今回のコロナウイルス騒動では、子どもに対して精神的なダメージも広がりつつあります。感染だけではありません。このダメージは感染規模を大きく上回っているでしょう。こんなとき大人は何をすればいいのでしょうか。
非常事態がもたらす子どもへのダメージ―セーブ・ザ・チルドレン
コロナウイルスになって学校が休校になっています。3月いっぱい休校です。子どもにとっては、学校が1か月も休みというのは非常事態です。日々の生活のパターンと違う生活を送らざるをえなくなっているのです。
これはものすごいストレスです。ある意味、彼らには戦争状態と同じなのです。学校を休校にしたことには大人の論理があるのでしょう。それによって、子どもが不安になることは分かっていたとは思いますが、こういうことをされると、子どもは不安のどん底に落とされるのです。
非常時に必要なことは、いつもと同じ日常生活を送ること。生活リズムを変えずにいつもと同じことをすることです。ですから朝起きて、ご飯を食べて、歯を磨いて、集団登校の場所へ集まって学校へ行く。このリズムが大切です。しかし、学校へ行くという最大のリズムが崩れたわけなので、同じリズムができなくなった。これは大変なことです。
こんなときこそ大人は落ち着いて、子どもを守るためのことを必死になって考えてもらいたいものです。
あるお母さんの話です。自分の子どもが自分に向かって変なことを言うのです。豚とか鬼とか。休校になってからその言動が出現しました。しかし子どもは自分でそう言っておきながら、そういうことを言いたくないのです。大好きなママに向かって言いたくないのです。でもなぜか分からないけれど言ってしまう。それを子どもが自分で心配しているのです。ママのことは悪く言いたくないのに、なぜ自分はママをけなしているのか、自分は大丈夫なのか。それが分からず混乱しているのです。
この攻撃行動ともとれる理由は、子どもがそれだけ不安を抱え込んで混乱している *1) ということです。 不安の1番の原因は、1か月の休校です。教育関係の人は、この不安は分かると思いますが、それだけではダメで、それを政治家に教えてあげないといけない。子どもが不安の中で怯えているということを。この混乱は、一種の強迫的な行動といえるでしょう。そういう事態が起こり始めているということを。
1か月の学校休校。これは子どもにとっては戦争なんです。そこに突き落とされてしまった。不安を打ち消すためにママに変なことを言ってしまう、自分が変になってしまったと心配している。そういう子どもたちは大勢いるのです。
家族でまとまること
では、この非常時にどうすればいいか、それは家族でまとまることです。
3.11の東日本大震災でこんなことがありました。計画停電で電気がストップして部屋が暗くなると、1階のリビングのテーブルにろうそくを1本たてる。すると、そのろうそくの周辺に子どもたちも大人も集まってくる。そこで何を話すこともないのですが、そうやって一緒に塊(かたまり)になっていることが不安を和らげます。そうやって家族でまとまっていた家庭は、震災の不安をそれほどひきずらなかったといいます。
学校が休校になっているので、自分の工場に子どもたちを連れていって、一緒になって働いている、とおっしゃっている自営業者の方もいらっしゃいました。家族でまとまったわけです。いいですね。一緒の場所にいて、何かを一緒にすること。そういうことが子どもの不安を軽減するのです。とてもこころの動きに叶った対応です。学校関係者の方、ぜひ見習ってください。
学校が1か月休校の非常事態。そのとき家族が一緒に同じことをやっている。これが精神的にプラスに働き、子どもたちは余計な不安を払拭します。家族でまとまることです。一緒に行動する。そういう時間を持つこと。それによって子どもの不安は軽減されます。
強迫的なことへの対応
マスクしなさい、手洗いしなさい、家にいなさい。そういうことは子どもにとって、不安の軽減につながりません。そういうことでは不安は落ちないのです。手洗いをするのは、キレイにしているわけではありません。不安を落とそうとしているのです。けれど手洗いでは不安は落ちない。不安が落ちるには、家族がまとまることです。
さきの例のように、子どもの中には強迫性症状を出している子もいるでしょう。家から出るときのジンクス、右足から出ないとだめだ、とか。これも不安な気持ちゆえの強迫性症状です。右足から出るまで何回も出入りを繰り返します。洗濯物をたたむ作業も同じです。何度も洗濯物をたたみ返します。
このような強迫的なことに対して、親御さんはどうすればいいか。それは震災時と同じことをすればいいのです。家族でまとまること。そうすることで子どもの不安は消えていきます。
Reference
*1) 高見享佑:攻撃行動に加担する心と脳の背景~社会的不安と偏桃体ー側頭・頭頂接合部の接合が影響, 国立研究開発法人科学技術振興機構, 2018
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