・普通の親子関係、普通の配偶者(パートナー)との関係はどんなものなのか?
・親、子、配偶者(パートナー)との関係を保つには、何が必要なのか?。
そんな悩み(不安)を持って生きているあなたに、何かのヒントになればと思い、記事にしました。この記事のポイントは、
- 親のことをすっかり忘れていられるのは、親子関係が平和な証拠(前半)
- 配偶者(パートナー)や子どもとは親密を確認しながら、母性や父性が発達する。配偶者(パートナー)や子どものいない人にも、それらに代わるものがある。(後半)
近親者との関係は、3つあります。
- 自分と親
- 自分と配偶者(パートナー)
- 自分と子ども
これらの関係が平和な関係だと、生きているのもかなり楽になりますね。逆に、この3つが不調な人は、逆風の中を生きることになります。
■自分と親との関係
まず、こころの源流はこの関係からスタートします。次のようなツイートをしています。
【自分と親の関係】自分の親のことをすっかりと忘れていることがあります。それはこころが穏やかな証拠でしょう。決して冷たいわけではありません。どこかで縁を感じているから(安心して)忘れていられるのです。何歳になっても、ウィニコットの【一人でいられる能力】は生きています。
次に紹介する言葉は、言い古されたものです。これは親子関係の話ばかりではありませんが、ちょっとワークをやってみましょう。次の言葉を、親を思い出しながら、口に出してみてください。どんな感情が沸いてくるか、しばらく感じてみてください。
- 便りがないのは良い便り
- ふるさとは遠きにありて思うもの(室生犀星)
どうだったでしょうか。懐かしい感じだったでしょうか。それは親のことをすっかり忘れて生活できている証拠です。元気な証拠です。すっかり忘れているというのとはちょっと違うかもしれませんね。【思い煩うことがない】ということです。親がそこにいることが分かっているので、心配していない状態です。
親子の関係は、この関係が一番良い関係です。親を追い求めることもないし、親を恨んでいるわけでもない。配偶者や子どもがいなくて1人で生活していたとしても平和です。穏やかな親子関係の中を生きているからです。
親のことをすっかり忘れているというのは、今の生活にフォーカスしているとも言えます。親にとっても、子どもがそのように生活していると安心です。うまくいっているなと遠くから思っています。
親のことを忘れているというのは、子どもが子どもの生活を大切にしている証拠です。これは親にとっては育児の最終地点ですね。そうやって親は安心しながら子どもから離れていって死んでいく。子どもとの間で結んだ愛着を切るという作業を人生の最後の老年期に行います。
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人は愛着を切って死んでいく。残された人は長い喪の作業に赴く。
そうは言っても、親のことをすっかり忘れていることへの罪悪感を持つ人もいるでしょう。実はそういう場合、親子の関係がどこかこじれているところがあるかもしれません。次のようなツイートのケースです。
母親に【いつかは分かってくれる】と淡い期待をいだいてきた。それが崩れていくとき人は立ち尽くします。どこへ行けばいいのか全く分からなくなります。それはしばらくは続くでしょう。その放心の中で、重い身体を引きずりながら歩いている。その勇気によりそうとき私たちは癒しの悲しみに触れるでしょう。
母親のことがいつも心配だった人の話です。日常生活の中で、いつも母親を追い求めていた。それが大人になっても続いていた。母親は嬉しいかもしれません。というか、そういうことを嬉しがる母親は、ちょっとヘンですね。
子どもはいつも母が気になっているので、こころが縛られている感覚がつきまとって、日常ではちょっとしたストレスがかかると、過呼吸になったりパニックになったりします。全然、平和じゃありません。母のことが心配で、いつもビクビクしています。
数十年もそんな生活を送ってきて、そんな生活に辟易してくると、その人の人生がやっと新しく始まります。母親への期待が無意味だった、無価値だったと気づく瞬間です。その気づきは、その人に重度のうつ状態をもたらすかもしれません。スッキリと目が醒めるなんてことはありえないかもしれません。
しかし、そのような世界が崩壊していく放心状態の中から、ようやく再生してくるものがあるのです。例えば、原爆ドームという廃墟の中に生まれ出るひとつの雑草の芽。そうやってその人の再生の物語は始まります。深い悲しみをひきずりながら芽をのばしていくその人を前にして、「うまくいきますように」と祈る気持ちを送ります。
■自分と配偶者(パートナー)との関係
配偶者、パートナーがいらっしゃらない方もいますね。そういう人は、配偶者を「近しい友人」と置き換えてもいいでしょう。親密度の高い他人ですね。次のようなツイートをしています。
【自分と配偶者の関係】配偶者は特別な他人です。親密度は高いのですが結局【他人】なんですね。他人だから縁は切れます。だから、ときどき親密さを確認しないといけません。どうやって?レオ・レオニのカメレオンが参考になります。他人だけど【一緒に】に生活を送っている感覚になること。
