こんにちは、臨床心理士の高間しのぶです。
・感情に振り回されて生きづらい、なんとかコントロールしたい
・部下のパフォーマンスをあげるには、どのような対応がいいのか
そんな悩み(不安)を持って生きているあなたに、何かのヒントになればと思い、記事にしました。上の2つの悩みは全く違うように見えて、同じところから生じています。この記事のポイントは、
- 感情にも自然な流れがあって、その流れに抵抗しなければ、楽になっていく。この感情の原理は、物理世界でも、感覚の世界でも同じ原理。一言でいうなら【流れましょう】。
■パフォーマンスをあげるものは安全性
感情に揺らされてパフォーマンスが落ちてしまうという現実は、社会人にとっては人生最大のテーマかもしれませんね。次のようなツイートをしています。
感情をコントロールすると何かいいことがありますか?
答えは、いいことはない。【感情のコントロールはしなくていい】。皆が自分の感情を話すようになるとカオスになると他人は恐れます。
しかし実際はカオスどころか、パフォが上がるんですよ。
なぜなら心理的な安全性が確保できるから。これ、最重要事項(ツイート改訂)
なぜなら【安心できる場所】つまり安全基地では、感情は暴走しないからです。カオスにならないのでコントロールする必要もない。安全性が確保されている場所ではカオスにならないのです。
では、そういう心理的に安全な場所は、どうやって作られるのでしょう?
繰り返しになりますが、重要なことなので何度もいいます。ホッとできる場所には【楽(らく)】という感情が起動しています。楽という感情を感じているのです。そのように人というものは、常に感情とともに生きているのです。ですから何かの感情をコントロールしようとすれば、逆に感情に反撃しまうのがオチです。
もともと感情には、収束していく原理があります。【不安⇒怒り(恐怖)⇒さみしさ⇒かなしみ⇒あきらめ⇒楽】、このような方向性で流れていくという原理があります。水が低い方、低い方へ流れていくように、感情も結局は【楽な】方向へ流れていくのです。途中、行ったり来たりは当然ありますが、だいたいは楽な方向へ収束していきます。
例えば、ジャズ。ジャズのアドリブは、IIm7⇒V7⇒I というふうに、ルート音(I度)へ向けて音が流れていきます。それが居心地がいいからなんです。またルートへ向かっているなら、どの道筋を通ってもいいということもあります。ただ方向性はルート音を目指すのです。これは感情の話ではありませんが、こういう聴覚などの感覚の世界でも、安定する方向へ向かって流れていくのです。
さきほどの水が低い方向へ流れるというのは物理世界の話でした。このように、物理も、感覚も、感情も、同じ原理で動いているのです。収まりやすいところへ収まる。感情の場合は、それが【楽な感情】へ収まるのです。それが原理原則です。
◇偏桃体仮説
脳の深部には偏桃体という部位があって、そこが興奮すると感情が暴走するという仮説があります。その仮説によると、偏桃体の興奮を認知脳(前頭前野)で抑えられれば、感情暴走は食い止められるというものです。そのためには認知脳がクリアでなければならない。認知脳を活性化させておくために、ストレスフリーな状況を作るためには瞑想などがいい。そのようなロジックで感情をコントロールしましょうというものです。
ここには認知脳で感情へアクセスしたとき、アクセスされた感情はどうなるのか?の説明がありません。「偏桃体の発火が収まった」と説明されるだけです。しかし、認知脳が起動すると、感情には負担がかかり、こころにはモヤモヤした実感が残ります。実感として感じている方もいるのではないでしょうか。
認知脳は、感情の暴走が怖いのです。ですから、かなり強いロジックで感情のコントロールにかかるのです。そのとき感情は悲鳴をあげて、自分への反撃に出るのです。これが自傷となって表現されることもあります。自傷とは、認知と感情のせめぎ合いから出現する行動なのです。
■感情は怖がらなくていい
感情も安定する方向へ流れていくものだと解説しましたが、その流れを阻害してしまうと、当然、流れも止まってしまいます。では、この感情の流れを止めるものは何でしょう。それは、感情をコントロールしようとする力です。そして、この力はどこからやってくるのでしょう。
それは【恐れ】という感情です。恐怖の感情によって、何か別の感情(例えば、怒り)をコントロールしようとする。感情の世界というのは、いろいろな感情が重層的に沸き起こっています。恐れというものは強烈な感情なので他の感情も駆逐されそうです。実際は、他の感情がなくなるわけではありませんが、そこにおおいかぶさるくらい強烈です。その結果「ある感情がなくなった」と思い込みます。
また、この恐れの感情にパワーを与えているのは「混乱を避けたいという認知」です。この認知によって恐れは巨大化します。感じなくてよいはずの恐怖まで感じることになります。しかし、この事実を知れば、ここには2つの誤解があることが分かるでしょう。どんな誤解かというと、
- 感情を感情でコントロールできると思っている誤解
- 感情が表出されるとカオスの世界になってしまうという誤解
感情は良い、悪いというものはありませんので、コントロールするものではありませんし、コントロールしてしまうと、コントロールされた感情にはモヤモヤが残ってしまいます。優劣をつけたがる認知脳の働きで、自分の感情にも優劣をつけたがるのが人間の不幸なのです。「感情をコントロールしようとする」認知脳は、ここではいったん横に置いておきましょう。感情を怖がる必要はありません。
「大勢で感情を表現した場合、さまざまな気持ちが表出してカオスになるかも」というのも恐れの感情です。実際、アサーションという技法がありますよね。「自分の感情をさわやかに自己主張する」コミュニケーション術です。あれは素直に自分の感情を出して、収拾を計ろうとするスキルです。カオスになんかならない、ということが分かっているから、アサーションできるのですね。アサーションできる場所でそれを使う。これは認知脳の正しい使い方です。
こうやって流れていく方向に、素直に従っていれば、余計なエネルギーを使うこともなくパフォーマンスもアップしていくでしょう。それだけ、心理的な安全性というのは重要な要素です。そのためには感情をコントロールするのでなく、表出させていくほうがいいのです。
そうはいっても、会議など大勢のいる中で、自分の感情を表現することはハードルの高いことですね。しかし、そういう【心理的な安全性】を求める企業風土を作っていくことは、今後、CEOには求められていくことになるでしょう。それによって、従業員のパフォーマンス(仕事の質)がアップするわけですから。
安心できる環境であなたが最大のパフォーマンスを発揮できますように。
なかなか安心を得られないときは、ソレア心理カウンセリングセンター(埼玉県)へ