強迫的な症状は、幅広くみられる行動で、様々な疾患に見られます。非常事態になったとき、その強迫症状が改善することがあります。コロナウイルスでも同じことがみられます。この記事は心理学的視点からコロナ騒動を見ていますが、最後にいまわかっている具体的なコロナ対策も載せました。
非常事態の中国そして日本
中国の武漢を発信源とするコロナウイルスは重病化する感染症と言われています。各国とも水際でなんとか防ごうとしていますが、人が行き交うことで成立している現在の世界経済圏を考えると、それができるのは限られています。北朝鮮くらいしかないのではないでしょうか。
各国が排他的になるのではなく、それぞれの知恵を結集させて、この非常事態が早期に収拾されることを望むばかりです。後手になったために迷走している国もあります。今こそ、大人が率先して落ち着きましょう。
コロナの効用
コロナウイルスの拡大感染によって、日本でもマスクや消毒用ティッシュが薬販売店から無くなっています。そのうえ学校が休校に。学生は、まあ嬉しいですね。
小学校低学年くらいの児童の中には、学校が休みであることの、生活リズム変調による不安が大きくなっている子どもたちもいます。そういう子どもは強迫的になったり、暴力的になったりしています。
また、学校が休みなので家業を手伝って、年度末にこれまでの赤字を挽回させ、自営業一家の窮地を救った子どもたちもいます。学校では得られない勉強ができています。
マスクなどは感染した人が、菌をバラまかないようにつけるもので予防のためにつけるものではないと思うのですが、そんなことを言うと炎上しそうな勢いです。
或る人の話です。その人は、手を清潔にしなくてはいられない強迫的行動を持っていました。普段からドアを開けるたびに、つり革を持つたびに手を拭いているのです。ですから消毒用ティッシュの使用量が半端ではないのです。
そこにコロナウイルスの激震によって消毒用ティッシュが非常に購入しづらい状態になってしまいました。備蓄はあるのですが、それもまもなく底をつくでしょう。そこで考えた。毎回拭いている行動を、数回に1回程度に抑えて消費を少なくしたのです。これは精神的な苦痛を伴いますが、非常事態ですので仕方ない。今でもそれは続けています。
このような段階的に恐怖に曝(さら)していく方法は、認知行動療法としては有効なやり方だとされています。普通は、なかなかそこへ踏み切れないのですが、モノがなくなっては、やるしかないですね。このように非常事態によって強迫的行動が抑えられることもあるようです。まさにコロナの効用です。
昔、東日本大震災のときも同じようなことを聞きました。ある施設でのことです。職員は急性ストレス障害によって、日常の作業においてもおちつきを無くしています。震災による多数の不条理な死を目の前にして、なかなか日常を取り戻すことができませんでした。
そこでは、統合失調症の女性も一緒に生活していたのですが、彼女は全然ストレスを感じていなかったのです。平然と日常生活を送っていました。いつも幻聴による恐怖と隣り合わせなので、地震や津波などなんてことないのです。日常が崩壊していくことは怖くもなんともないのです。職員が失敗する調理作業なども補助をかって出ていたそうです。たいそうその施設では重宝がられたといいます。彼女もそれによって自己効力感がアップしました。これも非常事態の効用ですね。
非常事態には、精神疾患のある人々は、それに負けない行動に出る場合があるのです。それによって症状が改善することがあるのです。
引きこもる効用
コロナによって流通、経済がストップしています。つまり日常の喧騒が強制的にシャットダウンしているわけです。なんか世の中に静かなムードが漂っています。非常事態というのは、一方でどこか静かになるわけですね。みんなが引きこもるので、引きこもりの人々は安心します。自分だけじゃなくなるわけですから。そんな落ち着きが生活に広がりつつあります。経済は大変ですが、日常が穏やかになっています。
コロナがあるので、自宅でテレワークしてもダラダラしててもバレないし、そういう安堵感があるわけです。意外と深刻ではない人も多いのではないでしょうか。少なくとも学生は深刻じゃないですね。
また、コロナに気がそれているので、人間関係に気持ちが向かなくなり、それで助かっている人々もいます。
こういう心理的な効果をこの機会に研究してみるといいのではないでしょうか。危機的状況下における安らぎの研究。みんな大変、大変と言っていますが、大変じゃないこともいっぱいあるのでしょう。
強迫性障害を確認しておきます
Obsessive Compulsive Disorder (OCD)と言います。DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き)にはこれまでの不安障害の一部から独立して、一つのカテゴリーとなっています。強迫は、不安障害ではないという判断がなされました。
強迫性障害は、スペクトラムを成していて、不安や恐怖からくるものだけでなく、統合失調圏まで大きくカバーするものであるという精神科医もいます。個人的にも納得のいく見解です。心理発達でいうと、成人期だけの症状でなく、思春期、学童期、そして脳機能の問題まで幅広く見られる疾患ということになります。
その人の強迫症状はどの辺りの心理発達のことなのか、その見立てが重要になってきます。
強迫性障害には、醜形恐怖(自分が醜い)、ためこみ(ものが捨てられない)、抜毛、皮膚むしり、様々な反復作業(唇を噛む、洋服を何度もたたむ、ジンクスに囚われる)、強迫的な嫉妬(パートナーが不貞している)、対人恐怖、自己臭恐怖(自分が臭い)などがあります。
最後にウイルス対策
2020年3月7日時点のTVやネット情報を整理すると、自衛での対策もいくつかある(1~3)ようです。マスクや石鹸手洗いはそれのみでは効果が低いようです。感染して重症化したとき(4)は、WHOによると、酸素吸入療法とのことです。
(1) ウイルスは空気中に浮遊しているよりは、何かにくっついていることが多いので、自分のてのひらや指をモノに触れさせないこと。つり革、机、自分の服などには触らない。指を使う場合は、手の甲側の指を使うようにする。自分の手に付着して体内に入る可能性が一番多い。だからマスクの予防的な効果は低い。
(2) 手についたウイルスを殺菌するには、エチルアルコール。ない場合は、ウイスキー等の度数の強いアルコールを少量、手に付けてこする。石鹸手洗いだけでは効果が弱い。石鹸だけでは全てのウイルスは死なないし、手から流れ落ちづらい。
(3) 部屋の環境を、気温22度以上、湿度50%以上にするとウイルスの活動は低下する。つまり桜の時期を過ぎる頃には勢力が弱まるのではないか 。
(4) WHOの最新の報告によると、重症化した場合、進行を抑える治療として、高濃度の酸素を吸入させる療法がある*1)とのことです。
ご参考までに。
Reference
*1) AFP: 「人工呼吸器の確保を」 WHOが各国に呼び掛け 新型ウイルス重症者への備え, 2020年3月2日
コロナウイルス関連でちょっと強迫的な感じだと思ったときは、ソレア心理カウンセリングセンターへ。
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