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ソレア心理カウンセリングセンター

2018.07.13 |うつ・不安

テンションが高すぎる

これはとても難しい病態です。

なぜなら、テンションが高いと様々な生産的なことがやれ、社会的にも認められ成功している経営者や芸術家が多いからです。それをあえて病気として取り上げるのは、ほっておくと自殺しかねない病状に進展する可能性があるからです。

この病気をもった代表的な人に、北杜夫、遠藤周作などが居ます。

症状名は、躁病(あるいは躁うつ病)です。DSM-5では双極性障害と呼ばれます。DSM-IV-TRでは、うつ病と同じ気分障害の中に入っています。なぜなら、躁病は躁状態としてだけ単独で発症するよりも、躁状態とうつ状態が躁り返され発症してくることも多いからです。だから双極(躁とうつの2つの極)と呼ばれるのです。



しかし双極性障害の原因について、脳機能の障害という捉え方が最近では大きくなってきて、そのためDSM-5では、うつ病から独立して単独の障害群となりました。

最近では、疾患のベースは大うつ病だが、たまに軽躁状態になって仕事の業績を上げる、という双極性II型の診断をされる人も多くなっています。時代のストレスが、才能ある人々を双極性II型という病態へ追い込んでいると思わざるを得ません。

双極性II型が難しいのは、業績を上げることができる病態、というところです。うつ病のように何もできなくなるのではなく、病気を引きずりながら高い業績を上げることができるのです。



双極性II型が愛着障害との関連で語られることもありますが、これについては、機会を改めてお話ししたいと思います。双極性II型と診断されている方々にお会いすると、かなり高い頻度で愛着障害の方がいらっしゃるからです。





さて、最近の職場で求められる成果は、1990年代と比べると倍以上のものが求められていると実感しています。人類がこれまで経験してこなかったようなストレスフルな状態が目の前にあります。そしてチャンスを生かせた人だけに富が集中しようとして賃金格差が大きく開こうとしています。そんな状況の中、軽躁状態で居るのは、周りはハタ迷惑ですが、本人にとっては都合のいいことかもしれません。このため人間関係に絶えず問題が生じます。

私は、つねづね、2000年代前半は、ADHD(注意欠損・多動性障害)、軽躁病に患(わずら)った社会として記憶されるのではないかと思っています。

さて、躁状態には2つの層があります。DSM-5によると

①躁:気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的で、またはいらだたしい、いつもと異なった期間が、少なくとも1週間持続する。主たる症状は、自尊心の誇大化、観念奔逸、睡眠欲求の減退、多弁、性欲亢進、金遣いが荒くなる、集中力なくなる、イライラして怒りやすくなる。

②軽躁:持続的に高揚した、開放的で、またはいらだたしい気分が、少なくとも4日間持続する。主たる症状は、躁病と同じです。

①と②は期間だけが違うように見えますが、実は、観念奔逸の程度が違うのです。

観念奔逸とは、考えがめまぐるしく変わっていくことを指します。例えば、「友達が私のことを病気だと言っててそれで来たのですが、友達はひどいやつで酒をおごってやったのに。ウイスキーはサントリーですね。あそこのホールはいいところです。いやーマンホールに落っこちたことありましてね。泥まみれ、泥団子、小さいとき泥団子作りませんでした?ピカピカにすると吹いた窓みたいですよね。家では窓拭きよくやらされましたよ。窓ガラスも野球でよく壊しました。タイガースが好きでね・・・」こういった具合です。漫才のパターンがこれに似ています。

躁の場合、この観念奔逸が、ビュンビュンと飛ぶ感じ(転導性といいます)で何ら生産的なことができずそのために破壊的な結果になります。仕事では業績を上げられず、入院が必要とされるケースです。

軽躁の場合は、この病的な飛ぶ感じがありません。そのため業績も上がり、本人には病識がないので受診意欲がありません。

精神科医には、この軽躁を躁病と間違える診断を下す人が居ますが、飛ぶ感じと仕事の業績などを聞けば判断の間違えは少なくなります。

躁病はうつ病を併発することが多いです。患者さんはうつになったとき躁状態の自分を病的なくらい反省したりします。そのとき自殺念慮が立ち現われてきて、うつから躁へ移るときに、自殺を実行したりします。

躁を持っている人はひとたびエネルギーを得るとそれは半端ではないエネルギーなので、うつの人に比べると簡単に命を落としてしまいます。そのため、周囲の人は、患者さんをよく観察し躁へ移る時期には、注意深く患者さんに接することが必要です。

うつ病の人の回復期の自殺についてはよく言われることですが、躁うつ病の人のうつから躁へ転移する時期の自殺についてはそれ以上に注意が必要なのです。

躁病には継続的な薬物療法と、他人を見ることのできる目を養うカウンセリングの両輪で治療を進めるのがいいかと思います。躁病の人はなかなか自分のことが分からない人が多いのですが、他人のことがわからないと自分のことなどはわからないからです。

データ(Zimmerman, 1999)では強迫性人格障害の20%に躁病が見られますが、その他の人格障害には躁病の割合は少ないようです。
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