配偶者というのは、いないとやっていけない、というわけではないけれど、いれば頼りになるときもある。そして、ときにやっかいな存在にもなる。そう考えると不思議な存在ですね。DVやモラハラをするような人でなくても、そういう感じです。
生物学的には、子育てのために一緒にいる。子どもを産んで、子どもが大きくなって自立するまで面倒をみる、という行動がDNAにインプットされています。それがないと種族がたもてないですからね。万物不変の原理です。
人間の場合は、知能が発達している分、他の種族と違って、さまざまな感情も発達しており、その感情によって左右されるという特性があります。それによってDNA行動とは違うものを選択したりして、余計に複雑になってしまいます。DNAに反抗すると、葛藤が生まれ、悩みが生まれます。しかし、そうやって【人間らしく】なるということもあるのです。
動物と人間の差は、ここにあるのでしょう。動物はDNAのまま生きて、人間はDNAと綱引きをしながら生きる。綱引きはしんどいときもあれば楽しいときもあります。しんどい場合には、精神の病を発症します。
動物も悩むときがあります。神経症になるときもあります。ストレスがかかると毛が抜けたりしますね。彼らはそれはどういうことかは分かっていないでしょう。気持ちを表現することができないので、身体化して毛が抜けるのです。これは子どもの腹痛や頭痛と通じるものがあります。
話が少しズレましたね、閑話休題。
人間の場合、どういう場合に親密を感じるのか。それはお互いがお互いのことを思って行動しているときです。レオ・レオニのカメレオンの話は、非常にシンプルですが、奥の深い物語です。自分の色を探しに出たカメレオンが、賢者のカメレオンに出会って、彼と【一緒に】行動することで、彼と一緒に【同じ】色に変化することで、これが自分の色だということに気がつきます。
レオニはそのことを声高に主張したりはしませんが、「末永く幸せに暮らしたとさ」という言葉で表現しています。一緒に同じ色を体験していることほど、安心感を得られるものはありません。彼はそのことをよく分かっていたのです。同じ色なら、それが例え【つらい色】だったとしても安心していられるのです。
カメレオンの話は、母子の安全基地の話でもあるといえるでしょう。こんな配偶者がいてくれたら、こんな友人がいてくれたら、人生の荒波も乗り切っていけますね。
■自分と子どもとの関係
ここは【人生の核】になるでしょう。人生の中心です。あなたが生きていくうえでのエネルギーの素です。子どものいない人もいますね。その場合は、あなたにとって子どものようなものを想像してみてください。これはなかなか難しいかもしれないですが、親との関係に不調がなければ、すぐ思いつくでしょう。友人かもしれませんし、あなたの信念のようなものかもしれません。
もし思いつかない場合は、時間を空けてみましょう。それがやってくるまで待ちましょう。強制的に何か子どもに代わるようなものを想像することは止めましょう。無理をしても仕方がないです。焦らず、待つ。
【自分と子の関係】子どもがいくら接近してきても苦ではありませんが、配偶者に同じことをされるとストレスかもしれません。理由は、親子関係は他人ではないからです。配偶者は親密ではあるけれど、特別ではあるけれど、他人です。夫婦は離婚しますが、子どもとは(愛着がある場合は)縁は切れません。
人間は生きていく上で、何か確固たるものがほしいのです。大丈夫感につながるようなもの。それは多くの人にとっては【子ども】です。子どもを守るという行動は、あなた自身の母性と父性を強化していきます。この強化によって、社会で生きていくうえで楽になります。
例えば、会社での上司・部下の関係。この関係は、上司になったあなたは、母性と父性を発揮せねばなりません。
- 指示を出して、その理由もはっきりとわかりやすく伝える父性
- 部下の感情を理解して、その感情に寄り添いながらサポートしていく母性
この2つがリーダーシップには必要だからです。子育ては、このような母性・父性を成長させます。
子ども(あるいは子どもに代わる別のモノ)との間に愛着関係を作ることができれば、それはあなたにとっては人生の核になるのです。そしてこの核とともに、長い期間生きることになります。これはそれに縛られることであり、自由を縛ることにもなります。堅苦しく感じることもあるでしょう。もっと自由になりたいとも思うかもしれません。
しかし考えてみてください。自由というものは、縛られているから自由を感じるのです。縛るものがなければ、自由の意味がわからないでしょう。何でも対極のものがなければ、考えづらいということです。特に、この【愛着による縛り】は、人間の安全基地を形成していく上では必要不可欠なものです。
■まとめ
人が人生を航海していく上での抜き差しならぬ3つの関係を説明しました。
- 自分と親
- 自分と配偶者
- 自分と子ども
これらの関係の中で、人は母性と父性を発達させていくのです。死ぬ間際までそれは続きます。それは配偶者がいなくても、子どもがいなくても、同じ道をたどります。配偶者や子どもに代わるものとの間で、その成長は続きます。
近しい人と、思い煩うことなく生きていけますように。
親、配偶者、子どもとの関係が不調なときは、ソレア心理カウンセリングセンター(埼玉県)へ