子どもを守るための【虐待】重症度(レベル)に応じた正しい介入方法

Sharpening; Mirador del Faro de Cabo Mayor, Santander, España 愛着とトラウマ(虐待)
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こんにちは、高間しのぶです。
これまで、のべ2万人の悩みを聴き続けているマインドフルな臨床心理士です。この経験から得た知恵を解説します。

・子どもが泣いている声が聞こえる!これは虐待なのか?
・こんな虐待が行われているが、通報したほうがいいのか?
・虐待の支援者として、ちゃんと支援できているのか、ときどき途方にくれるときがある

そんな疑問を持って生きているあなたに、虐待の判定が理解でき、正しい支援ができるように記事にしました。この記事のポイントは、

  • 虐待の重症度判定について分かりやすく解説(前半)
  • 虐待の支援が難しい理由はバーンアウトする可能性があるから(後半)

※この記事は、精神科医・高橋和巳先生の児童虐待の研修で使うガイドブック(*1)を中心にして、高間が臨床で得た知見を若干追加しながらまとめたものです。詳細を知りたい方は、高橋先生の専門家を対象にした研修へご参加ください。申し込みはこちらです。 

■虐待の重症度と介入

虐待への対応は簡単ではありません。

虐待へどのように介入するかは、次の2つによって決定します。

  • 継続性
    その虐待が、数か月~数年にわたるもの。身体的虐待であると、黒いあざか青いあざかの判定をする。黒いあざがある場合、虐待が継続的に行われている可能性がある。青いあざは最近の打撲である。
  • 重症度
    下記で説明する5つのレベルをみて判断する

継続性のチェックは、かなり専門的な視点が必要になります。身体的な虐待の場合は、身体の損傷をチェックすればある程度わかりますが、心理的虐待となると、子どもの言動や親の言動を詳細にチェックしていく必要があるからです。また、重症度のチェックでも、それが重症であっても、単発の虐待行為だと、即時介入するというより見守ったほうがいい場合があります。

専門家でなくても、虐待か?と疑われたときは、まず誤報でもいいので児童相談所へ連絡しましょう。全国共通で無料通話です。【189】(いちはやく)に電話すると、お近くの児童相談所へつながります。

■虐待の重症度判定

判定基準は大切

各都道府県でそれぞれ似たようなガイドラインを発表しています。柏崎市と大阪府のものが分かりやすかったので、最新の柏崎市の虐待防止・対応マニュアル(*2)を中心にして、適宜補足しながらまとめました。

この重症度をチェックすることで、親子間に愛着が形成されているかどうかも、だいたいの判断がつきます。①~③までは【愛着なし】と判断してもいいでしょう。しかし下記リストをみていただければ分かるように、愛着がなかったとしても、即介入するケースばかりではない、ということも理解しておきましょう。

◇①最重度(死亡・生命の危険)⇒緊急介入

最重度とは、子どもに生命の危険が「ありうる」「危惧する」もの

【身体的虐待】身体的暴力によって、生命の危機がありうる外傷を受けているか、その可能性が高い⇒保護

  • 頭部外傷の可能性―投げる、頭部を殴る、逆さ吊り、乳児を強く揺する
  • 腹部外傷の可能性―腹部を蹴る、踏みつける、殴る
  • 窒息の可能性―首を絞める、水につける、布団蒸しにする、鼻と口を塞ぐ⇒首部の挫傷と、首を絞められたことによる上まぶたや顔面の点状出血。眼球結膜充血も伴うこともある。
  • 熱湯や熱源による広範囲のやけど

【ネグレクト】ケアの不足のために死亡する可能性がある⇒保護・入院

  • 乳幼児に脱水症状、栄養不足のための衰弱が起きている
  • 感染症や下痢など、すぐに医療が必要な状態であるにもかかわらず、医療への受診がされていない
  • 親が子どもの危険の回避ができない(転落・事故死)

【心理的虐待】親が追い詰められている状態⇒(一時的に)保護

  • 親が「子どもを殺しそう」等、自分のコントロールが効かないことを訴えている(親が自ら訴えているときは、継続的な虐待はないケースが多いが、一時的に緊急で介入する場合もあり)
  • 親子心中を考えている⇒関連記事を参照ください。虐待といえるケースは少ないですが、一時的に緊急介入が必要なケースです。
  • 過去に生命の危険がある虐待歴がある

介入方法

  • 立入調査や緊急保護等、児童相談所の直接介入が必要
  • 親からの分離・保護
  • 児童相談所へ通告・送致
  • 警察への通報

◇②重度⇒即時介入

重度の場合、子どもを守るために即時介入する。今すぐに生命の危険はないと考えられるが、現に子どもの健康や成長や発達に重要な影響を生じているか、その可能性があるもの。継続的な身体的虐待やネグレクトがある。子どもと家族の指導や、子どもを保護するために、誰かの継続的な介入が必要である(訪問指導、監視、一時分離、入院など)

