【誹謗中傷への対処法】いじめ加害者とほぼ同じ~加害者治療へも言及

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(更新日: 2020/07/07)

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先日、こんなツイートをしました。

誹謗中傷する人は、相手への憎しみや嫉妬があります。 これらの感情の深層は、相手への執着であり、もっと深いところでは相手への愛着があるのです。何も攻撃したくてやっているわけでないので、攻撃する本人がそのことに気づけば攻撃は止まります。 これは加害者治療の原則です。いじめも同じです。

プロレスラーの木村花さんがSNSで誹謗中傷を受けて自殺した事件によって、いままで問題視されていた誹謗中傷についての議論がようやく表面化しました。

前半では、「誹謗中傷への対処法」を話します。
後半では、「誹謗中傷をする加害者への治療法」を話します。

対処法は、つぎの2つです。

  • 法的な制裁(訴訟)をする
  • 制裁しない

■法的な制裁(訴訟)をする

誹謗中傷を受けている本人にとっては、相手へ何らかの制裁を加えるというのは、怖いけれども物事に積極的に動いているということで、こころの傷のケアには有効です。

PTSDへの対応は、傷を負わせた相手やその物事に対して、いかに積極的に動けるかということが大事だからです。参考になる関連記事のリンクを貼っておきます。トラウマを負ったという過去の事実の中から、どのように日々の生活を立て直していくか。その積極性が出てくれば傷も癒えるという話です。

カウンセラーが自信をなくしたときの解決法【APA update-代理トラウマ】

誹謗中傷を受けた人にも同じことが言えます。ですから制裁を加えるというというのは【積極的な行動】の1つなので良いことですね。怒りで現実の相手と戦って撃破するわけですので、効果はあります。法律という戦場での喧嘩と考えてみればシンプルですね。

誹謗中傷を受けると、

  • まず恐怖が起動します

この恐怖に対抗するには、怒りを起動させる必要があります。エイリアンに打ち勝つためには、彼らと闘わなければなりません。そのためには十分な怒りが必要なのです。

でもそんな訴訟なんてできるのだろうか?と、大部分の人は考えます。世の中の大勢はそうでしょう。そんな世の中を、変えていくことも必要ですが、それには十数年という時間もかかる。そこまで待っている間に、誹謗中傷を受けたというトラウマに殺られる可能性も高いです。

Rock under cracked ice
トラウマは恐怖という感情にダイレクトに刺さる

■誹謗中傷に対抗する、制裁しない方法

誹謗中傷への対策は訴訟以外にもあります。そのヒントは

  • 【社会の中で行動する】ことを始める
  • 社会の中で生きている実感
  • キーワードは【自己効力感をアップ】させるということ

◇社会の中で生きている感覚

誹謗中傷を受けた人は、トラウマを背負って生きています。そのような人がトラウマを乗り越えるには、

  • 社会の中で生きている
  • 社会の他の人々と交わって生きている

という感覚が必要なのです。積極的に社会に参加していくこと、その地域のメンバーとして生きている感覚を得ていくことが重要なのです。

ひとりではない、ということですね。【孤立化】していないということが、生きる活力のみなもとなのです。そのためには、そういう人を温かく受け入れる社会というものも必要です。

ネットでいうなら、ネットは仮想空間ですが、そういう人を温かく受け入れる(仮想)空間が必要なのです。ということは、SNSに暮らす人々も何か力になれることがあるということです。そういう社会(文化)を作っていくために力になれることがあるということですね。

◇自己効力感をアップさせるとは?

Escultura Del Abuelo & El Nino
一段づつ登ろう、確実に。

自己効力感は、自己肯定感と似ている言葉です。

  • 自己肯定感:いまの自分に【満足している】感覚
  • 自己効力感:自分は【それをできる】という感覚

自己効力感は、バンデューラという認知心理学者が提唱した概念で、セルフ・エフィカシーともいいます。

【できるんだ!】という感覚ですね。自己肯定感よりも、もっと積極的です。この感覚は自己肯定感がベースになっていますので、自己肯定感をアップさせていく中で、自己効力感もアップしていくことになります。自己肯定感については下記をご覧ください。

