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ソレア心理カウンセリングセンター

2018.07.13 |情緒不安定・パーソナリティ障害

DSMにみる境界性パーソナリティ障害の診断基準

DSM-5では次の基準のうち5つ以上該当するとこの障害の疑いあり、とされています。



ただ、「境界性パーソナリティ障害とは」でも述べましたが、この基準は診断する人が違えば違う診断がくだるようなあいまいさを含んでいます。そのためご自身でくだす診断は絶対のものではないということを付け加えさせてください。

何かしらの症状をもっておられる方がご自身のことを振り返る場合、ともすると、重い症状に解釈しがちですので「参考」という視点は常に忘れないでください。何度も言うようですが、これは絶対のものではありません。


(1)現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとするなりふりかまわない努力

他者との別れや他者からの拒絶にあうと、見捨てられたと思って自分の中に大きな変化がおきます。学校を卒業したり転職したりしたことによって、生活習慣が変わることでも同じような変化がおきます。この変化は、感情や考え方、行動に現われるばかりでなく、「自分とはこういうものだ」と普段思っていること、つまり自己同一性にも混乱をきたします。感情が不安定になることで、周囲の状況に非常に敏感になるわけです。

実際、何らかの時間的な制約があって別れなければならなかったり、何らかの理由で計画を変えなければならなくなったことに対しても、見捨てられる恐怖や不適切な怒りを覚えます。カウンセリングを受けていて、カウンセラーから「今日はこのへんで」とカウンセリング時間の終了を告げられたり、「相談料は○○になります」と言われたりしたとき、また大切に思っている人との待ち合わせで相手が2,3分遅刻してきたときなどにも、パニック的に恐れや怒りが起こったりします。

これは「見捨てられる」ことが「自分が悪いことを意味している」と信じているからであり、この見捨てられ恐怖は、一人でいることに耐えられなかったり、誰か他人に一緒にいてもらいたいという欲求から生じるものです。この世界の終わりを告げられるような耐えることのできない見捨てられ恐怖をできるだけ緩和させておくために、なりふりかまわない努力をしようとします。その努力には、自傷行為や自殺行動なども含まれます。なぜ、このような人たちが自傷や自殺を繰り返すのか、それはこの見捨てられ恐怖にあるのです。

(2)理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる、不安定で激しい対人関係様式

自分が気に入った人に対して、たった1、2回あっただけで自分の面倒を見てくれる人とみなし、自分を愛してくれる人として理想化します。そして長い時間一緒に過ごすように要求し、まだ会ったばかりなのに、自分の個人的なことを非常に詳しく分かち合おうとします。このような人たちは他人に共感したり世話をしたりはできますが、それは相手が「そこにいて」お返しに自分の求める欲求を満たしてくれることを期待しているからです。

しかし、このような人は、理想化からこき下ろしへすばやく態度を豹変させ、自分の面倒を見てくれない、十分にものを与えてくれない、自分と一緒にずっと「そこに」居てくれない、と感じてしまいます。他人に対する見方を突然に、しかも極端に変化させ、他人に対しては、有益な援助をしてくれる人いう見方と、残酷な罰を与える人という見方が、いれかわり立ち代り出てきて、それによって混乱が自分の中に生じますが、自分ではその混乱は気づいていません。このような変化は、いったん理想化した相手はいずれ自分を拒絶して見捨るだろうという幻滅を自分で作り上げてしまうために起きるものです。

(3)同一性障害:著明で持続的な不安定な自己像または自己感

自分の目標や価値観、志望する職業、仲良くしている友人のタイプなどが急に変わることで自己像が劇的に急変します。目標を達成する寸前でそれを放棄したりもします。自己像とは自分の特徴を代表する雰囲気のようなものですが、この自己像が急変するということは、自分自身でも感じますし、周囲の人にも歴然とわかります。

こうした人たちは、助けを求める者だったのにその役割も突然に変えて、過去に経験した虐待に対して「正義の報復」を始めることもあります。このような急変する自己像は、自分がまったく存在しない、空虚な感じを持つこともあります。このような自己像の急変は、意味ある対人関係や支持を得られなくなったと感じる状況で起こってきます。

このような急変する自己像を持つために、自由にやれる仕事や学校などの環境に接すると作業能率が落ちる傾向にあります。ある程度、枠がしっかりした現場での仕事を得意とします。

(4) 自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの(例:消費、性行為、物質乱用、無謀な運転、むちゃ食い

