・ぐっすり眠った気がしない
・なかなか寝つけない
こんな悩みをお持ちのあなたへ。
この記事では不眠を改善するための3つのタイプに分けてそれぞれの対処法を解説します。不眠の重症度もこの順番になります。臨床心理士がお伝えするこの知恵は、のべ2万人の悩みを聴くなかで学んだものです。その3つのタイプとは、
- 「愛着に問題のある人」タイプの対策
- 「不安が強い人」タイプの対策
- 「体内時計のリズムを逃している人」タイプの対策
具体的な対処法の前に、この3つのタイプをどうやって区別するかについて理解を深めましょう。
今回の解説は脳機能に問題がない人向けです。発達障害などの人は、過眠や二次障害としての不眠もあります。これらは睡眠障害としてではなく、発達障害として対応すべきところでしょう。睡眠の問題が起きている場合、発達障害かどうかという視点も重要です。
■睡眠時間とその効果
眠れない対策の前に、一般的にどの程度の睡眠が必要なのかを解説します。次のツイートをご覧ください。アメリカ心理学会の最新のニュース(*1)をまとめたものです。睡眠は記憶力・集中力アップにつながります。ですから受験生の睡眠がいかに重要かが分かるでしょう。
アメリカ心理学会Newsから【8時間睡眠は必須】
— 高間しのぶ(ソレア心理) (@soleapsy) December 17, 2020
・8時間の睡眠をとるアメリカ人はほとんどいない
・睡眠は記憶力と集中力をアップする
・多くの人は睡眠負債を抱えている。4時間睡眠を2週間続けると、3日の不眠と同じ脳障害が起きる
・昼寝は一時的な効果はあるが夜の睡眠の代替にはならない
アメリカ心理学会Newsから【8時間睡眠は必須】
・8時間の睡眠をとるアメリカ人はほとんどいない
・睡眠は記憶力と集中力をアップする
・多くの人は睡眠負債を抱えている。4時間睡眠を2週間続けると、3日の不眠と同じ脳障害が起きる
・昼寝は一時的な効果はあるが夜の睡眠の代替にはならない
40代くらいまでは7~8時間の睡眠が必要ですが、60代以上の高齢者になると生理的に睡眠が浅くなるので、夜の睡眠は6時間ほどになります。
そのため睡眠不足を補うための30分ほどの昼寝が効果的です。昼寝をしない場合は、夜7時間ほどの睡眠をとっておくと日中の眠りも出なくなります。次のツイートをご覧ください。
【睡眠衛生指導】高齢者になると睡眠時間は、5~6時間と短くなります。これは生理的なものなので仕方ないですが、日中の眠気が増えてしまいます。
それを補うために30分くらいの昼寝は良いことです。1時間以上はNG。夕方の昼寝もNG。体内時計が狂ってしまいます。昼寝の仕方を考えるのは重要です。
睡眠時間について理解したところで、眠れないときの原因と対策について見ていきましょう。
■愛着か不安かリズムか
眠れない人の特徴(原因)は、大きくわけてこの3タイプです。自分がどのタイプなのか、ここを切り分けることが必要です。これは、なかなか一人では難しいので、このへんがわかる医師かカウンセラー(専門家)に見てもらうしかありません。
そうなると、「なあんだできないじゃん」と思われるかもしれませんね。でも安心してください。
【なんとなくの自己判断】で問題ありません。この記事全体を通して読んでみてください。そして取り入れられそうなところは、どんどんと取り入れてください。紹介している方法は副作用はゼロですから。それでもダメだったら専門家にご相談ください。
これら3つのタイプに共通して効果的なやり方があります。それはマインドフルネス。まず、これを身につけることがいいでしょう。
マインドフルネスについては、過去記事がたくさんありますので、詳しくはそちら(*Ⅰ)(*Ⅱ)を参考にしてください。
◇マインドフルネス
やり方は、まず布団の中で横になります。
- 自分のいまの状態を客観的に見ている状態です。
- 寝つけなくて焦っているとか。そういう状態を見ています。
- ゆっくりと深呼吸しながら。何かやり方があるわけではありません。
- ただ見ている。
- 30分すぎたな、2時間すぎたな。。。それだけでOK。
これは眠りにつけなくてもいいのです。焦っていてもいいのです。眠れずに焦っている自分をみていることで、結果的に脳波がアルファ波へ傾いていきます。それだけで安静状態になっているのです。