【身体的虐待】

  • 医療を必要とする外傷がある、または近い過去にあったもの
    新旧多数の打撲傷がある⇒両耳、上半身の前面と背面、性器、足裏、太もも内側などへの外傷
    骨折、裂傷、眼の外傷がある
  • 家から出してもらえない(学校にも行かせてもらえない)。一室に閉じこめられている

【ネグレクト】

  • 子どもに明らかな精神症状がみられ、医療的ケアが必要である
  • 虐待の結果、成長障害や発達の遅れが顕著である(成長曲線のチェック)⇒低身長・低体重(=2SD以上の遅れ)や長期休暇明けの大きな体重減少など
  • 生存に必要な食事、衣類、住居が十分に与えられていないもの

【性的虐待】⇒継続的でなくても即時介入

  • 明らかな性行為やわいせつ行為、あるいはその疑いがある

【心理的虐待】

  • 子どもを傷つけるのを親が楽しむなど、サディステックな行為がある
  • 子ども自身が保護を求めている

介入方法

  • 緊急に、状況について詳しく調査・把握し対応が必要
  • 立入調査や緊急保護等、児童相談所の直接介入が必要な場合もある
  • 児童相談所への通告・相談による連携が必要

◇③中度⇒継続的な見守り

見守ったほうがいい場合もある

中度は、軽い暴力や育児放棄がある。今は入院するほどの外傷や栄養障害ではないが、長期的に見ると子どもの人格形成に重い問題を残すことが危惧されるもの。誰かの援助介入がないと自然経過ではこれ以上の改善が見込めないもの 。子どもは保育園、幼稚園、小学校へ行けてはいる。

【身体的虐待】

  • 慢性のあざ(黒あざ)や傷痕(たばこ等)ができるような暴力を受けている

【ネグレクト】

  • 長期にわたり身体的ケアや情緒的ケア(社会的ネグレクト)を受けていないため、人格形成に問題が残る危険性がある
  • 生活環境や育児条件が極めて不良なため、事態の改善が望めない
    (虐待や養育拒否で施設入所した子の再発。多問題家族などで家族秩序がない。夫婦関係が険悪で子どもにも反映している。犯罪歴家族。被虐待歴ある親)

【心理的虐待】

  • 親に慢性の精神疾患があり(統合失調症、知的障害、アルコール・薬物中毒等)、子どものケアができない。(障害者手帳等の有無は問わない)
  • 長時間、大人の監督なく家に置いている(長時間の放置)
  • きわめて不衛生、不潔
  • 子どもがやせている

介入方法

  • 状況について詳しく調査・把握し対応が必要
  • 誰かの援助により改善を図るなど関係機関の継続的な支援・指導が必要
  • 状況に応じて児童相談所への通告を考慮した連携を図る(児童相談所が関わるのはこの③まで。③、④、⑤は子ども家庭支援センターなど市による在宅支援に移る。)

◇④軽度⇒介入しない。子育て支援(慎重に)

支援は、軽度に対して行う

軽度の基準は、実際に子どもへの暴力があり、親や周囲の者が虐待と感じている。しかし、一定の制御があり、一時的なものと考えられ、親子関係には重篤な病理が見られないもの。ただし親への相談や支援は必要であるが、遠くから見守っている感じがよい。親を虐待者と決めつけない配慮が必要である。

  • 医療行為の必要がなく、外傷が残るほどではない暴力がある(暴力の存在や子どもの症状について、虐待者側には病理性が認められない。虐待者はカーッとなって自己抑制なく叩くが自己報告する。躾が高じたものと判断される)
  • 子どもに健康問題をおこすほどではないが、ネグレクト的である

介入方法

  • 緊急を要しないが、何らかの援助が必要かもしれない
  • 育児相談等、保護者支援による対応

◇⑤危惧⇒介入しない。

危惧のレベルは、暴力やネグレクトの虐待行為はないが、養育の不安を訴えなどがあり虐待を危惧するもの

  • 不安はあるものの、概ね安定しており、不調時には自ら積極的に援助を求める
  • 子どもに対して、必要な衣食住の世話ができる

■虐待(愛着障害)の介入が難しい理由

虐待を受けた成人や子どもへの支援は、愛着障害の臨床になります。トラウマの治療ともいえますが、単純にトラウマを消せばいいというわけにはいきません。なぜなら、回復のポイントは【基本的信頼感】の回復だからです。トラウマ治療を続けながら、信頼感を作り上げるための幹のようなものをカウンセリングで作り上げていく必要があります。

▼関連記事
【愛着障害】これで回復!虐待された人々への支援のための2つのポイント

◇虐待という言葉に持っていかれてしまう支援者

テレビなどで虐待のニュースを見るたびにこころが痛みます。不安や怒りがわき出してきます。そして「子どもを助けよう」そういう気持ちを持ちますよね。それは普通の精神状態です。しかし、支援者がそこで終わっていては支援になりません。

目をふせたくなる報道ですが、真実を見続けることです。親がそのように子どもを虐待するようになったのは、何か理由があるのではないか。感情に持っていかれないよう、クールに見立てを続けることです。重症度については経験を積めば瞬間に分かってきます。「重症度はこれくらか、それは分かった。即介入のケースだな、それは分かった。」このあとが大切なのです。

