生命の暴走を食い止めるための水玉芸術【草間彌生】

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精神的に不安定な状態が続いたりすると、人は芸術行為を始めることがあります。(*1)
春になると生命が芽吹きますが、生命の影の部分が暴走しだし、それで調子を崩す人もいらっしゃいます。
心療内科は春先が一番にぎわうというのも、今回の話に関係しているかもしれません。

草間彌生の水玉

彼女の芸術は水玉に象徴されるでしょう。水玉、水玉、いたるところ水玉です。彼女は水玉に何を託しているのでしょうか。

彌生の「生」、そして弥生ゆえの三月生まれ。ここに水玉の秘密があるのかもしれません。彼女は幻聴、幻覚に悩まされてきました。統合失調症ですが、そこに原因があるわけでなく、春先に生じる生命のバースト(大爆発)をコントロールするために、封じ込めるために水玉を生涯かけて描いているのではないか、とも思えるくらいの大量の水玉です。

生命の暴走を食い止める

何かを封じ込めるために芸術に打ち込む人も多いでしょう。ある人はそれを宗教に求めるかもしれません。そのどちらも選択できないとき、病的な発症があるのかもしれません。
原子炉も核分裂の暴走を食い止めるために制御棒が存在します。溢れ出る生命力を持っている人も、その生命の暴走を食い止めるためにそのようなもの(芸術表現)が必要だということでしょう。

アール・ブリュットという障害者の芸術作品を集める運動がありますが、彼らの芸術運動は彼らが生きのびるために必要だからなのでしょう。それをしないと発症を加速させるからそれをやる。そういう視点で見ると、アール・ブリュットというものは、別に「障害者の」という但し書きは必要なくなるのです。

何か別の芸術ではなく、彼らの作品も芸術の奔流そのものであることが見えてくるでしょう。

生々しいということは生命力に溢れてはいますが、非常に生きづらい感じも共存しています。そのために芸術活動というものが必要になってくる。生々しさの暴走を食い止めるために、今日も草間氏は水玉を描き続けているのかもしれません。

Reference
*1)川田都樹子:アートセラピー再考-芸術学と臨床の現場から, 平凡社, 2013

春先に精神的に不安定になったときは、ソレア心理カウンセリングセンターへ。

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