【オープンダイアローグ】ビンテージウヰスキーのような家族療法

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オープンダイアローグとは何か。一言でいうと、「傾聴を大々的にフィーチャリングした家族療法」と言えそうです。

元々は、フィンランドの病院の家族療法のセラピストによって、統合失調症の患者と家族に対して行われていた精神療法です。1980年代が始まりとされています。

患者家族からの電話で、病院スタッフがチームを組んで、患者の自宅に駆けつけます。チームスタッフは、医師、看護師、心理士などの混合メンバーです。自宅には、患者だけでなく家族の皆さんも居ます。そういう状況で皆に集まってもらって、チームスタッフは、患者や家族の話を、ひたすら聴いていきます。

技法として、リフレクティングというものがあります。それらの話を聴いていく中で、チームスタッフが患者や家族について話し合っていることを、彼らに見せるのです。深いところで、患者や家族の話を傾聴できていれば、このスタッフ間での話も、否定的な助言的な話にはならず、受容的な話になるでしょう。しかし、これが難しい。きちんと傾聴できていないと、受容的な言葉にはならないからです。

リフレクティングはメインの技法と言われますが、個人的には、これはオプションで、メインは傾聴と思っています。9割は傾聴でしょう。なぜなら、きちんと傾聴できていれば、患者を受容するムードが漂うはずだからです。そのムードが患者や家族を癒します。それによって患者や家族の話しぶり(物語)が変わります。

このオープンダイアログは、家族療法の中でも、ナラティブセラピーの一つとして考えられます。ナラティブセラピーとは、お話し療法。話しをしていく中で、悲惨な物語(ドミナントストーリーといいます)が冒険譚(オルタナティブストーリーといいます)に書き換えられていくことを目指します。ナラティブセラピーの一つとして、アンデルセンのリフレクティングチームというものがあります。治療スタッフの話を家族に聴かせることで、オープンダイアローグのリフレクティングはここからきています。

オルタナティブストーリー、リフレクティングの他、グリーシャンとアンダーソンのコラボモデルというものがあって、この3つを総称してナラティブ3学派とも呼びます。コラボモデルでは、カウンセラーは無知の姿勢を求められます。患者に対して何も知らない学習者であるという姿勢です。カウンセラーが偏見を持つのは仕方がないですが、患者の語りに好奇心を向けて傾聴し、その話の文脈の中で患者を正しく理解するために、共同で探索していく(コラボレーションしていく)のです。

現実は社会的に構成されていて、常に変化し続けている。その中で、クライエントのいくつものドミナントストーリーが交差して、オルタナティブストーリーに再生産される。これを社会構成主義と言い、ナラティブセラピーの背景概念です。

またオープンダイアローグは、認知行動療法などのEBM(エビデンスに基づいた治療)ではなく、NBM(ナラティブに基づいた治療)の一つです。ソレアのカウンセリングを家族療法の視点で眺めてみると、ジェノグラムを使って家族成員の分化度(*)を見立て(多世代派)、傾聴によって物語を再構成させ(ナラティブ派、オープンダイアローグ)、可能ならば世代間境界を正常化(構造派)する。つまりソレアがパーソナリティ障害やトラウマに対して行っている治療法もNBMの一つです。

分化度(*):感情的に、知性的にどの程度、親子が別人格として分かれているか、分かれていないかという、その程度のこと。成人の場合、当然、自己分化している状態が望まれます。未分化で融合している場合は、そこがセラピーの治療対象の一つになります。

参考文献:
「オープンダイアローグ対話実践のガイドライン」という小冊子がネットからゲットできます。ODNJPによるものです。ご興味のある方はダウンロードしてみてください。
https://www.opendialogue.jp/

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