賭博(とばく)、無責任な金銭消費、むちゃ食い、物質乱用、危険な性行為、無謀運転などをしがちです。

PattisonとKahan(1983)によると自傷行為は、その致死性によって、高、中、低と3段階に分けることができ、それぞれに直接的あるいは間接的な行為がカテゴライズされています。致死性が高いとは自殺のことをいい、中程度とは繰り返される自殺企図あるいは重大な自傷、低程度は軽い自傷のことをいいます。直接的というのは、自分を傷つける行為が即座に身体に損傷を与える行為の場合で、間接的というのは、身体損傷が即時的なものではなく、その害が蓄積することで生じる行為をいいます。

高い致死性をもつ直接的なものは自殺あるいは繰り返しの自殺のことで、間接的なものは状況的危険行動、高度に危険なスタント、程度の重い拒食症などです。車が往来する道路へ飛び出したり、高いビルの屋上の縁を歩いたりすることも高い致死性をもつ行為と判断されるわけです。そして注意してほしいのは拒食症もここに入るということです。拒食症は、それほど危機感をもたれることは少ないかもしれません。しかし、その実態は、死と裏表にあるということは認識しておいてください。

一方、危険なスタントについては、別の見方もできます。これはスリルを求める心性でもあり、それは個人の進歩を導く原動力にもなるかもしれないエネルギーを秘めています。ですからいちがいに自傷の分類に入れることはできません。カウンセリングではその見極めも必要になってきます。

中程度の致死性をもつ直接的なものは重大な自傷であり、間接的なものは急性アルコール中毒や性的危険行動などです。よく知らない人と性行為をしたりすることもここに入ります。

低い致死性をもつ直接的なものは一般的な軽い自傷であり、間接的なものは慢性的な物質乱用(覚せい剤や薬の乱用)、過食症、治療のために服薬している行為を自分の意志で中断することなどが入ります。

この分類をみると摂食障害(拒食、過食)は自殺・自傷の一種と考えられ、適切な対応が必要な障害なのです。一歩間違えば、大切な命を落としかねない障害なのです。


(5)自殺の行動、そぶり、脅し、または自傷行為の繰り返し

境界性パーソナリティ障害をもつ人の8%~10%は実際に自殺をしてしまいます。またその数倍の人が自殺企図や自傷行為(創傷や熱傷)をします。繰り返えされる自殺企図は、その人が助けを求めているということの裏返しです。これらの自己破壊行動は、別離の脅威、拒絶、または自分の責任が増えるかもしれないと予感する事態に遭遇することで起きてきます。

また自傷は、自分の意識が自分という身体から遠ざかって感じられる解離性の体験の間に起きます。自分が自分でないような離人感覚のときに自傷が起きます。そして自傷して流れ落ちる血をみたり痛みを感じることで、「自分で感じている」という能力を再確認したり、自分が悪いという持続的な感覚から抜け出すことができると、自傷行為は治まっていきます。自傷をすることで、自分のコントロール感を取り戻すのです。


(6)顕著な気分反応性による感情不安定(例:通常2・3時間持続し2~3日以上持続することはまれである。エピソード的に起こる強い不快気分、いらだたしさ、又は不安)

この障害をもつ人の基本的な不快感は、主に、怒りやパニック的な出来事によって発生します。健康的な生活をする、あるいは満足する体験をすることによって和らぐことはありません。パニックを発症する出来事とは、対人関係でストレスを感じる出来事で、その出来事に極端に反応することでパニックが発症します。

(7)慢性的な空虚感に悩まされている

何をするにも飽きっぽく、いつも何かすることを探しています。また何かしていても目的を達成する直前でそれを簡単に放棄してしまうことがあります。この飽きっぽさが慢性的な空虚感です。

(8)不適切で激しい怒り、又は怒りの制御が困難であること(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いの喧嘩を繰り返す)

この障害をもつ人は、ひどく辛らつないやみを言い続け、また爆発的に激しい言葉を吐いたりもします。世話を焼いてくれる人や愛してくれる人が、冷たい、何も与えてくれない、世話をしてくれない、自分を見捨てた、と思うと、怒りが呼び起こされます。怒りを表現した後は、恥ずかしさや罪悪感を感じ、自分が悪いという気持ちが沸いてきます。

(9)一過性のストレスに関連した妄想的観念または重篤な解離症状

これらの症状は、現実あるいは想像上で、見捨てられることへの反応として起きてきます。妄想にとらわれたり、自分が自分として感じられなくなったり、幻覚や幻聴を聞く場合もあります。この症状は一過性のもので、数分から数時間持続します。世話をしてくれる人が現実に世話をしてくれたり、またはそのように感じたとき、これらの症状はなくなります。


簡単ではありますが、各項目に説明を加えることでこの病態の特徴が少しは理解していただけるかと思います。

参考図書:
DSM-5精神疾患の分類と診断の手引(医学書院版)
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