やる気がでない、眠れない、または早くに目が醒める、朝の憂鬱気分がとれない

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一番疑われるのはうつ病です。うつ病は非常に一般的な感情の障害で、DSM-5では抑うつ症候群の1つとして分類されています。

DSM-5とはアメリカの精神疾患の分類と診断の手引きで、精神疾患を数種類のカテゴリーで分類したものです。日本ではこの分類によって病名を決めていくことが多いです。

抑うつ障害群には

(1)重篤気分調節症
(2)大うつ病性障害
(3)気分変調症

(4)月経前不快気分障害(PDD)

などがあります。

適応障害もうつ病の一種として、DMS-IV-TRでは扱うことがありましたが、

DSM-5では、PTSD群として扱うようになりました。

つまり、環境ストレスによる抑うつ気分として扱うようになったということです。

この捉え方も妥当なところでしょう。

双極性障害は、DSM-5ではうつ病群から離れて、双極性障害群に独立しました。

これは脳の機能障害群の一つとして双極性障害が捉えられるようになったからです。

ここでは、従来のDSM-IV-TR 診断基準に準拠しながら、大うつ病性障害と適応障害についてお話します。

気分変調症は「歩き回る」、双極性障害は「テンションが高すぎる」をそれぞれ参照ください。

大うつ病の特徴としては、

(1)悲しみまたは空虚感を感じ、涙を流しているように見える。ほとんど,毎日抑うつ気分があり、子どもや青年では、いらだたしい気分がある。
(2)一日中、活動への興味や喜びが喪失している。
(3)著しい体重減少または増加(1ヶ月で体重の5%以上の変化)、またはほとんど毎日の食欲の減退または増加
(4)不眠あるいは睡眠過多
(5)おちつきがなくイライラしたり、活動がのろくなったりしている。
(6)疲労感があり、気力が減退している。
(7)無価値感、あるいは過剰な罪悪感に支配されている。
(8)思考力、集中力が減退し、決断するのが難しく感じられる。
(9)何度も死にたいと思う。

などです。
これらの症状のうち5つ以上該当するときに、うつ病という診断が下されます。

これらの症状が2週間以内の場合は「適応障害」、
2週間~2年にわたって症状が続いている場合は、軽症が「適応障害」、重症が「大うつ病性障害」、
2年以上にわたり症状が続く場合、軽症が「気分変調性障害」、重症が「大うつ病性障害」と診断されます。適応障害とは「軽うつ」状態と考えていただいていいかと思います。

さて、大うつ病は日本では男性の7.3%、女性の18.5%が罹(かか)る病気です(北村,1998)。うつ病にやりやすい性格(病前性格といいます)として、メランコリー親和型、執着性格などをあげる学者も多くいます。

うつ病は一夜にしてなる病気でありません。まず「おっくう」感がやってきます。生きがいがない、面白くない、興味がない、根気がない、手がつかない状態です。その後、「ゆううつ」的になり、最後に「不安・イライラ」が高じてきます。

この「不安・イライラ」感がうつ病の根っこです。感情の刺激に対して敏感で怒りやすく(刺激性・易怒気分)、不快な気分が持続します。

この怒りやすいという症状は、悪口を言われたとか気持ちを分かってもらえないとか、先行する原因(誘因)があるため、自分の気分が異常なのだということに、なかなか気が付きません。

ただ、不安・イライラというのはうつ病に特別に発症する症状ではありません。躁病や他の人格障害にも見られます。

治るのはこの逆です。「不安・イライラ」が消え、「ゆううつ」感が消え、「おっくう」感が消えるとひとまずは治ったと言えるでしょう(笠原,1996)。

うつ病がどうかの診断をするために、ベック式、ハミルトン式、SDSなどのうつ病専用のテスト、ロールシャッハなどの心理テストを行いますが、笠原の次のチェック項目は簡単に行えるすぐれものです。多くに該当する場合は、まず専門のカウンセラーか精神科医に罹(かか)るようにしてください。

<ゆううつ>
1.いつもより気が沈む(とくに朝、昼、夜)
2.後悔ばかりする
3.自分を責めてしまう
4.いっそこの世から消えてしまいたい
5.寂しくて誰かそばにいてほしい
6.涙ぐむことが多い

<不安いらいら>
7.落ち着かずじっとしておれない
8.なんとなく不安でいらいらする
9.これから先やっていく自信がない
10.何をやるにも自信がない

<おっくう>
11.仕事にとりかかる気になかなかならない
12.いつものように気軽に人に会えない
13.とりかかっても根気がない
14.決断がつきにくい
15.何をしても面白いと感じない
16.テレビがいつものように面白くない
17.仕事が面白くない
18.とくに(朝、昼、夜)おっくうである

けれどこの「おっくう」感や不安感というのはなかなか消えないことがあります。なかなか治らないうつ病状態です。この場合、遷延性うつ病という名前が付きます。

遷延性になるのは患者さんばかりのせいだとは言い切れません。治療者(精神科医、臨床心理士)のケースマネージメントの失敗も大いに考えられます。自分が失敗したことを取り繕うために(この取り繕いは意識的ではないのですが)治療者が患者さんの病気に「遷延」と命名することもあるのです。治療者にとっては「最後の切り札」という病名ですが、患者さんにとってはたまったものじゃありません。つまり遷延性うつ病は、患者さんと治療者の双方によって合作された病気と言ってもいいでしょう。

また、うつ病は再発(再燃)しやすい病です。治ったと思っても4~6ヶ月は注意しておく必要があります。

うつ病は「心の風邪」と言いますが、風邪などいう生やさしい病ではなく、「心の骨折」と言ったほうがいい病気です。骨折にはリハビリが必要です。同じようにうつ病も1年はリハビリ期間に当てるようにしてください。

このリハビリ期間は、7:3くらいで生活するようにしてください。活動7に対して休息3です。この休息の割合を多いとみるか少ないと見るか。休息が多すぎる、活動が少なすぎると思う人は要注意です。早く生産的な生活を取り戻したいという焦る気持ちは痛いほどわかりますが、焦りが一番よくないのです。

うつ病を治すには余裕が必要なのです。7:3くらいの心がけを持ちながら生活することが再発を防ぐ一番の薬だということも、周囲の人もよく理解してあげてください。

よく言われることですが、ほどよい周囲のサポートがあれば、うつ病は完治する病気です。また一生のうち何回かは再発しやすい病気です。根気よい薬物療法と、自分の世界観を知るためのカウンセリングを平行して行うことで必ず治っていきます。うつ病の方にお願いです。希望は絶対に捨てないでください。
毒ガス室のあるアウシュビッツ収容所での体験を書いた(夜と霧)精神科医フランクルは言っています。「あなたがどんなに人生に絶望しても、人生はあなたに絶望はしない。」

うつ病は他の人格障害でもよく見られる疾患で、Zimmerman (1999)によると、妄想性人格障害の29%、統合失調症型人格障害の65%、強迫性人格障害の30%、演技性人格障害の46%、依存性人格障害の29%、反社会性人格障害の35%、回避性人格障害の80%、境界性人格障害の62%など、高い割合で発症する疾患です。

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