【うつ病の別の側面】生命力溢れた状態を【鬱】といいます

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うつ病はエネルギーが枯渇して動けない状態のように見えますが、それは表面的な見方であって、実はエネルギーが溢れ出してコントロール不能になっている状態でもあるのです。

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ピンクフロイドの鬱

プログレッシブロックのピンクフロイドのアルバム、鬱のジャケットは700台のベッドが海岸に整然と並んでいるジャケットです。A momentary Lapse of reason、一時的な理性の喪失という原題に、日本では鬱と名付けました。

どうして鬱と名付けたのかは不明です。1987年のアルバムですから、一般の人が知っている精神疾患名はうつ病くらいしかなかったためでしょうか。勝手に思いをふくらませると、一時的というのはまさにそうで、また元に戻って元気になれるよ、という意味が込められているのでしょう。それだったらうつ病もそういうものだ、という達観があったわけです。一時的な喪失というのと、うつ病とは親和性のある関係だからです。

で、鬱というタイトルは良しとして、下記で述べる観点を入れるとすると、鬱とは、うっそうと生い茂っているので、あの整然と並んだベッドは、西洋的なうつを示しているのでしょうか。日本的な表現にすると、あのようにはならず、もっとごちゃごちゃっとした感じになるのでしょう。ただ、ジャケットデザイナーがそこまでは理解してはいないし、そこまでは狙ってないということですね。

鬱はうっそうと生い茂った様

うつ病はDepressionですが、英語にしてしまうと、抑うつという意味しかありません。うつの見た目(落ち込んでいる様)を表現したらそれは確かにDepressionでしょう。しかし、日本では鬱と表現しました。これは、うつ病の落ち込んでいる様子だけなく、その奥を見ていたのではないかと思います。素晴らしい漢字を当てはめました。それが鬱です。

鬱とは、抑うつ状態の他に、うっそうと生い茂った様という意味があります。みっしり、ぎゅーっと詰まっていることです。緑がうっそうと茂った様が鬱なのです。

緑にむせぶ絵で思い出すのがゴーギャンの南国の絵です。あれが鬱の、もう一つの姿なんですね。英語でdepressionと書くと、そんなことまでは思いもつきません。漢字にしたことによって病態の理解が格段に広がったのです。

ちょうどピンクフロイドの不朽の名作、The dark side of the moon は「月の裏側」とタイトルされていますが、その名を借りれば、The other side of depression が鬱のもう一つの捉え方なのです。

漢字は「鬱」にエネルギーを与えたのです。うつ病はエネルギーが枯渇しているわけではなく、エネルギーが溢れ返ってコントロールできない状態なのです。抑うつっぽくなると、そわそわ落ち着かなかったり、イライラしたり怒りが出てきたりします。まずそういう落ち着かなさが出てきて、エネルギーが漏れ出してコントロール不能になる。そこに注目して、鬱という漢字をDepressionに与えたのです。先人の精神医学に対するまなざしに尊敬の念を抱かざるを得ません。うつ病のカウンセリングも、このうっそうとした生命力を確かめながら進むといいでしょう。

ただ、間違えてはいけないのは、うつ病と判断する前に、心理学的な見立てはしておかなければなりません。それがあって始めて心理療法が使えるからです。

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