【認知行動療法 CBT】の効果は何歳くらいからあるのか?

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・認知行動療法をやっても効果を感じられない
・ワークブックをやるのがイヤだ
・やりたくないことをやらされているようだ

こんな悩みをお持ちのあなたへ。あなたは何歳でしょうか。

結論から言うと、認知行動療法は、少なく見積もると【25歳~40歳】に対して有効な心理療法と言えます。幅を持たせると、20歳~50歳くらいはイケるかもしれません。

シンプルにこれだけですが、衝撃的な内容かもしれません。ガイドの臨床心理士がお伝えするこの知恵は、のべ2万人の悩みを聴くなかで学んだものです。その理由をもう少し深堀りしてみましょう。

■認知行動療法(CBT)の適用年齢

まずここで確認しておきたいことがあります。前提条件として必要なことです。

ここでいう年齢とは、実際の年齢(Chronicle Age)ではなく、精神年齢(Mental Age)のことです。

普通の人はCAとMAがほぼ同じですが、心理的な課題を抱えた人は、それが一致していないことが多いのです。MAのがずっと若くなる。実際は40歳だが精神年齢が10歳ということもあり得るわけです。

心理職は、実年齢と同時に、この精神年齢も見立てておく必要があります。このMAを元にして、心理療法を進めることになります。つまり認知行動療法を適用するかどうかを決定することになります。

■成人期に達するまでは認知行動療法は効果がない

Young man shaking his head
そ、そんな、馬鹿な…

このことは精神科臨床が長いセラピストにとっては周知の事実です。精神科医の先生たちも暗黙の了解事項として扱っている方も少なくありません。斉藤学先生や高橋和巳先生などは、その著書(*1)でも言及されています。そうでない先生もいますので、そこは心理職の方は空気を読んでの対応が必要です。

成人期というのはMAでいうと、25歳以降といえます。それまでは思春期=青年期であり、アイデンティティが形成される前段階です。アイデンティティというのは社会的な倫理規範を意味し、それが形成されるということは、その人の生き方が決定するということです。

そうやって生き方が決定されると、その決定されたものにたいして認知療法を適用できるようになります。決定されていないものに対しては、変えようにも変えるべき認知が曖昧なままですので、認知行動療法は効果薄になります。

つまり認知行動療法が使えるのは25歳以降ということになります。ポイントは【アイデンティティの形成時には認知行動療法は使いにくい】ということです。ここを押さえておいてください。中年期の危機でも登場しますから。

◇倫理規範

ここでのキーポイントは【倫理規範】というものです。分かりやすく言うと、その人の生き方ですね。倫理規範は次のように成長します。

・まず学童期の中で、親の倫理規範を学んで、それを基準にして社会と関わろうとします。これが小学生です。親からの借り物の規範の中で生きています。

・親から受け取ったものが自分のものではないので、それを変えていかないと苦しくてしかたがありません。だからそれを壊そうとします。これが思春期です。親へ反抗を通して倫理規範を壊しにかかります。

・その中から自分の倫理規範を構築しようとします。そこには親以外の要素も含まれます。友人や本や映画や先生などの規範を取り入れつつ、自分のアイデンティティというものを形成します。

・ここでアイデンティティが形成完了すると、親と折り合えるようになり、かつ自分というものが完成します。これが自分の倫理規範です。

認知行動療法は、この自分のアイデンティティである倫理規範に対してアプローチするセラピーですので、25歳以降となります。

■実は、40歳以降も認知行動療法は効果が薄い

Stand on the crack
再び悪夢に遭遇する中年期

さて、40~60歳までの中年期は、自我が危機的状況に陥るという話を以前しました。(過去の記事を参照ください。)中年期の危機です。この期間に青年期に獲得したアイデンティティが再体制化されるという話でした。アイデンティティがぐらつくのです。

ですから、この時期に認知行動療法をやることも、返って相談者を混乱に陥れる可能性が高まります。認知行動療法は控えたほうがいいでしょう。これは先ほどの【アイデンティティの形成時には認知行動療法は使いにくい】と関連しています。中年期もアイデンティティの再構成時期ですので、ぐらつくのです。(*2)

中年期の危機的状態を40~55歳くらいまでと区切ると、その期間は認知行動療法を控えることになります。

では老年期に入る60歳以降はどうなのでしょうか。そこまで生きてくると、もう生き方云々ということを問題にしたくはないでしょう。そうすると「変えるべき生き方」というテーマも登場してこないほうがいい。ですから老年期も認知行動療法は控えることになります。

つまり40歳以降も認知行動療法はあまり活躍の場がないかもしれません。

■適用年齢というもの

例えば介護保険サービスはいつから使えるのか?という話になると、第1号被保険者と第2号被保険者という区分があって、原則的には65歳以上で介護保険を使えることになっています。そのためには、介護認定を受けなければならないという条件が付与されていきます。じゃ、65歳以下は使えないのかというと、16種類の特定疾病の場合は適用されます。そうやって色々と条件で適用年齢が変化するわけです。

チャイルドシートに関してはシンプルですね。2020年現在の法律では、6歳未満に着用義務があります。

そうやって法律で決まっていれば簡単ですが、認知行動療法も人間の発達段階から考えると適用年齢が変化するのです。

では、人間の発達段階で左右されない心理療法があるのでしょうか。それは一般的な支持的なカウンセリングになると思います。一番マイルドですが、これが一番安全ではないでしょうか。

■第三世代の認知行動療法

認知行動療法も第三世代に入って、使い勝手がよくなってきています。メンタライゼイションや弁証法的行動療法、マインドフルネス認知療法などです。これらは一つ一つはよくできていると思います。ただ、全体をみるとやはり心理教育っぽい感じがぬぐえない。

認知行動療法がもっと幅広く活用できるようになるには、心理教育の面を捨てる必要があると、個人的には、思っています。心理教育がいけないのではなく、それをバラバラのパーツとして捉えて、支持的なカウンセリングの中に投入していくことではないかと思います。

私が認知行動療法を学ぶのは、そういう意味があるのです。

■まとめ

Woman in soft light and shadow
あなたを支えてくれるものはいろいろたくさんある

25歳~40歳くらいまでが認知行動療法の適用年齢です。短命な療法と思われるかもしれませんが、心理療法は色々あるわけですから、あえて認知行動療法オンリーという選択をする必要もありません。

相談者の精神年齢が25歳~40歳なら、認知行動療法を使うこともあり得るというくらいに考えておくといいでしょう。そのときはフルセット使うのではなく、パーツに分解して、相談者に応じて使っていくのがいいでしょう。

25歳以下の不適応に関しては異論は少ないと思いますが、40歳以上の不適応については異論もあるでしょう。しかし、心理療法を使うときは、そのくらい慎重に考えておいたほうがいいでしょう。中年期の危機はそんなに簡単に考えないほうがいいということです。

支持的カウンセリングをやっていく中で、年齢に応じて、使えそうな認知行動療法のパッケージを使っていく方法がいいでしょう。

Reference

*1)高橋和巳:消えたい, ちくま文庫, 2017
*2)清水紀子:中年期のアイデンティティ発達研究–アイデンティティ・ステイタス研究の限界と今後の展望, 発達心理学研究, 2008

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