セラピー中の感情促進について

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セラピーをしていて、昔の自分が出てきて、涙を流されながら話をされる。

話が終わった後は、スッきりされて、
明日からやっていけそうと話をされる方も多いです。

このように自分の中で葛藤を抱えているものが
カウンセリングの場で出てきて、
それを丁寧にセラピストが取り扱うことで、
クライエントさんの中で何かが満足して安心する。
それが涙と共に洗い流されていく。

延々とこれまで流したことのない量の涙を流される方もいます。

このような感情促進が起こり何か憑き物が落ちたように納得する、
そうやってスッきりされる方も結構います。

それがいいことか悪いことか。

(1) 感情が出ることが良いことの場合を考えてみます。

ある程度感情が出切ると、
クライエントさんは落ち着かれます。
静かになります。
この状態というのは、クライエントさんが
自分自身に非常に客観的になれる状態になっています。

そのため、ここでセラピストが緩やかに
クライエントさんの側に居ることで、
クライエントさんの抱えている問題の本質が浮上してきていることが
わかることがあります。

これを見つけるには、セラピスト側に訓練が必要ですが、
その本質のようなものを感じることができたら
ここからが大勝負なのです。

大勝負と行っても強引はいけません。
緩やかにクライエントさんに勝負をかけるのです。
どのような勝負かは今回は言いませんが、
それによってクライエントさんが見つけたかったものが
見つかっていきます。

この勝負はセラピー数回分必要かもしれません。
それだけクライエントさんは不安定な日々を送ることになってしまいます。
その不安定さに耐えられるクライエントさんだけ、
この方法は効きます。
それを見極めるのもセラピストの技量ということです。
どのクライエントさんにも使える方法ではありません。
そのことをセラピストが忘れていると、
クライエントさんを取り返しのつかない状態に陥れてしまいます。

つまり、この勝負をかけるクライエントさんは
ある程度、始めから健康度の高い人か、
セラピーを数クール(10セッションを1クールしとした場合)経て、
ある程度自分で色んなことを理解してきている人に限られます。

始めの1クールで勝負をかけるのは
健康度が高いと判断したクライエントさんに限ります。

勝負とは、
クライエントさんの本質に迫る関係を
クライエントとセラピストの間に打ち立てる、
ということです。

(2) さて、次に、泣いて感情が出ることが悪いことの場合を考えてみます。

泣いて感情が出始めると、それが止まらなくなること。
また、どんどんと深い感情が出始めてしまうこと。
感情のうずに巻き込まれていってしまうこと。

これらはとても危険です。

クライエントさんの病態を見極める目がセラピストに要求されます。

感情というのは出尽くせば尽きるものだ、
という考えにも一里あり、
そういうことも実際ありますが、
それが60分のカウンセリングで終了するのかどうか、
ということも考えなければなりません。

人のエネルギーというのは結構早く枯渇するものです。
15分も強い感情が出てしまうとそれ以上は出なくなるものだ、
というふうに考える人もいますが、
それは病態によると思います。

そのため、
安全なセラピストの第一条件としては、
感情促進に臆病なこと、があげられてもいいと思います。
それはクライエントさんを危険にさらせないという決心を
するわけです。

強い感情を出さずとも、
セラピーの過程というのは進行するものです。
どれだけ弱いアプローチで、
とれだけ効果的なセラピーができるか、
それがセラピストの腕の見せ所でもあるのです。

ここは強調してもしすぎることはないポイントです。
どれだけ弱く、長く、じんわりとセラピーできるか、
それがクライエントさんのためになるのです。

もう一つ、悪いことを考えてみますと、
泣いて満足されると、
クライエントさんもそれで良かったと思い、
セラピスト側も油断して、
それ以上進むことを止めてしまうということも
大きな「悪い」ことですね。

感情促進というのは、泣かせるためにやっているわけではない。
それを勘違いしてしまうわけです。

ここは最重要ポイントです。

泣いたそのあと、最も重要な仕事を
クライエントさんと一緒にやらなければいけないのに、
それをやらないために、
一時的な効果しか出すことのできないセラピストも多いように思います。

くどいようですが、
私たちセラピストは,何も、
クライエントさんに泣いてもらって
スッキリ感を味わってもらうためにやっているわけではないのです。
泣かせるだけなら、素人でもできます。
セラピストはそこを精進すべきです。

感情促進については、
いろいろあって一概にどっちがどっちとは言えないのですが、
私の場合は、安全をまず取ります。
いかに安全に、できるだけ効果的に、この2つをバランスとりながら
やっていきます。

バランスというのは、
安全に偏ったり、冒険に偏ったりしながら
効果的な落しどころを見つけていく、
ということです。
その落しどころは、当然、クライエントさんによって異なりますし、
どの時期でやるかということも重要です。

全体のセッションを見渡して、感情促進がいい時期と悪い時期があるのです。
トラウマセッションでは、感情促進時期には細心の注意が必要です。
あまりそれを急ぎすぎると、クライエントさんがこっちへ帰ってこれなくなるおそれもあります。

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