・子どもが最近、頭痛、腹痛を訴えだした
・自分も最近、身体の調子がおかしい。
そんな悩み(不安)を持って生きているあなたに、何かのヒントになればと思い、記事にしました。この記事のポイントは、
- 親の過保護は、子どもを不安にさせ病気にさせる(前半)
- ドラマ「35歳の少女」とコロナ不安という側面から、身体の病気を解説しています(後半)
■子どもの身体の病気と親子関係について
親が子どものために色々世話を焼くことは、幼児期では当たり前ですが、学童期に入ってそれをやっていると【過保護】になります。次のようなツイートをしています。
親が子どもの先回りして言葉を発したり、行動したりしていると、子どもは自分でやろうとする気持ちが失せてしまい、自分の気持ちも主張できなくなります。
その結果、受動的な反抗として【ひきこもり】したり、身体的に【胃腸の問題】を起こします。
これらの行動や身体化は彼らの主張ですが、辛い主張です。(ツイート改訂)
親の世話焼きが過保護になっている場合、子どもにとっては自由を縛られているので、こころが苦しくなって身体で苦しさを表現するときがあります。心理学的には【身体化】といいます。精神医学的には【身体症状症】といいます。かつては「不定愁訴」と呼ばれ、医学的な原因が明確でない身体症状を強く訴える精神疾患です(*1)。
子どもの代表的な身体化は、頭痛、腹痛、吐き気、粘膜系、皮膚系の疾患などの症状となって現れます。
子どもの身体化は、親の過保護ばかりが原因ではありません。しかし、一番注意する点は、【子どもが自分の気持ちを主張できているか】ということ。もしそれができていないのであれば、次のような場合があるでしょう。
- 親に気を使っている
- 親に言うことが恥ずかしい
- 親がいつも急(せ)かすので話せなくなる
子どもは自分の言葉を押し殺してしまうと、非常にシンプルなので、その葛藤をこころの中に保持することはできません。その結果、身体的に病気として表現してしまうのです。
こんなとき親は、子どもに対して【待つ】姿勢を持ちましょう。何か急いで結果を出そうとするのでなく、子どもの行動を待ってあげましょう。子どもが自分で動くまで。【親が待ってくれているんだという安心感、信頼感】を子どもが持つことができれば、子どもは【必ず】自分で動きだします。自分でやろうとします。そういう自律性は、学童期の子どもには備わっているからです。
ひきこもりになってしまうのでは?と思うと、心配ですよね。その心配は、親御さんが自分のこころの中にしまっておいてください。やせがまんして、へっちゃらなムードを子どもに見せてあげてください。この【大丈夫な感じ】が子どもの行動を促進させます。
そうは言っても、親御さんも自分の中で不安を持ち続けるのもしんどいですよね。そのためには自分の気持ちを誰かに相談すること。カウンセラーはそのために居ます。それをすることで、子どもも「誰かに(親に)相談していいんだ」と思えるようになります。親がまず手本を見せる(モデルになる)のは、学童期の子育ての基本ですね。子どもを相談室に連れていくのではなく、親御さんが相談に来る。これが学童期の相談室のスタンダードです。
- まず、待つということ
- 次に、親が(子どもではなく)、誰かに相談すること
親が過保護な子どもが全員、身体化するわけではありませんし、身体化しているから親子関係が原因だ、とも言いきれません。しかし、子どもが身体の不調を訴えていて、検査してもどこも悪くない場合は、子どもの不安や心配が解消されていない場合が多いので、まず親子関係や学校関係を見直してみることがいいでしょう。
学校空間は、子どもにとっては生活の半分以上を占めています。学校で何かがあった場合でも、親に話せない状況では、子どもは自分の気持ちを表現できませんから、身体化せざるを得なくなります。
■大人の病気と親子関係について
身体化させるのは何も子どもの専売特許ではありません。大人にも同じように身体化させる人がいます。
例えば、ストレスがかかると胃腸をすぐ壊す人は 「35歳の少女」症候群 かも知れません。
小学生って、不安な場面ですぐ胃腸を壊して身体化させるからです。それに似ています。心は小学生かも。その辺でつまずいてしまったのかも。
そんな人は、ドラマ「35歳の少女」を見ての通り、過酷な人生になります。
しかし回復の道はあります。
大人が身体化する場合は、自分の親との関係をひきずっている場合があります。自分の子ども時代のつまずきを大人になっても持ち越してしまっている場合です。これを日テレドラマにちなんで「35歳の少女」症候群と呼びました。私の造語です。高橋和巳先生によるところの【成人学童期】です(*2)。
「35歳の少女」症候群とその回復の道筋については、関連記事で詳しく書いています。
▼関連記事
【事実!】実在する「35歳の少女」症候群~心理学的に解説
「35歳の少女」症候群まではいかないけれど、不調を訴える人もいます。そんな人も、どこか親子関係に亀裂が入っている場合が多いです。具体的にどんな身体的な症状があるのかというと、
- 慢性疼痛(原因不明の痛みが慢性的に続く)
- 線維筋痛症(原因不明の全身の強い痛みやこわばり、睡眠障害、うつ状態など)
- 過敏性腸症候群(腹痛を伴う下痢・便秘などの排便障害)
- 逆流性食道炎(胃で消化途中の食物が、食道に逆流して、食道が炎症を起こし、胸やけや胸の痛みが生じる)
