気分が落ち込んだときに|目の前の【小さな自由】が抑うつ感を低減する

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臨床心理士・公認心理師の高間しのぶです。

  • 毎日うつうつとして気分が晴れない。気分をアップさせたい。
  • 気分の落ち込みを切り替えたい
  • 一度うつ病になったことがある。再発するのでは?と不安だ。

そんな悩み(不安)を持って生きているあなたに、抑うつ的な気分にどのように対処したらいいのかをお伝えします。これまで、のべ2万人の悩みを聴き続けているマインドフルな心理師が、日々のカウンセリングの中から得た知恵を、みなさんとシェアします。この記事のポイントは、

  • 「自由を感じていると気分はおちこまない」という原理(前半)
  • それでは実際、どのように自由を感じればいいか(後半)

前半部分は動画でも配信しています。記事にプラスアルファしたことを話しています。

■自由を感じるときは気分は落ち込まない

社会人になると、抑うつ感はなじみのある感覚になります。責任と抑うつ感はセットですから。この抑うつ感に対処するには、どうすればいいのでしょうか。次のようなツイートをしています。

大人になるとうつ病になるものですが、予防策はあるのでしょうか?コツは【自由】です。日常の中に、小さな自由の雰囲気を感じていくのです。例えば、ビルの間を吹く木枯らしに今年の冬を感じるとか。いま感じている自由が大切です。抑うつ感と自由は同時には感じることができないので、自由を感じていると抑うつ感は低減する。EMDRの原理ですね。

EMDRとは、トラウマイベントを思い出してもらって、セラピストが目の前で指を左右に動かすのを追視するセラピーです。目を左右に動かすとリラックス状態になるため、トラウマの恐怖とリラックスは同時に感じることができないので、恐怖が減っていくという原理です。

さて、このツイートでいうところの自由とは「自分の好きなことをする」ことではありません。アウシュビッツの収容所から生還した精神科医のフランクルも言っています(*1)。

自分の好きなことをしても幸せにはなれない

自由と幸せとは直結している感覚なので、フランクルは自由のことをいっていると言い換えてもいいでしょう。「自分の好きなことをしていても自由にはなれない」と。ではどういうことが自由なのでしょうか。

それは、自分の感覚が軽くなることです。フッと上昇していく感覚、ムリをしていない感覚です。決めたんだからそうしなきゃ、習慣化したのだからやらなきゃ、というのは自由ではありません。

自由とは、自分がのびのびと息ができる感覚です。それを感じているとき、あなたは【自由】です。おそらく、幸せの中にいる可能性があります。これは何物にも囚われていない状態です。

大人になって社会の一員になると、当然のように責任も結果も求められるようになって、うつ病になるリスクが上昇します。その社会で生きていくためには不自由とストレスも感じるでしょう。でもそこで生きていくためには、そういうリスクと引き換えであるということも学びます。そしてこの学び、この不自由さが、抑うつ感を引き寄せます。

成長するほど抑うつもアップするー比例関係なんですね。これが大人の葛藤です。大人だから仕方ない。学びはうつ病へつながる。これは仕方のないことです。

しかしここで別のファクターに目を移しましょう。抑うつ感は不自由から来るわけなので、あなたが自由を感じていたとしたら、抑うつ感も減少するのです。そのためには、自分の感覚が軽くなる体験が必要なのです。

◇自由な体験とは具体的には何でしょう?