繰り返しになりますが、【眠れなくてもOK】ですよ。横になっているだけで、最低限、身体は休んでいます。脳は起きているわけですが、アルファ波状態になっていれば、脳もリラックス状態になっているわけですから。
◇アクティブ瞑想で深い睡眠へ
マインドフルネスはシンプルな受動的な瞑想ですが、それをもう少し積極的に行動的にした瞑想があります。それがアクティブ瞑想です。その前に、睡眠の意味を考えておきます。
睡眠には2つの意味があります。
①身体が休息する
②脳が休息する
睡眠というのは①と②を両方することです。横たわって呼吸しているだけなら①ですが、うとうとしだすと②へ入っていきます。意識を失うくらいに寝てしまうと②を達成できるのですが、うとうとくらいだけでも②はほぼ達成できてます。(ツイート改訂)
マインドフルネスは、うとうとの直前くらいまでは達成できるでしょう。しかし、もっと深い休息に入れる瞑想があります。それがアクティブ瞑想です。より深い睡眠へアクセスできる瞑想です。
ぐっすりと眠れない人は脳の休息が十分とはいえないでしょう。そういうときは【アクティブ瞑想】をおススメします。アクティブ瞑想とはヒーリングに近いものです。積極的な癒しです。
まず①誰かを癒す、次に②自分を癒す。①⇒②の順番で行います。普通の瞑想は②のみです。実は、まず①をやるのが簡単なのです。
①ができると、②へ移行するのは難しくありません。これによって深い休息(眠り)の域に達します。(ツイート改訂)
アクティブ瞑想については、別記事を張っておきます。マインドフルネスやアクティブ瞑想について、詳しくやり方まで解説しています。動画もありますので、どうやるのか分かりやすいでしょう。ご覧ください。
▼参考記事
マインドフルネス瞑想】おすすめのやり方と考え方【保存版】
これからは特徴に分けて解説します。
■「愛着に問題のある人」タイプの不眠対策
過去記事で【不眠症の乃木坂46】という記事を配信しましたが、あれはPTSDに特化した記事です。そちらも合わせてお読みください。愛着に問題のある人に必要なものは、次の2つです。
・絶対的安心感
・睡眠薬(2週間程度)
まずぐっすり眠るためには絶対的安心感が必要です。十分に安心したところで休むと、意外と眠れることがわかります。
これは長くは続かないかもしれません。安心感がすぐに失われるかも。そうなると、また眠れなくなりますが、そこで落胆しないこと。
安心感に疑惑が沸いてくると眠れなくなります。でもいいのです。絶対的なものなんて経験したことないので疑惑も出ます。またそのうち眠れるようになります。
結婚したときの数か月は、パートナーの横でこれまでの数十年間の不眠が回復したという報告もあります。
睡眠薬処方も期間限定なら(2週間ほど)いいでしょう。内科か婦人科に相談してください。心療内科だと、愛着障害の人は慢性うつ病と診断されることが多いので、抗うつ薬を処方される確率が高いようです。
ある精神科医のドクターの話によると、愛着障害は本来はうつ病ではないので、抗うつ剤が処方されても良くなる可能性は低いようです。ですから、相談するコツとしては、心療内科よりも、まずは行きつけの内科や婦人科などが良いそうです。
◇睡眠薬
睡眠薬は次の3つに分けられます。
・ベンゾジアゼピン系
・メラトニン系
・オレキシン系
ベンゾジアゼピン系は最も処方されている薬で、投薬期間および中止する方法について重要な注意点があります。今ならアシュトンマニュアルという、ベンゾジアゼピンを止めるためのマニュアルの日本語版が無料で手に入りますので、チェックしておいてください。
http://www.benzo.org.uk/amisc/japan.pdf
◇ジレンマ不眠
愛着障害の人は元々不眠ですが、回復途中でジレンマ不眠になります。
人との生活が怖いと思っている愛着障害の人は、回復してくると「家族を持ってもいい」「子どもを持とう」と思うようになります。
このような絆を作る作業は、これまでの自分とはジレンマ状態なので、それに引き裂かれて不眠になります。この不眠は「積極的な不眠」といえるでしょう。問題はありません。回復してきている証拠です。あわてず少しづつ愛着の問題を解決していきましょう。