【自己肯定感】を育てる最強の習慣はコレ!~自分編【保存版】
【保存版】親がのばす子どもの【自己肯定感】

自己効力感についてはこちらの記事をご覧ください。

【自己効力感】を高める~自分はできるという感覚を持つには~  

■誹謗中傷をする人の心理と加害者治療

最初に紹介したツイートを見てください。

◇攻撃へ至る心理とは?嫉妬と餓鬼

Cracked antique doll face
親しみと憎しみは紙一重。

誹謗中傷する人の多くは、憎しみ・嫉妬の感情があります。これは相手に執着しているから現れてくるのです。別に執着していなければ、なんとも思わないですから。この執着のベースにあるものは、相手への好意感情です。

まとめると、【好意→執着→嫉妬→憎しみ→攻撃】このように変化するのです。これはDV行動も同様ですね。好意は「愛着」とも言えますが、愛着はもっと広い海のようなもので、好意は湖のようなものですね。

最初は相手への好意から出発します。アンチと言われる人も、最初は好意があるのです。好意があるからアンチになる。好意もなにもない人はアンチにもなりませんから。

そしてべったりと執着するようになります。その人の言動に興味津々といった感じです。

その過程で、相手が自分に同化してほしいという気持ちを抱くようになります。
・自分はこう思うのになぜ相手はそのように思ってくれないのだろうか
・相手はすごいのに、なぜ自分はダメなのか
ここが嫉妬の始まりです。この背景には、相手との比較があります。

すごい「相手」と、すごくない「自分」との比較。それは比較する問題ではないのに、自分の欲が津波のように押し寄せてきて、持っている人からすべてを奪い去っていく餓鬼道が起動するのです。

この嫉妬が憎しみに変化するのは時間がかかりません。ここで葛藤する人は、次の攻撃行動へは移行しません。自分で激しく悩みつつ、その問題を自分で納めていくだけの成熟度はあるということです。

憎しみが増大すると最終的に攻撃に移ります。自分が好きだったのに攻撃するというのは、このような心理の変遷があります。

◇加害者を治療するには?

Icicles in the cave
無数の氷柱、自分の気持ちを十分に理解する

上で説明した【愛着(好意)→執着→嫉妬→憎しみ→攻撃】の感情の流れを本人が自分で気がつけば、なんてバカなことをしてたのだろうと思うようになり、憑き物が取れたように攻撃したい気持ちは沈静化します。

沈静化するし、その気持ちが再燃することはありません。この感情の流れは、加害者本人の生育上の色々なものが影響していることが多いでしょう。そういう話を本人からしてもらうことです。

本人が話さないと意味はありません。こちらが引き出しても意味はありません。なぜなら「気づき」とは本人の中に眠っているものだからです。カウンセラーは本人がいまどのへんの気持ちを語っているのかチェックしながら、ひたすら話を聴いていきます。

攻撃してしまうことについては、器質的なこともあります。その場合は、SST(Social Skills Training)トレーニングが必要です。

いずれにしても加害者の治療というのは、難航を極めます。なぜかというと感情の理解はハードルが高いからです。認知で分かってもらっても再燃するのです。しかし、感情を本人が理解しないかぎり再犯は起こりうる可能性が高まります。

■まとめ

誹謗中傷への対処については、

  • 訴訟する(法的な制裁)→怒りで恐怖を駆逐する
  • 制裁しない→社会の中で活動し、自己効力感をアップさせる ことでした。

特に、社会の中で生きている感覚は【孤立化】を防ぐ意味で重要です。

自己効力感とは、自分は【それをできる】という感覚で、自己肯定感が元になっている、という話をしました。

後半は、誹謗中傷をする人の心理と加害者治療について話しました。

加害者は、【愛着(好意)→執着→嫉妬→憎しみ→攻撃】というように感情が変化するのです。DV加害者と同じです。

治療は、このような感情の流れを加害者が理解していくことです。

今回は、誹謗中傷をする人の心理を解説しましたが、誹謗中傷を受けた人の心理については、いじめの被害者が、だんだんと動けなくなっていく過程について書いた記事があります。参考にしてください。

いじめられている子に親や周囲ができる対応【将来の重症化を防ぐため】

Frosty thistle in the winter
加害者の回復とは…

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