  • では、この親をカウンセリングするとしたら、どのようにしようか
  • 虐待された子どもをカウンセリングするとしたら、どのように進めようか

愛着障害のカウンセリング、虐待のカウンセリングでは、被害者と加害者の両方にこころを置きながら始める必要があるのです。単純な被害者カウンセリングではないところに、難しさがありますね。なにしろ、加害者は、自分を守ってくれるはずの親だからです。支援は、被害者と加害者、両方の受容の上に成り立つものになるからです。

◇スーパービジョンも必要

長期に渡って支援するためには、こころの体力が必要

このように難しいカウンセリングスキルが要求されるのが虐待の相談です。けれど、これはスキルだけの問題ではありません。支援者も自分のこころが荒れ狂う感情にさらされることになります。それによって当然のごとく、こころは疲弊します。加害者への怒りだけでなく、被害者への怒りも芽生えることさえあります。そうなってしまうと相談者との信頼関係を損ねて、相談中断という致命傷になりかねません。

それを避けるため、支援者は自分の感情を殺すという手段に出ることもあります。慢性疲労を抱え【バーンアウト(燃え尽き症候群)】状態になるのです。これではさすがに支援どころではなくなってしまいます。支援者にとっては、この自分のケアが急務になります。そのためにも、

  • ひとりで抱えず事例検討会で相談する
  • スーパービジョンをうける
  • カウンセリングをうける

などを実行しましょう。「事例検討会での相談」は、いわゆる「連携」とは違います。孤立しないために連携を!とは、よく言われることです。たしかに各都道府県が出している虐待への介入プランには、多くの部署が関わる構図になっています。連携しているわけですね。

これは孤立を避けるためにはいいことですが、連携によって多くの人が関わることで、虐待当事者(親と子ども)から離れていってしまうというジレンマも、そこにはあるわけです。

離れていくというのは、【愛着問題から離れていく】ということです。親も子どもも、回復すべきは愛着問題なのです。そのためには、ひとりで問題に向かったほうがいい場合もあるわけです。

このことは非常に書きづらいことですが、大勢いれば良いということとは違います。大勢が1つのコンセンサスを共有できていればいいのですが、愛着問題は【愛着がないということはどういうことなのか】という理解が必要です。しかし、大勢の人々は愛着のある世界で育ってきているので、そのことを十分に理解できているかというと、残念ですが、そうではないことが多いです。

そのため1人でその問題を処理していかなくてはいけないときもあり、そのためスーパービジョンや、自分のこころの健康を保つために、自分のカウンセリングも必要になってくるのです。

◇支援者がカウンセリングを受ける必要性

認知行動療法の伊藤絵美先生のツイートをご覧ください。

伊藤先生は、ご存じのとおり、認知行動療法では日本のトップバッターの方です。その先生もカウンセリングを受けているという告白をなさっているのです。自分でカミングアウトするのはとても勇気のいることだったでしょう。

当然ですが、カウンセラーも人間ですので悩みを抱えます。ただ、カウンセラーは自分で自分をケアできるスキルも持っています。だから、フツーの人よりは、ストレス耐性はできているでしょう。飲んで同僚にこぼしたりすることで、乗り切っている人もいるでしょう。カウンセラーは、【人間関係の悩みは人間関係の中で癒される】ということを痛いほど知っている人々です。そして、カウンセリングで話されることは、だいたいが人間関係の悩みです。だからなんとか1人で乗り切れるのでしょう。

しかし、深いかなしみ、人間関係でない悩み、大きなトラウマなどについては、自分でケアしてきた方法では太刀打ちできないかもしれません。感情をマヒさせることはずっと避けてきた人々ですから、その手段も取れない。そのとき、カウンセリングの門を叩くのです。

■まとめ

虐待の重症度の判定について、各都道府県のものを集めて、まとめてみました。レベル①~③まで、介入の必要性のあることが分かります。

虐待の対応が難しい理由は、支援者が虐待という言葉に動揺してしまって、また虐待という事実に疲弊してしまって、正しい判断を誤ることがあるからです。それを回避するために支援者は、スーパービジョンを受けたり、カウンセリングを受けたりすることが大切です。

※児童虐待について10本の記事をまとめたものを書いています。そちらから各関連記事に飛んでいただくと網羅的にゼロから理解していただけます。

▼虐待について【まとめの関連記事】
虐待されてきた人々がゼロから生きるために知っておくべき10ステップ【まとめ】

残念ですが、虐待はなくなりません。私たちにできることは、

  • 虐待されている人々をいかに救い出して、いかに回復させるか です。
いつか そこで 生きていけますよう

Reference:

(*1)高橋和巳:児童虐待防止 支援者のためのガイドブック (改訂第2版), 2017
(*2)柏崎市:子ども虐待防止・対応マニュアル(2018年4月改訂版), 2018

親との関係が不調と思う人、自分が子どもを虐待しそうと思う人は、ソレア心理カウンセリングセンター(埼玉県)へ

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