心理セラピーとして行われるのが箱庭です。砂の上におもちゃのパーツを置いていきます。自分の無意識の世界が表現される、ともいいます。
ソレアにも箱庭があります。自分の気持ちを表現する手段として、いわゆる芸術療法として使っています。何を表現するかというと、
- なじみの気持ち
- 気がついていなかった気持ち
- 隠しておきたかった気持ち
そんなものが表現される可能性があります。箱庭で作ったものは、意味を解釈するものではありません。解釈もできなくはないですが、それをやってもあまり意味がないような。肝心なのは【それを作ってどんな気持ちになったのか】です。だから心理検査でなく、心理療法なのです。
この箱庭、堺雅人のTVドラマ、Dr.倫太郎でも使われていましたね。
箱庭では砂を使いますが、この砂はどこの砂なのでしょうか。色々な地方の砂が使われていますが、一番扱いやすい砂があるようです。
・島根の砂
・地元の砂(←こっちが本命)
この記事では、砂にまつわる話をします。
■箱庭の砂
箱庭とはSandplayの日本語訳で、心理療法の一つです。おもちゃの様々なパーツに目を奪われがちですが、「砂」が、実は、重要な役割をしています。砂には、てのひらを通してこころの深部を刺激する力があるようです。
この砂は、どこの砂なのでしょうか。オーストラリアの砂が多く用いられるようですが、鳥取海岸の砂が良質のサラサラ感触があるようです。
そうはいうものの、どこの砂を使っても構わないのです。近くの海岸へ出向いて、その地方の砂を使ってみる。これもセラピー的には意味のあることでしょう。
■地元の砂
地元ということにどう意味があるかというと、インド健康法のアーユルヴェーダによると、地元で採れた食材を使って料理するのが健康にとって一番良いとされています。そこから推し量ると、地元の砂を使うというのは、何ともいえない特殊な波動があるのでしょうか。
波動まで持ち出すと、ちょっと怪しくなります(笑)。人間の手のひらというものは様々なものをキャッチする受信機(あるいは発信機)の役目もあるようです。
日本語で「手当て」するといいます。手当てとはケアのことですが、癒す力が手のひらにはあるのです(*1)。だから手当て。その手のひらが触る砂。砂の触感が手のひらに伝わって、手のひらから触っている人のこころにアクセスする。そうやって癒しが伝わっていきます。
その土地々の砂を使うのも、人が親しんだ自然の何か(温度、湿度、磁場云々)がその砂に封じ込まれていると考えると、少しは理解していただけるでしょうか。
■月と砂を歌うKenny burrell
ギタリストのケニーバレル1980年のアルバム “Moon and Sand” です。表題曲のMoon and Sand で物悲しいメロディーを奏でる彼のアコースティックギター。砂漠の上をすべっていく月を思い出すと、シルクロードの幻想めいたイリュージョンが夜の静寂にとけていくようです。
この楽曲の砂は中近東でしょうか。いまの私にはそう聴こえます。これは人それぞれ、それでいいのです。
砂は、様々な時代の思いを吸収し長い年月をかけて風化していく。そういう時間の記憶が微粒子のように封じ込められているようです。さらさらと指の間からこぼれ落ちていくその流れの中に、悠久な時空が閉じ込められているようです。
砂は、私たちを魅了してやみません。
閑話休題。
■箱庭療法とは?
箱庭療法とは河合隼雄先生が留学先のユング研究所から持ち帰った芸術療法の一つです。このように芸術療法というと反論がくるかもしれませんが、繰り返しになりますが、私は芸術療法として箱庭を使っています。あえていろいろなことを読み込まない、解釈しないようにしています。
そういうスタンスのほうが芸術のもつ力を引き出せるように感じます。
ちなみに箱庭の解釈として、【グリュンワルドの空間象徴理論】を用いている場合がありますが、個人的にはおススメできるものではありません。この理論はバウムテストなどにも用いられる、アートセラピーを研究している人にはお馴染みの理論ですが、理論の根拠が薄いと思います。同じ投影法のロールシャッハテストのようなしっかりした理論ではありません。
そうすると、解釈というよりも、作品として味わうというアートセラピー的な使い方になってきます。
ユング研究所にカルフというおばさんセラピストがいて、彼女がイギリスのローウェンフェルトの世界技法というおもちゃ遊びに触発されて始まったのが、この箱庭です。英語では、Sand Play。そのものですね。
■箱庭を避けるとき
箱庭療法は、もちろん万能ではありません。むしろ危険な場合もあります。特に子どもとするときは要注意です。セラピストはそのようなことにも気を使いながら、セラピーをコントロールする役割があります。こんなツイートをしました。
以前、不登校の小6女子に箱庭をやろうとしたとき、パーツの前で固まってしまいました。情報量の多さに圧倒されたのですね。そこで誘発線法に切り替えました。スクイグルや樹木画でなく、枠組みがしっかりある誘発線法だったから良かったのかも。
◇情報量の多さ
箱庭は、情報量が無限ともいえるものです。だから、個人の中に、その情報量を扱えるだけのこころのエネルギーがないと、侵襲的に働く危険性があります。特に子どもの場合、言語化できないからと不用意に使用してしまうと、閉じ込めていたものが大爆発するように表出して、大変なことになる可能性もあります。これは治療トラウマを作ってしまうので、よくよく注意している必要があります。
◇砂のもつ退行させるチカラ
箱庭の砂を触ると分かりますが、とても気持ちのいいものです。普通のこころの状態なら「気持ちがいい」ですみますが、状態の悪い人がこれを触ることで、退行していってしまう危険性もあります。「退行」とは幼児返りです。退行を狙って箱庭を使うという使い方もあるのかもしれませんが、ここは十分に気をつけておくポイントです。
◇誘発線法など
そのため、箱庭よりも、【制限の効いたアートセラピー】のほうがよい場合も少なくありません。その中でもおススメなのが、中井久夫先生の考案された【誘発線法】(*2) です。簡単な技法ですので、ぜひマスターしておいてください。
Reference
*1) 吉田弘:手の妙用―大自然の治癒力, 東明社, 1986
*2) 田中勝博:誘発線法の反応特徴に関する研究–MMPI,SDS,印象評価との関連を通して, 目白大学心理学研究, 2007
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