自分が何者かを知れば何者かになれる|感情を理解してハードボイルドに生きる

Noh mask こころカフェ(最新の心理学)
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この記事は、のべ2万人余りの悩みを聴き続けている、マインドフルな臨床心理士が学んだことを中心に、最新の知見をお伝えします。

自分のやっていることに自信が持てない。SNSなどで有名になって、何者かになれれば、一発逆転とまではいかなくても、少しは不安が減ると思うが…。そんなふうに思っている人は少なくないでしょう。

この記事では、何者かになるにはどうすればいのか、そして何者かになったあとはどうなるのかなど、2つのヒントを紹介しています

前半では、何者かになること、そのためには感情が処理されることが必要なことを、後半では、何者かになったあとの人生について紹介しています。

具体的には、次の3つのことを解説します。

  • 何者かになるとは自分を深めること
  • 諦めと【明ら目】、感情を十分に感じ切ると何者かになった!
  • ハードボイルドに生きているなら、すでに何者かになっている!

■結論:何者かになるとは自分を深めること

Noh mask
風姿花伝の守破離!

次のようなツイートをしています。

【何者かになる】とは自己啓発では良く聞きますね。この言葉の意味は、
・今の自分とは違う誰かになる、という意味ではなく
・今の自分を深めていく、という意味です
今から離れた自分というのは、あなたのアイデンティティから離れるので、そんなことは不可能です。常に【今の自分から出発】です。

いきなりで申し訳ないのですが、「何者かになる」とは間違った用法です。自己啓発やSNSではよく使われますが、単に「有名になる」という意味です。有名という使い方はゲスな感じがするので、オブラートで包むように言い換えているだけです。しかし、正しい使い方は「何者かを知る」です。

ここでわかるように、すでにあなたは何者かになっているが、それが何者かが分からない。そういうときに使います。

10代にとっては、何物かになる途中ですが、20代以降は、それが分かる分からないは別にして、すでに何者かにはなっているのです。

何者かを知るために【誰かを真似る】というやり方はあります。真似が下手な人もいますね。私もそうです。なかなか真似られません。ただ、この真似るというのも、真似ながら、その真似ている人に同一化していく作業ではないのです。なぜならすでに自分は何者かになっているからです。

では、どういう作業なのか?それは真似ながら、師匠のやり方を自分の中に取り込んでいく作業になのです。取り込む箱はあくまでも自分しかない。だから、違う誰かにはなれず、自分を深めていくという話になるのです。

例えば、師匠を決めたら、その師匠のいろいろな習慣や発言を真似したりします。これを言い始めたのは風姿花伝の世阿弥です。日本最古の芸能論で、能楽の聖典ですね。

そこで真似をしながら、型を覚えるわけです。それが【守破離】です。

  • 守:まず、型を自分に取り込む時期。
  • 破:取り込んだ型を自分の中で溶解してそれを外へ出していく時期。
  • 離:自分が師になる時期。

自分の体験を振り返ると、こんなふうに能動的に学んでいきました。だからこれは自分を深めている作業ということなんですね。

ここで【守】の段階は、長い時間かかります。体験では最低でも1万時間。数年のスパンは見ておきましょう。守に3年ほどかかるなら、守破離全体で5年くらいでしょうか。守に10年かかったら、守破離全体で12年くらいです。私の体感では、守に10年。

自分を深める作業は、おおよそ5年~10年以上かかるということです。これはあくまでも目安として使ってください。

自分を深めるなんて気の遠くなる作業などせずに、誰かのを完全にコピーして使えればいいと思う人もいるでしょう。それは業界によっては、たしかにある程度まではやっていけるかもしれません。

それよりも一番やっかいなのは、それをやってあなたが飽きないか?ということです。モチベーションを高い状態でやっていけるか?自分の中から出てきたものでないことを続けていくのは、案外とジレンマと困難さが付きまといます。参考文献をご覧ください。(*1)

■諦めと【明ら目】、感情を十分に感じ切ると何者かになった!

ツイートをご覧ください。

カウンセリングでは感情を扱います。大きく進展するとき、相談者は【諦め】を感じています。これは①不安からスタートした感情が諦めまで進展したのです。ですから不安や恐怖は最小化しています。同時に②諦めは【明ら目】、明晰な状態です。そこまで見えていると腑に落ちた感覚になります。

感情的に腑に落ちると、それ以上抵抗しようとしなくなります。自分の内面が安定します。そして空が晴れてくる感じになります。

この明晰な状態に至るには自分の感情を感じ切ること。ここまでくると、何か憑き物が落ちたようになります。このとき、「自分は何者かを知った」と感じることができるかもしれませんね。

感情的に納得できないと、いくら頭では理解していても、なかなか視界が開けた感じがしないです。行動に制限がかかってしまい、いまいち積極的になれない、協調的にふるまえないことは、誰しも経験されているでしょう。

それは人間は【感情的な生き物】だからです。だから、自分の感情をていねいに扱うところから始めてください。それによって何者かになれる瞬間が来るでしょう。

■ハードボイルドに生きているなら、何者かになっている!