繰り返しになりますが、上記のような身体の症状を持っている人がすべて、親子関係というこころの問題(心因)があるわけではありません。体質のような器質因もあるでしょう。心因かどうかを見分けるには、詳細な成育歴および親、祖父母までの3代くらいに渡る家系の見立てが必要になってきます。その人個人の話だけでなく、もっと大きな系図を検討していく必要があります。
そしてこころの問題に起源がある場合は、薬はあくまでも補助ですので、親子関係に介入するカウンセリングが必要になってくるでしょう。
■コロナ不安(うつ)からくる身体の不調
これまでは親子関係が原因の身体の病気の話でしたが、ここでは最近の【コロナ不安】から不調を訴える人についてです。下記のようなツイートを、コロナ第一波が来ていたとき(2020年4月)にしています。
【コロナ不安】ストレスがかかると身体化する人がいます。
腹痛、潰瘍、過呼吸、頭痛、慢性疼痛、高血圧、リウマチ、アトピーなどは、不安が原因の場合は心身症とも言われます。
コロナのウイルスにやられる前に、コロナを不安がるストレスにやられないように、適度に人間活動をしましょう。
自粛によって人と接する機会を逸することで、精神が病んでいくこともあります。そしてコロナは、私たちの生活習慣を大きく変えました。習慣や環境が変わるのは、人にとっては大きなストレスです。発達障害のある人々には、特に大きなストレスになります。
コロナが原因で変化した環境、そこから起因する不安に対抗するには、前の生活を取り戻してみるという方法が効果的で、即効性があります。つまり、コロナだから〇〇する、ではなく、コロナだからこそ【前と同じ△△】をする、という発想です。感染予防という視点も重要ですが、あえて変化しないという在り方も精神衛生上、議論されるべきでしょう。それが【適度な人間活動】をするということです。
◇自粛疲れ
まず自粛によって以下のような気持ちになります。これは行動が制限されることから生まれるストレスで「拘禁反応」と呼ばれています(*3)。このような気持ちが長く続くと、こころや身体に不調がやってきます。
- 自分が疎外されているようだ
- 喜怒哀楽の感情がなくなった
- 周囲の状況が他人事のように思う
- 強い不安を感じる
- ひどくイライラする
東京医科歯科大学、精神科の「新型コロナウイルス流行時の心の健康状態チェックリスト」というものがあります。以下のような傾向が2週間以上持続する場合は要注意です。(このようなチェックリストは多数ありますが、どれも似ているので1つの代表例として記載しました。)
- 強い不安や緊張感を感じることがよくある。
- 物事に対して興味がわかない、心から楽しめないと感じる。
- 気分が落ち込んだり、憂うつになることがよくある。
- 食欲がない、または食べ過ぎることがよくある。
- 寝つきが悪い、頻繁に目がさめる。
- コロナウイルスに感染しているのではないかと、体温や体調を過度に気にする。
- コロナウイルスを周囲にうつすのではないかと過剰に不安になる。
- コロナウイルスが原因で、人間関係が悪化したと強く感じたり、孤立感が高まる。
- 色々な視点で物事を考えることが、難しくなった。
- 将来が、意味や目的に満ちたものに思えなくなった。
では、コロナ不安に対抗できる適度な人間活動とは何でしょうか?次のようなこれまでの習慣を続けることです。
- 職場や家族の人と積極的に会話する。不安などの気持ちを表現することをこころがける。(このとき助言をしてこない人を選んで会話してみましょう。不安なとき助言されると、こころが萎えます。)
- 体を動かす。できれば複数の人数でやれるスポーツがいいですね。1人でやらない、孤立しないことが重要。
- 好きなことをする。1人でゲームするのではなく、カードゲームなど、複数でやれる楽しみをしましょう。こんな時期なので、【ポケモンGo】はいいでしょう。
- ニュースを見るのは極力減らす⇒正確な情報を得ようと言われたりしますが、ネットにもテレビにも、過剰報道されてしまっているのが、コロナ禍の特徴です。情報はできるだけ遮断しましょう。
■まとめ
親が過保護な場合、子どもは病気になって自分の気持ちを表現する場合があります。そんなときは、これまでの子育てを少し見直して、子どもの気持ちを聴く態勢を取るといいでしょう。「待つ」ということですね。相談はそのあとになります。
親のほうも、気持ちを表現できないと、子どものように身体化する場合があります。「35歳の少女」症候群です。これについては関連記事があります。
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【事実!】実在する「35歳の少女」症候群~心理学的に解説
最後に親子関係からくる不調ではなく、コロナ不安からくる不調についてまとめました。
子どものこころは純粋でシンプルです。調子が悪そうなときは「何か不安かな」と様子を見ていましょう。
Reference:
(*1)松崎朝樹:精神診療プラチナマニュアル, メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2018
(*2)高橋和巳:「母と子」という病, ちくま新書, 2016
(*3)東京医科歯科大学:新型コロナウイルス感染症と心理的な関わり, 2020
心理的なことが原因で身体の不調が現れていると思ったら、ソレア心理カウンセリングセンター(埼玉県)へ