ネガティブ感情の起伏が激しいとき|コントロールするのでなく味方につけよう

こころカフェ(最新の心理学)
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臨床心理士・公認心理師の高間しのぶです。埼玉県志木市のソレア心理カウンセリングセンターでカウンセラーとして働いています。

・情緒が不安定になりやすい
・感情はコントロールできるのか?
・ネガティブ感情を整えたい
・怒りが半端なくて困っている

こんな疑問や悩みを持っている方がこの記事を読むと、

・主なネガティブ感情のもつメリットを理解できます。それによってネガティブ感情との上手な付き合い方が分かるでしょう。

感情はコントロールできません。しかし「上手に」付き合うことはできます。

恐怖と怒りについては音声配信もしています。ラジオを聴きながらお読みください。

今回ご紹介するのは4つの基本的な感情、恐怖、怒り、かなしみ、孤独です。私のツイートを紹介しながら、これらのネガティブ感情のメリットをお伝えします。

メモ

感情は、本来、ポジティブもネガティブもありませんが、今回扱う感情に関しては、一般的にネガティブなものという認識がありますので、便宜的にネガティブ感情と呼んでいます。

■恐怖はクール

【感情を味方につけよう】恐怖はクール。恐怖があることによって沈着冷静な判断ができるようになる。例えば、登山。頂上をアタックするか、涙をのんで撤退するのか。その勇気ある判断の源になる。生きて帰ってナンボの世界☺

恐怖があるからこそ、人は目の前の情熱に突き動かされずに、適切な判断をすることができます。

情熱は人間が生きていく上では、何かしら活動をする上では必要なものです。目標を達成するためにも情熱というエネルギーは必要です。しかし、それによって命を落とすことさえあることも事実です。

このツイートの例のような冬山登山を想像してみてください。あと少しで頂上というとき、吹雪で進路さえ見えない。頂上へアタックするか引き返すか。このとき必要なものは「恐怖」です。そこでは、情熱はもう必要ありません。恐怖によって正しい判断ができるのです。あなたの命を救ってくれるのが「恐怖」。

恐怖はかなり根源的な感情で、かなり早いスピードで起動します。また日常全般に渡って、大なり小なり影響を及ぼしている感情です。これが人生全般に影響を与え続けるものが、愛着障害やPTSDですね。ここまでくると、恐怖もやっかいなものになりますが、それらは適切なカウンセリングをすれば改善していきます。諦めなくてもいいですよ。恐怖が、通常のレベルくらいまで下がってくれば、この恐怖のメリットを活かすことができるようになります。

情熱に掉さす「恐怖」は、クールですね。

ムーミンでいうと、あのスナフキンのクールさを想像してみてください。親近感わきませんか?

◇恐怖のレベルとは?

さて、恐怖の通常レベルって何でしょう?恐怖と安心感の関係について書いた記事があります。リンクを張っておきますので、詳しくは記事をお読みください。

簡単にいうと、恐怖が「月モデル」から「地球モデル」に変化することです。

普通の人は、地球モデルのように、恐怖の周囲が分厚い安心感でおおわれています。まさに地球が大気でおおわれているイメージです。宇宙の中で地球がたっぷりの水をたたえていられるのは、この大気のおかげです。大気=安心感なのですね。この安心感は、基本的信頼感とも言われます。普通、2歳までに構築されるものと言われています(E.H. エリクソン)。

このたっぷりの安心感を得るためには、あなたの安全基地をしっかりと作っていくことです。安全基地はそう簡単にはできませんが、安全基地といっても、

  • 具体的なもの
  • 人間関係
  • 無形のもの 等

3つのレベルがありますが、できるところから、ゆっくりと構築していきましょう。何度も、洪水のような恐怖に安心感が押し流されてしまうこともありますが、あせらずに、ゆっくりといきましょう。

■怒りはパワー

【感情を味方につけよう】怒りはパワー。夏の入道雲を見ていると、そのエネルギーに圧倒されるが、あれが怒りのパワーです。しっかりイメージして怒りを味方につけましょう☺家族の呪いの系譜を融かすには怒りのパワーが必要。怒りのマグマは恐いけれど、そこへ近づく勇気を出そう。

