職場で、面接場面で同じ言葉を話すことは【共感】ベースの関係性

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同じ言葉を話す仲間がいるのは心強いことです。しかし時の流れとともに仲間は集まったり離れたりします。それは仕方のないことです。その中でどのように援助職として生きていけばいいのでしょうか。

職人になるためには

職人を目指す人には師匠が必ずいるわけですが、一流になるにはその師匠と同じ言動を真似をしていくというプロセスが存在します。

精神科医の神田橋條治先生がその著書でも言及していますが、先生は昔、手品にハマったそうです。それで或る手品師に弟子入りをするのですが、そのとき手品の師匠の言動を徹底的に真似をしたそうです。

行動や手品のワザを真似するだけでなく、言葉も真似をするんですね。それになりきるのが大切という話です。そうやってワザは師匠から弟子へ伝承されていく。

これは何も職人に限った話ではありません。心理職も全く同じです。誰か先生がいる。その先生に傾倒したら、まずその先生の真似をしていることに気がつくと思います。その先生のスーパービジョン(SV)を受けることになると思うので、そのSVの過程で師匠の言葉が少しづつ自分の言葉の中に浸透していくのです。

例えば精神科医の高橋和巳先生なら、どういう言葉を使うか?トップ3をあげるとすると、(1)異邦人、(2)頑張り、(3)恐怖 といったところでしょうか。そして高橋先生に師事したならそういう言葉の真の意味を理解し繰り返し使っていく中で、自分の血にしていくことです。

それらの浸透した言葉は患者を助けていくのでしょう。

「自分が使う言葉を話す人が居なくなった」

そのように話す援助職の方がいました。このことはさみしいことです、と。数十年前に自分の職歴をスタートさせたとき、無我夢中でした。そのうち同じような考えを持つ仲間が一人、二人と増えていって、彼らと話をしているときはそれはもう楽しかったです。仕事の醍醐味を感じていました。彼らの利用者への眼差しも暖かくて、その集団にいるのが心地良かったのです。

しかし、十年、二十年と経つうちに、その仲間の一人抜け、二人抜け・・・気がついたら私だけになりました。アガサクリスティではないですが、そして誰も居なくなったのです。自分と同じ言葉を使う人が居なくなった。1つの時代というか、私の一番重要だった時代が終わってしまった。それはさみしいことですね。

自分と同じ言葉を話さない場というのはその人を孤立化させます。先に挙げた、高橋先生の言葉のトップ1にくる「異邦人」という言葉、これは他の心理場面では通用しません。事例検討の場でこの言葉を言っても、変な人とスルーされるだけです。だから、異邦人を一般的な言葉に翻訳して話す必要が出てきます。面倒くさいわけです。

同じ言葉を話す場というのはとても心強い。それは自分が孤立しないためにも必要です。孤立というのは精神を蝕みます。しかし、皮肉なことに心理職の人々は孤立しがちです。元々が一対一の仕事をしているからでしょうか。

でも、思い返してみてください。患者と面接しているときは一人では決してない。二人、居るのです。孤立はしていないのです。

患者の中に自分の言葉を見つけなさい

この言葉は、上述した援助職の人の言葉を受けた、私の造語です。患者の話を傾聴していると、患者の言葉の中に、自分が使う言葉を必ず見つけることができます。

これはどの患者に対しても、それはできるのです。数の上下はありますが、どの患者に対してもできます。心理職は、職場では孤立するかもしれませんが、面接の場面では孤立していないのです。

これはある意味、患者が心理職のあなたを救っているということです。こうやって患者の言葉の中に自分の言葉を見出すことができてくると、患者との関係性にも良い影響が出てくることは、言わずもがな。治療の進展を見据えて、治療同盟をスムーズに作ることができるでしょう。ご自身がバーンアウトしないためにも必要なことです。

ハコミセラピーという心理療法があって、その中で説かれるカウンセラーの態度の1つに「ラビングプレゼンス」というものがあります。これは簡単に言うと、患者をリスペクトするということです。患者の言葉の中に自分の言葉を見つけられると、患者への気持ちが肯定的になりますから、これもラビングプレゼンスということになるでしょう。

言葉が浸透するのは、何も師匠→自分という方向ばかりではありません。患者→自分という方向もある。心理職では、むしろ後者のほうがより援助的に働くでしょう。

貴方の本当の言葉を見つけたいときは、ソレア心理カウンセリングセンターへ。

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