これは一つの指針です。これ以外にもありますが、ハードボイルドに生きているなら何者かになっている!(何者かを知っている)と考えてもよさそうです。

下記のようなツイートをしています。

【我慢とヤセ我慢】我慢はがっちりと自分を押さえて縛り付けている感じで心身に良くないです。ヤセ我慢は、自分というものが表面まで出てきて、それで格好をつけてガマンしている感じ。ハードボイルドでさえあります。ファッションをキメて、ヤセ我慢で生きられるようになると【自由な人生】が手に入ります。

我慢とは、感情を我慢していることです。この我慢は無意識レベルでやるものですが、ヤセ我慢は意識レベルでやっているものです。だからヤセ我慢は、それほどこころを痛めつけません。ちょっとハードボイルド風にヤセ我慢して生きられるようになれば、それはカッコいいではありませんか。それはすでに、何者かになっている(知っている)んですよ!

例えば、別れのシーン。双方が理解していたとしても、感情はさまざまに揺れ動きます。泣き叫んだり、いじわるな行動に出たりすることも。これは、感情を押さえていないので、悪いという訳ではありません。でもちょっとカッコ悪いかも?

しかし、ここは自分の感情はよく分かっている上で、グッとこらえてみる。まぁ、大人ならそういう場面も出てくるでしょう。レイモンド・チャンドラーの探偵小説からの名言集を少し。何者かになっている人の言葉を借りて、心理学的な解説を加えました。

◇フィリップ・マーロウの名言と心理学

タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない。
If I wasn’t hard, I wouldn’t be alive. If I couldn’t ever be gentle, I wouldn’t deserve to be alive.

有名なセリフです。ものすごくヤセ我慢してますね(笑)。でもこのヤセ我慢は気持ちがいいかもしれない。「何者か」はヤセ我慢できる人ともいえる、その究極のセリフでしょうか。

タフに生きるのはそんなに難しくないでしょう。しかし優しく生きるのは、それよりもハードルが高くなるのです。タフ→優しく。最近は、これを逆に考える風潮があるように思います。筋トレではたどり着けない境地があるということです。

【タフに生きるためにアドラー心理学を。しかし優しく生きるためにコフート心理学を学ばなければ意味がない。】心理をやっている身としては、そのようなセリフが吐けそうです。大学でアドラーを勉強して、大学院でコフートをやる、そんな感じでしょうか。

飲むのならプライドを忘れないようにして飲みたまえ。
Use your pride on that.

プライドと行動は結びつくから注意したまえ、と言われている気分になります。その人の行動を見れば、その人のプライドが分かるのです。プライドというものは、非常にやっかいなものです。それによって生きづらさが増している人も多く見かけます。

このやっかいなプライドですが、依存症から回復するにはプライドが必要だというのは、意外と真実です。カッコ悪いから止めよう、くらいになれば、もう十分に依存症から抜けているでしょう。

ただプライドによってうつ病にならないとも限りません。ヤセ我慢しすぎないようバランスが必要です。

翻訳では自尊心となっていましたが、あえてプライドと訳しました。なぜなら、プライドというと身近な感じがするからです。その身近さというのは【依存症は誰にでも起こり得るという身近さ】につながるからです。

さよならをいうのは、少し死ぬことだ。
To say Good bye is to die a little.

そのように考えるのであれば、さよならという言葉の重みを感じることができるでしょう。そういう「さよなら」を言える相手と巡り合ったということ。相手へのリスペクトを感じます。相手との貴重な時間の重さを回顧しているようです。

大切な人と出会うということは、そのくらい寿命が縮むことなのです。人間はそうやって重要な他者に出会っていきます。それが生きる宿命のようなものなのかもしれません。

重要な他者とは、自分の成長に大きな影響を与えた他人のことです。これは良い人ばかりではありません。あなたにとって癌となる人物も重要な他者となり得ます。癌となる人物にも、感傷的にグッバイと言えるくらい。それは、そのくらい回復してきたということでもあるでしょう。

■まとめ

何者かになる(何者かを知る)とは、自分を深めていくことです。そのために先人を真似ることもありますが、あくまでも自分という【箱】に取り込んでいく作業です。真似る場合は、守破離を意識します。

また、別の視点で考えると、自分の感情が腑に落ちると、自分の内面が安定します。これは何者かになった(何者かを知った)といえます。

最後に、ハードボイルドにヤセ我慢できれば、すでに何者かになっている(何者か知っている)という話をしました。チャンドラーの探偵小説の名言のいくつかをピックアップして心理的な解説を加えました。

自分がわかれば、自分が何者かが分かります。

Man in hat
ヤセ我慢してフィリップマーロウ。

Reference:

(*1) 松尾 理:学生の自律的学習へのモチベーションを上げる方策を考える, 近畿大医誌, 2017

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