感情の中でもっとも瞬発力が半端ないのが「怒り」です。下手に触れると吹き飛ばされそう。爆弾処理班になった気分です。

けれど「家族の呪い」を吹き飛ばすには、怒りのパワーが必要です。皆さんが一番怖いのは何でしょう?心理面接をしていると、一番怖いものに良くぶち当たります。それは何か?一番怖いのは、家族代々に伝わる呪い、家系に封じ込められた呪いです。まさに孫子の代まで祟(たた)られている。貞子みたいなやつですね。では、この呪いとは何でしょう?それは簡単にいうと、

子どもの気持ちを分かってあげないこと

この親から受け継いだ呪いは強烈です。大したことがないように見えるかもしれませんが、もっとも伝染力の強い呪縛なのです。これを吹き飛ばすには「怒り」という水爆級の超メガトン爆弾が必要。つまり核融合くらいのエネルギーが必要。

ですから、怒りは呪いを吹き飛ばすパワーといえます。これが怒りの正しい使い方です。

◇怒りは恐怖も吹き飛ばす

また、怒りのメリットは呪いだけでなく、恐怖を吹き飛ばすこともできます。

例えば、何か殺傷事件に巻き込まれたとします。実際に巻き込まれただけでなくても、本を読んだり、映画を見たりしていてもリアルに恐怖を感じることがありますね。

このときに感じる恐怖は半端ないでしょう。この恐怖のまま、こころが凍りつくと、その事件から生還できたとしても(映画を見終わったとしても)、恐怖がこころの中で凍りついているので、日常生活に支障が出てきます。

ぼんやりしたり、視線が合わなかったり、突然泣き出したり…。これはPTSDですね。

この恐怖感情の凍りつきを阻止するためには、怒りで加害者に立ち向かう必要があります。ガツンと加害者に水爆を落として一瞬のうちに蒸発させるような感じです。この世に痕跡を残さないくらいに加害者を抹消する。骨さえも蒸発させる。どうでしょう、スッキリしませんか?錯乱している加害者に対して、ピンポイントでレーザービームのようなパワーを集められるのは、怒りの感情しかありません。

怒りを使って、いま生きている世界に生還しましょう。怒りはあなたを救うパワーです。

◇怒りを抑えきれないときは…

怒りがパワーであることは体験として分かるが、それでもどうしようも抑えきれない。そんな場合も、往々にしてあるでしょう。

気持ち(怒り)が収まらないときは、1人旅をして、自由気ままな時間を過ごしてみましょう。夏だから涼しい高原などに行くのがおススメ。主体的に考えてイキイキと動いてみると、気持ちも落ち着くでしょう。

このツイートの一番伝えたいところは、

  • あなたに「自由」を与えてみる(例えば、気持ちのいい場所への旅)
  • 主体的に、イキイキと動く

これによって、怒りが一時的に収まっていく場合があります。これは主体的な行動ですので、怒りをガマンさせているわけではありません。ですから、この行動によって怒りが隠れてしまうことはありませんので、安心して試してみてください。

◇怒りは出さなければならないときがある

怒りを出すことが必要なときがあります。たとえば、

  • 不当にバカにされる扱いを受けたとき
  • いじめの対象にされたとき
  • ハラスメント(パワハラ、アカハラ、セクハラ)を受けているとき

こんなツイートをしています。

バカにされることに慣れてしまっていると、怒ってもいいところでヘラヘラしてしまいます。あなたに友だちがいたら、友だちが代わりに怒ってくれるかもしれませんね。友だちに感謝しましょう。でもバカにされることには慣れないほうがいい。友だちに感謝しつつ自分の「怒り度」を再チェックしましょう。

ヘラヘラしたほうがその場をやりすごすことができるので、それも戦略の1つですが、そればかりだとあなたの内側へ怒りが蓄積していって大爆発を起こす可能性があります。たまには、怒りを放出させていることが重要です。

それには日頃からマインドフルネスを実践しつつ、自分の「怒り度」を日常的にチェックする習慣をつけることは有効です。何か違和感を感じたら自分の感情をチェックしてみるのです。その方法は、