それは、ほんの小さな体験で十分です。ビルの谷間を吹き抜ける木枯らしに肩をすぼめて、ちょっと視線をビルの上にあげたとき、ビルとビルの間に上弦の月が登っている。それを何とも思わない人もいるでしょうし、それにこころを奪われる人もいるでしょう。何とも思わない人でも、また違う風景に出会ったとき、ハッとすることだってあるでしょう。そういう体験が、あなたの自由度をアップします。つまり幸福度をアップするのです。

その何気ない毎日の風景の中に、真実のかけらのようなものを見る人だっているのです。病院のベッドで動けなくなっている人が、窓の外の木の葉が揺れるのをみて、そこに「永遠」に近い感覚を体験した。これは村上春樹の処女作「風の歌を聴け」の1シーンです。こういう題材は、事欠きません。

あなたのすぐ前で繰り広げられている現象、それがあなたの自由とつながっていて、幸福度をあげるのです。それによって抑うつ感から遠ざかることができるのです。

◇SNSは集団ヒステリーになりやすい、つまり自由でない。

SNSでは、こうやったらいいよ、成功するよ、という情報がぎっしりで、おなかいっぱいになります。このおせっかいは縛られた感覚になります。自由を求めてSNSを始めたのに、気づかずに縛られてしまう。苦しくなってくる。

SNS定番の「ルーチンにしましょう」と言うのは、間違ってはいません。しかし間違っていないから、それはあなたにとって正解かというと、そうでもないのです。それを発信した人には正解だったとしても、それが「あなたの正解ではない」ということです。発信した人が成功している人だったら、それがやれない自分を責めることになります。「やれない自分はまだダメなんだ。」そうやって自由を求めてどんどんと不自由になっていくのが、SNSの世界です。

これを知っておくと、SNSと適度な距離を保てますよね。相手の言うことを妄信することも少なくなるでしょう。SNSは洗脳と似ている部分があります。SNSをやっていて苦しさを感じる人は、健康的な人です。洗脳だったら苦しいですよね。この苦しさに気づくだけでも、少しは自由になれるでしょう。

マルチ商法というものがあります。人を集団の群衆の中に閉じ込めて、あおって「熱狂」状態を作り出す。この熱狂の中で、なぜか分からないまま契約させられる。これは集団ヒステリーによるマーケティング戦略(違法な勧誘)です。SNSはこの集団ヒステリー状態を作りやすいのです。このSNSの原理を知っておきましょう。自由に生きることができていれば、熱狂の中に放り込まれたときでも、ココハ、ナンダカ、オカシイゾ と気がつくことができるでしょう。

■生活の中でどのように自由を感じるのか?

自由を感じて生きる重要性は分かったが、葛藤の中でどのように自由を感じるのか悩む人もいらっしゃるでしょう。次のツイートをみてください。

生き方の指針はいろいろあります。その中でも最強と言ってしまってもいいものは、【あなたの感覚に自由に生きる】です。これはね、「あなたのやりたいことをやる」というのとは違います。あなたの感覚が自由に息できる体験をするということ。あなたがのびのびとすることを体験していくこと。

前のツイートでも紹介したように、好きなことをするとか、やりたいことをすることが自由である、ということにはなりません。つまり、自由とは「自分の欲望を前面に押し出した」ようなことではないのです。

では、どう生きるのか?それは、自分の【感覚に】自由に生きるということ。自分の感覚を押さえつけずに感じ続けること、ともいえます。これは皆さんご存じのマインドフルネスですね。ゾーンに入っている状態ともいえます。軽い感じ。あなたの感覚がのびのびと呼吸している感じです。

マインドフル、ゾーンの状態ですから、時間の動きがとてもゆっくりになります。ていねいにやりつつ、時間軸がゆがんで遅くなります。野球選手がゾーンに入ると、ピッチャーの投げたボールが止まって見えるといいます。あの状態です。忙しくても、時間がゆっくり流れていくのを感じていると、あなたは幸せに生きているでしょう。

例えば、人のために何かをしていたとしても、自分の感覚を自由にできていれば、それをストレスに感じたりはしません。「誰かに何かをしている」とき、負担に思わずにやれるのは、あなたが自由だからです。

感覚の自由を味わえる瞬間は、日常の中で色々ところがっているでしょう。時間に追われるのでなく、例えば、始発駅から終点までを何度も往復してみる。これは面白いですよ。時間のムダと捉える人もいるかもしれませんが、これは時間はムダにしているかもしれませんが、経験はムダにはしていません。さまざまに揺れ動く風景とともに、あなたの感覚や感情も複数の追体験をしているからです。あなたの感覚は自由を味わっているでしょう。