■「不安が強い人」タイプの不眠対策
不安が強い人は、毎日の過ごし方として、2つの実行をしてください。
・集中して日常生活を送る
・眠くなってから布団へ入る
不安障害の人は、
・できたねと言われるとできなくなる
・ポジティブなことを言われると極端に緊張するので、
毎晩、寝る前などに、
・①今日できたことを詳しく書き出して
・②そしてその都度、うまくいっていることを確認して安心する
このような認知行動療法的なアプローチが最善でしょう。
- 寝る前に【明日やることと、できなかったときの対策】をざっとスケジュールする。
- ポイントはゆるい時間配分でスケジュールする。
ことも効果的です。これは今日が終了したことを脳に覚えさせる、リセットする効果があります。ただ、不安の強い人や愛着の薄い人がこれをやると、かなりキチキチにスケジュールしてしまい、明日のことで思い悩むサイクルに入るかもしれませんね。ここは自分のこころと相談しながらやってみましょう。
■「体内時計のリズムを逃している人」タイプの不眠対策
次の3つをやります。
・運動、規則正しい就寝
・眠くなってから布団へ入る
・規則正しい食事リズム
人の行動は、サーカディアンリズムといって体内時計に支配されています。
光を浴びながらの日中の運動をやること。そして夜11時には布団に入って、眠気がやってくるまで深呼吸などをしているといいでしょう。
睡眠時間は、
・7~8時間くらい(20~50代まで)
・6時間くらい(60代以降)がいいとされています。
年を取ると生理的に睡眠時間は少なくなります。年齢に応じた時間の睡眠を取ることです。
◇よふかしのうた
コトヤマによる少年サンデー連載の漫画です。主人公は中2男子。夜に家を出て自由な空気に触れ、吸血鬼に出会って恋をする、ふたりのよふかしが始まる。
体内リズムとは縁遠い話ですが、若い頃はよふかしというのが大人にとっての美酒の役割を果たしているのでしょう。
大人になって不眠症になっても、あまりギチギチになってしまうのも考えモノ。不安が増大します。ですから、体内リズムを逃している人も、適度に適当にやってください。これでなきゃ!というのは避けましょう。
そのへんがコツかも。
◇一般的に習慣化するとよいもの7選
不眠を改善するための、一般的に推奨されているものをリストアップ(*2)しました。この中で何かピンとくるものがあれば実行してみましょう。
- ①寝る4時間前以降のカフェイン摂取を控える
- ②日中の十分な運動
- ③昼寝は30分以内
- ④午前中は光を浴び、夕方以降はパソコンやスマホを見ない。つまりブルーライトを避ける。
- ⑤風呂は、寝る2時間くらい前にぬるま湯で20分。
- ⑥アルコールは少量、できれば断酒。
- ⑦夜8時までに食事は終える
■まとめ
いろいろと紹介してきましたが、簡単にまとめると次の2つになります。
・安心感のある生活環境を整え、その中で日常生活に集中すること。
・そして夜11時には床につく。
ただ、安心感というものは、愛着に問題のある人は絶対量が足りていませんので、そこは愛着問題のことをよく理解している専門家への相談を平行して進めてください。
「一般的に習慣化するとよいもの7選」については、副作用もありませんので、気が向いたら初めてください。緩くいきましょう。
Reference
*1) More Sleep Would Make Us Happier, Healthier and Safer, APA, 2014 https://www.apa.org/action/resources/research-in-action/sleep-deprivation
*2)松崎朝樹;精神診療プラチナマニュアル, MSI, 2018
関連記事
*Ⅰ) 記事: Solea ホーム > お悩み相談室 Category > マインドフルネス /
*Ⅱ) 動画: YouTubeチャンネル ソレア心理学ゼミ > 再生リスト > マインドフルネス(気づき)
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