  • あ、ここに怒っているのだなと思ったら、いったんそこで怒りを出してみる
  • 自己主張をしてみる
  • その後で、どうして自分はすぐに反応できなかったか、それをマインドフルネス的に眺めてみる

マインドフルネスは慣れが必要です。数年くらいの余裕をもって習得できるまで取り組んでみてください。

◇怒りの段階を早く通過する人もいる

怒りの問題を抱えてカウンセリングにやってくる人は多いです。実際、怒りが問題であると気づいていない方でも、カウンセリングを継続していく中で、自分の怒りに気づかれる方も多いです。そのくらい怒りの問題は難しく、根深く、越えていくまで時間がかかるものです。

怒り→かなしみ→あきらめ、感情はこのように進みます。怒りのピークが越えている状態、あるいは怒りの総量が比較的少ない状態でカウンセリングへ来られる人は、かなしみへ移行するのも早く、あきらめへの到達も早いようです。あきらめへ到達できれば、向こう側へ行くドアは開きます☺

このツイートにあるように「かなしみ」にいかに早く到達できるかが、怒りを通過するポイントになります。「かなしみ」とはワンワン泣いているかなしみではなく、こころの底のほうからじんわりとわいている、そしてあなたを潤してくれる暖かい「かなしみ」です。

このかなしみに到達するのが早い人もいれば、遅い人もいます。どうして人によってそういう差がでるのか?私のいまのところの結論としては、抽象的になりますが、怒りの総量の問題と思います。

怒りと出会って、怒りに身も焦がれて、そして怒りを通過していく。怒りの総量が低いと、怒りの段階に決着をつけるのも長くはかからない。怒りの段階で長くとどまっている人は、「怒り→かなしみ」の感情のサイクルが何度もグルグル回っています。なかなか決着がつかない。そういう場所で停滞をしています。

でも諦めないで行きましょう。怒りの段階は必ず通過し、次なる深い「かなしみ」に到達するのですから。

■かなしみは暖かい

【感情を味方につけよう】かなしみは暖かい。こころの底のほうからわき上がってくるかなしみは、こころ全体をハグするように優しい滋養の雨を降らす。その雨は暖かい。春雨のように濡れて行こう。

かなしみは、こころの最も深いところからわき上がる感情です。清水の流れる川にわき出しているような感情です。ピュアな感じ。こころにしみじみと染みわたってくる感情です。それゆえに「暖かい」。

ツイートでは、春雨に例えていますが、春雨に濡れるのは気持ちがいいし、冷たくもありません。

ヨーロッパの人は雨に濡れて歩くのが好きですね。いまどきの意見だと、雨に濡れるのを拒否する人が多いでしょうか。なるべくなら雨に濡れたくない。雨を否定するわけです。けれど、実際、雨に濡れるのは心地の良いことです。昔の人はそのことを理解して雨に濡れていました。

かなしみも同じです。かなしみは否定したくなると思います。できるならかなしみは遠ざけておきたい。すき好んでかなしくなるなんて変だと思うのではないでしょうか。それは雨と同じです。雨の心地よさを知らないからそう言うのです。こころの最深部からわき出るかなしみ、それは誰でも経験したことがあると思います。そのかなしみは心地良いものです。

  • 雨に濡れて行こう、かなしみに濡れて行こう。

こころの最深部というものは安定しています。なぜなら、こころのいちばん底には、暖かい「基本的信頼感」がしっかりと根付いているからです。あなたが2歳までに養育者との関係の中で獲得してきたものです。かなしみを経験するたびに、その信頼感や安心感が、何度も、何度も確認されるのです。

かなしみは、しみじみと暖かい。

◇信頼感、安心感のない方は…

暖かいかなしみを体験するには、こころの深部に安心感が必要でした。この安心感、普通なら誰のこころの中にもありますが、それが十分でなかったり、まったくなかったりする人がいます。愛着に問題のある家庭で育った人々です。

