お悩み相談室

ソレア心理カウンセリングセンター

2018.07.13 |うつ・不安

いいときもあれば悪い時もある

カウンセリングに来られてしばらくすると調子が良くなってきます。


そして調子が良くなると、自分はもう大丈夫なんだとすぐに思ってしまう人がいます。カウンセリングを始めたときは最悪だったため、調子が良くなるとうれしくなるのは人間の道理ですので、そう思うことじたいは悪いことではありません。


でも、考えてほしいのは、数か月前は最低の状態だったわけです。それがカウンセリングを受けて状況が変わったため数か月で良くなったということは、またすぐに悪くなることだってある、ということです。これはネガティブな考え方ではありません。常識的な考え方なのです。常識とは、道徳ではなくて「叡智」です。いいときの自分もいれば悪いときの自分もいる。そういう自分が在って当然なんだ、という自己肯定的な考え方です。こういう常識的な考えをアファーマティブといいます。


ポジティブというと、ネガティブの反対語のような感じがするので、ポジティブとかネガティブとかでモノゴトを考えるのは了見(りょうけん)が狭い感じがします。それより、自己肯定、アファーマティブで行きましょう。

悪いときがあっても、それは自分だからOKなんだ、ということです。


だから、少し良くなったときにもう大丈夫というクライエントさんには、

もうちょっと様子見ようね、悪くなったときあなたがどのように感じてどんな行動を取ることができるか、ちゃんと見てみようね。そこで自分を見失わないようになれば、そんなに調子を落とさないですむようになれば、悪いときの自分も自分の一部だと受け入れられるようになったということで、そのときがほんとうに大丈夫なときなんだろうね。

というようなことを言います。

このように順調希求(調子がいい自分だけを追い求めること)がクセあるいは性格の一部になっている人は少なくありません。うつ病からなかなか回復できない人は、順調希求を常に求めてしまっている人でもあるわけです。

カウンセリングを受けて数か月で回復してきたというのは、実際に病気の底がついてそこから浮上してきたという場合もありますが、その人自身が変化したというより、その人を取り巻く状況が変化した、と考えたほうが良い場合があります。この場合、その人自身の変化はもっと後から緩やかにやってくるということです。状況が変化することじたい、その人の世界が動いているわけなので、悪いことではありません。それがないと、実際の自分自身の変化も起こすことができないからです。

しかし、その人が、状況が変わることで変化しているときは、良い状況が続くばかりではないのが世の中の道理で、悪い状況は必ずやってくるのです。そのとき即座に過剰反応して、あぁ、自分はやっぱり治っていないんだ、と調子を落とす方向へ変化します。状況というものを自分の第一位に考えている、重要なものと考えている場合、このような良くなったり悪くなったりを繰り返してしまいます。

生きている限り、われわれの周囲の状況は、常に変化しています。だから状況依存、つまり状況というものを自分の中心にすえていると、波間に漂う浮草のように、いつまでたっても、回復基調には乗ってきません。こういう人にとって大切なことは、状況によって左右されない自分を持つことです。状況によって左右されないものの一つとしては、重要な他者との絆(きずな)があります。そういうものが育っていないので、状況によって上下してしまうのです。

状況とは、転勤、昇進、退職、引っ越し、結婚、進学、卒業、独立、別離、病気なる、という人生の大きなイベントだけではなく、朝起きたときの調子とか、歩く道を少し変えてみたなどの小さなイベントも含みます。



2010年の南アフリカのサッカーワールドカップは前評判とはうって変わって日本勢の活躍がありました。今回の日本のサッカーから学ぶものはたくさんあると思いますが、病気が治るという視点から考えてみたいと思います。

南アフリカへ行く前は、監督はじめ選手も落ち込んでいました。しかし、本番では番狂わせの試合展開をしました。これは気分障害の双極性II型の展開と似ています。双極性II型とは、新型うつ病と言われているもので、ベースは強い抑うつ感があって死にたい気分で彩られているのですが、たまに躁状態に反転し、ハイテンション中に思わぬ業績を上げたりする、そのサイクルを繰り返す病態を言います。

ちなみに双極性I型は、従来の古典的な躁うつ病で、ハイテンションになったときは、自己も解体してしまっている感じで意識が空回りするだけで、業績を上げることはできません。

ワールドカップ日本代表の試合には、そのような印象がありました。本番前のうつ状態と、本番中のハイテンション。ここで大事なのは、自分には悪くなるときがあるのだ、と知っていることです。人間なんだから、調子の浮き沈みはあるのが当然ということがわかっていることです。

双極性II型の人は、躁に転じたとき悪かったときの自分を忘れ去ります。調子の悪い自分を「無かったもの」とします。これは、本来の自分から居なくなっている状態です。本来の自分ではないので、しばらくしたら当然うつがやってきます。本来の自分を思い出させるために、うつが帰ってくるのです。そして躁とうつの落差に恐怖し、身動きがとれなくなって死にたい気持ちが増幅されていきます。

調子に乗りながら、調子の悪かったときの自分と向きあうことができるか、調子の悪かったときの自分も価値のあるものとして認められるかどうか、それが人間としての未来を左右するのです。

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