愛着パターンは世代間連鎖をするのか、という話です。結果を言うと、安定型だけ世代間連鎖をして、それ以外は連鎖しないということです。
ここから導きだせるのは、愛着問題は世代間連鎖をしないということ、つまり虐待家庭で育ったとしても、子どもは自分の子どもを虐待しないという、しごく当たり前の結果が導き出されます。
これは当たり前なのですが、当たり前のようになっていないところが問題であって、虐待は世代間連鎖するという言い伝えは、早く都市伝説になればいいと思います。
■成人の愛着スタイルについて
まず成人(親)の愛着スタイルを考えてみます。次の4つに分類されています。(George & Solomon, 1996)
- Ds(愛着軽視型):距離を保って子どもを保護する親です。育児に抑うつ感があり、子どもの愛着欲求を回避する傾向にあるが、育児は放棄しない。拒絶型とも言う。親の見立ては正常知能。
- F(安定自立型):子どもと自分の関係について肯定的で、子の安全を常に確保しようとする。安全基地、柔軟型とも言う。親の見立ては正常知能、成人期。
- E(とらわれ型):行動的だが子どもや自分について明確に把握できず、子どもの行動の理由が分からず困惑する。限られた保護しかできず、危険を認知できない。不確実型とも言う。親の見立ては境界知能。
- U(未解決型):子どもを保護できない。無気力で子どもを放棄するか、怯えさせる行動をとる。子育てはムリという感覚を持っている。親による虐待が生じている。無気力・無能型ともいう。親の見立ては軽度知的能力障害。
■子どもの愛着パターンについて
上の4つに対応して、子どもの愛着パターンを示したのが次の4つです。これらはほぼ7割ほどの一致率が確認されています。(Fonagy et al, 1991多数)
- A(回避型):子どもは愛着信号を最小化して母子の距離を維持する。
- B(安定型):子どもは適切に愛着信号を発信できる。
- C(両価型):子どもは愛着信号を最大化して母の注意をひくが、母親は理解できない。
- D(無秩序型):子どもは愛着信号を自分の生きる力にすることができない。虐待を受けている。
7割一致しているというのは、
Ds(母)→A(子), F(母)→B(子), E(母)→C(子), U(母)→D(子)
7割ほどがこのような愛着パターンになるのが研究で分かっています。
そして問題はこのA~Dまでの愛着パターンを持った子どもが成人するとどういう愛着スタイルを持つことになるか?です。
■愛着スタイルは世代間連鎖するか?
これらは方向性としては、全てF(安定自立)へ至るというのです。F(母)→B(子)→F(子が成人する)は常識として理解できるかと思います。その他、子どもがAであっても、Cであっても、Dであっても「方向性」としてはFに至るのです。DsやEやUにはならないというのです。ここで世代間連鎖は切れています。愛着パターンは連鎖しないのです。(DはFに至らず、統制型になることもあります。)
ただ、A, C, Dの子どもは、そのままではFに至るのは難しいのです。安全な環境であれば、という条件が付きます。養育者は母親で、(Ds,) E, Uタイプですので、相変わらずベースの環境は変わらないのですが、周囲の大人たちやパートナーが安全な環境を作っていれば、それで子どもはFへ向かって成長できるとされています。ここに、愛着障害の人々の希望があるわけです。
Dsタイプがカッコ付きなのは、子どもはちょっと厳しい回避型になっているが成育上は問題なくFタイプへ行くことができるという意味で、EやUの母親をもったCやDタイプの子どもよりは格段に良い環境にいるという意味です。
下記の関連記事は、この愛着パターンや愛着スタイルについて、詳細に検討した記事になっています。ぜひご覧ください。
▼関連記事
【事実!】愛着の4パターンを詳細検討。結論:【虐待】は連鎖しない
(参考文献:児童虐待防止支援者のためのガイドブック改訂2版, 2017 高橋和巳)