着は連鎖していきません。一般的に言われているような世代間連鎖はありません。
また大人になって獲得する愛着スタイルですが、現場の肌感覚ですが、不安定なものは、回避型1つに集約されていきます。不安型は愛着障害というより、見捨てられ不安がベースの、愛着が不完全な場合の、愛着スタイルと言えそうです。アダルトチルドレンの典型的な特徴と言えるかもしれません。
※児童虐待について10本の記事をまとめたものを書いています。そちらから各関連記事に飛んでいただくと網羅的にゼロから理解していただけます。
▼虐待について【まとめ記事】
虐待されてきた人々がゼロから生きるために知っておくべき10ステップ【まとめ】
残念ですが、虐待はなくなりません。私たちにできることは、
- 虐待されている人々をいかに救い出して、いかに回復させるか です。
Reference:
(*1)高橋和巳:児童虐待防止 支援者のためのガイドブック(改訂第2版), 2017
(*2) 岡田尊司:愛着障害, 光文社新書, 2011
(*3)Ainsworth, M. D. S., Belhar, M. C., Waters, E., & Wall, S.: Patterns of attachment: A psychological study of the strange situation, Lawrence Erlbaum Associates Publishers, 1978
(*4)Main, M., Goldwyn, R., & Hesse, E.: Adult attachment scoreing and classification system, University of California at Berkeley, 2002
(*5)Oliver JE : Intergenerational transmission of child abuse: rates, research, and clinical implications. Am J Psychiatry, 1993
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