そんな人は、自分のこころの中に安全基地を作っていく作業が必要です。安全基地はほっておいてもできるわけではありませんので、愛着の問題に詳しいカウンセラーに相談するのが良いでしょう。安全基地の作り方については、「恐怖」の項目で紹介した記事を参考にしてください。

安全基地ができれば、ホッとできます。ひとりでもホッとできる。孤独も怖くなくなります。

■孤独は重力

【感情を味方につけよう】孤独は重力。あなたの存在を背後から支えている大いなる力。谷川俊太郎は「万有引力とはひき合う孤独の力である」(二十億光年の孤独)という。あなたという人がこの世界に生まれ落ちると孤独はもれなく付いてくるが、それによって引き合うことも始まるのだ。

物理学では、この宇宙には4つの力があるとされています。重力、電磁力、強い力、弱い力。その中でも重力は最も基本的な力とされています。アインシュタインは、重力にすべての力を統合することを夢みていました。

孤独はその重力のようなもの。孤独を身に付ければ百万馬力(鉄腕アトム)でしょう。孤独という重力は、感情の要です。あなたがひとりでこの世界にやってきたときすでに、孤独という、切り離せないものと一緒にあなたは存在を始めています。

孤独がない世界は、この世のどこを探してもありません。もしそのような世界があるとすればそれは、幻想の中でしか見つけることができないでしょう。このような意見は、とてもシニカルに映るかもしれませんね。しかし、谷川氏は断定しています。

  • この孤独があるからこそ、引き合うことが始まる

これは重力と同じですね。重力があるから引力があるのです。引力はお互いに引き合っているわけなので「愛着」と考えられます。重力は、つまり孤独は、愛着と切っても切れない関係なのです。孤独があるからこそ愛着がある。この孤独と愛着にテーマをしぼって書いた本があります。

「孤独と愛着」は私の著書です。よろしければどうぞ。

■インサイド・ヘッドに描かれる感情

ディズニー・ピクサーのアニメ「インサイドヘッド」(原題は、Inside Out)は、私たちの脳の中にある感情たちを主人公にした映画です。登場する感情は、恐れ (fear)、怒り (anger)、ムカつき (disgust)、かなしみ (sadness)、喜び (joy) の5つ。

原題は「裏と表」という意味です。何がオモテとウラなのか?「それぞれの感情は別の感情と裏表になっている」という意味です。つまり感情は単独で作用しているわけでなく、複数の感情が補完しあって「気持ち」という一体化したものを作っているという話。

例えば、人と別れてかなしみを感じているとき、その人との楽しかった時間を思い出したりして、余計にかなしくなったりしますね。これはかなしみと喜びを同時に感じているからです。かなしみのほうが大きな感情ですが、わずかに喜びも混じっているので、そのコントラストで余計にかなしいのです。

変な例えになりますが、スイカに塩をかけると甘くなります。味覚さえ、そのような複数の味が補完して味わい深い味を演出するのです。

そしてこのインサイドヘッドは、かなしみと喜びの関係性(補完性)がテーマとして描かれています。かなしみと喜びは表裏一体になって、お互いを支え合っているのです。つまり、かなしみがないと喜びが分からない。喜びのためにはかなしみが必要…。

感情には体験していく順番があります。どういう順番かというと、

  • 不安→怒り→恐怖→かなしみ→絶望→孤独→楽→喜び

これらの感情は、もちろん行ったり来たりしつつ進行していきます。例えば、怒りのところで紹介したPTSD。怒ったけど怖くなった、でもそういう自分にもムカついて…というように、行ったり来たりしつつ進んでいきます。この順番を見ていただくと分かりますが、かなしみを体験したあとに喜びが来ます。つまりかなしみという隠し味がないと喜びを感じにくいということです。

感情の順番については関連記事をお読みください。

■まとめ:感情を味方に!

・恐怖はクール
・怒りはパワー
・かなしみは暖かい
・孤独は重力

感情はやっかいなものですが、どの感情もなくてはならないものです。それくらい感情のもつ役割は大きいのです。邪険にせずに、仲良くやっていきましょう☺

感情の取り扱いに困ったら、ソレア心理カウンセリングセンターへ 相談する

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