家やその他の場所に居場所を見つけられない人が、そうやって電車やバスの中に安心できる居場所を見つけることもあります。

首都圏の忘れ去られた路線「鶴見線」で、途中下車しながら過ぎ行く時間を楽しんだことがあります。鶴見線は海のそばの京浜工業地帯を走るJRの路線です。キラキラした光と風と海が近い匂い。昭和30年代くらいの時間の流れが、そこには残っています。私は鉄ちゃんではありませんが、タモリ倶楽部にも何度も登場している絶品の【自由を感じる】おススメ路線と言えるでしょう。

■ルーチンを壊して自由になる

不自由とは縛られていることです。つまり習慣化したものはあなたを縛っているものとも捉えられます。ツイートをご覧ください。

毎日のルーチンを壊してみるのもいいでしょう。例えば、私の場合、去年続けた記事と動画の配信ルーチンを崩しています。ルーチンをやるほうが安心するでしょうけど、それによってこころは縛られます。【守破離】守ってきたものから別ものへ離れるとき、必ず破る時期がある。破るとは自由な空気を吸うこと。

守破離、能楽の言葉です。弟子が師匠を乗り越えていくことです。ニーチェも同じようなことを言っています。「永劫回帰」です。詳しくお知りになりたい方へ参考記事を張っておきます。

この守破離の「破」ーここに自由があります。「守」の期間が10年としたら、「破」はそれ以降。人間の発達段階でいえば、さしずめ思春期(第2反抗期)でしょうか。破壊の時期。思春期も10歳以降に始まります。親から受け継いだ倫理規範を破って、成人になっていく時期です。思春期は、ご存じの通り、かなり自由ですね。ご自身の過去を思い起こせば、よく理解していただけるでしょう。

ルーチンを、習慣化したものを、古いものを、破壊する。規範になったものを打破する。これが自由です。一度大きく変化してみるといいですよ。大きく変化したらまた揺り戻しが来て規範に戻ったりする。しかし、また逆サイドに振れる。この振り子のような状態を通して葛藤が壊れていき、収束し、自由が実現していくでしょう。師匠から離れて(守破離の「離」)自分の道を歩み始めます。

■まとめ

日常生活の中で自由を感じることができれば、抑うつ感と自由は共存できないので、うつうつとした気分を回避できる可能性が高まります。

どのように自由を感じるか?それは、自分の【感覚を】自由に感じているときです。日常のなかでのびのびとしているときです。これはルーチンを破ることでも得られます。

この自由というのは自信にもつながっています。自由が回復すれば、自信もついてきます。関連記事をごらんください。

あなたが自分の人生に自由を感じて、落ち込みなく生きられますように。

alternative evening session 番外編

いつもと違うことをすること。これがあなたに自由を与えていくでしょう。そして少しづつでいいので、誰かにしばられていかないこと。あなたのペースで歩いていけること。【誰にもしばられず、自分にしばられる】感じ。自由な気持ちをもっている自分にしばられる。これほど自由なことはありませんね。

誰かのマネをするのは苦行ですね。できればしたくない。でもそれをしないとモノにならないときもある。それならそれをしつつ、それ一色になるのでなく、ほどよくその規範を破ることを日々積み重ねることも大切なことです。師匠に対して小さく氾濫を起こしているわけですね。妄信的でなく、自覚的になっているのです。教えを乞いながら、教えを破っていく。これが学びの原点です。

小さく学び、小さく破る】。この積み重ねがあなたを抑うつ的な人生から救い上げてくれるでしょう。

Reference

(*1)諸富祥彦: どんな時も、人生にYESと言う~フランクル心理学の絶対的人生肯定法, 大和出版, 1999

なかなか落ち込みから回復しないときは、ソレア心理カウンセリングセンター(埼玉県)へ 相談する

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