American Psychological Association (APA)の最新の心理学関連の記事をピックアップしてお届けします。今回は気候悲嘆という新しい悲嘆についての紹介です。
天気の子
新海誠監督の2019年の映画です。雨が降り続く東京で、その異常気象にひとりの少女が立ち向かうストーリーです。その枠組みの話は、宮沢賢治にもありましたね。グスコーブドリの伝記です。
そんな異常気象がもたらす精神的悲しみについての研究があります。
Climate Grief(気候悲嘆)
「気候変動への喪失による悲嘆」という新しい概念があります。
配偶者のいる人は子どもを産むかどうかの選択を迫られるかもしれません。また、うつ病や不安の症状を悪化させる可能性があります。不確実性が組み合わさって不安になることはあるでしょう。これらはうつや不安障害に直結するもので、今回の気候悲嘆とは違うものです。
よく知られている冬季うつ、低気圧症候群、気象病などは、この気候悲嘆とは異なっています。
ラブラドール研究所所長のAshlee Cunsolo博士たちは、「急性または慢性的な環境変化による種、生態系、親しんできた重要な景観」の喪失を体験するか、予測すると、気候悲嘆に陥るといいます。
多くの点で、気候悲嘆は他の悲嘆に似ています。
悲しみは、喪失または予想される喪失に対する通常の人間の反応です。安定性の喪失または予測可能な将来の喪失を予測することは、必然的に悲嘆を引き起こします。ここは他の悲嘆と同じです。
異なる点は、進行中の喪失であるということです。あなたが他の何か、人や場所の喪失に嘆き悲しんでいるときはすでに去っていますが、気候変動は進行中の喪失なのです。まだ終わっていないので、悲嘆にどっぷりと沈み込むことができません。通常の悲嘆は、それに浸りこむことで次の道が開いてきますが、それができないのです。
気候の喪失は、犬を失うことや人を失うこととは異なります。
また自然豊かな土地のコミュニティの中で生活している人々は、気候変動や気候の喪失の悲しみに対して特に脆弱だという研究があります。CunsoloとEllisが、カナダのイヌイットの気候悲嘆、オーストラリアのウィートベルト農村部の農家の気候悲嘆を報告しています。
気候の悲嘆への対応
気候関連の精神的健康へどのように介入するかの臨床研究は現在ありませんが、人々が対処するのに役立ついくつかの戦略があります。
(1) 気候変動が短期的に自分の地域にどのような影響を与える可能性があるかについての詳細を知ること。
(2) 自然の中で時間を過ごすこと。
これは、自然は不安の源であると同時に、力の源でもあるのを人々に思い出させるということが、たぶん役立つことだからでしょう。
感じて、話して、集まり、行動する
感じて、話して、集まり、行動する。この順序で気候悲嘆を処理することも効果があるとされています。
人々が自分の感情について話し合うためのスペースを作ること。そして、志を同じくする人々と集まることは、人々が気候の悲しみを乗り越えるのに役立ちます。いわゆる当事者の会です。同様の懸念や感情を抱いている他の人を見つけて参加することは、孤立と孤独から抜け出せます。
そして、社会的つながりは回復力の非常に強力なソースであるため、協力して問題に対処することは、その人にとっての幸せな経験になる可能性があるのです。
Reference:
Summer Allen: Is climate grief something new? APA news, February 19, 2020
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