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ソレア心理カウンセリングセンター

2018.07.13 |うつ・不安

人前に出れない、乗り物に乗れない

これらの症状は、DSM-5では、不安障害群の中の恐怖症に分類されています。うつ病などと同じ感情の障害です。


具体的には、

(1)広場恐怖症
(2)社会不安症
(3)限局性恐怖症

の3つに分類されます。

広場恐怖症とは、家の外に1人でいたり、混雑の中にいたり、列に1人で並んでいたり、橋の上にいたり、バスや電車で移動したりするような、1人で居るとき逃げるに逃げられない場所への恐怖を言います。パニック発作(動悸、息切れ、発汗が急速にピークを迎えること)を併発しているケースが多く、パニック発作が起こるかもしれないという予期不安を、非常に苦痛を持って耐え忍んでいる状態でもあります。

社会不安症とは、人前に出るのが苦手な対人恐怖のことです。日本人には多いと言われています。(私も吃音がありますので、人前が苦手です。)

限局性恐怖症とは、飛行機、トンネル、エレベーター、自動車、高所、水、嵐、動物、虫、注射、血などの特別な状況下で起きる持続的な恐怖です。このような刺激に触れると、不安反応が生じ、パニック発作として現れることもあります。子どもの場合は、泣いたり、かんしゃくを起こしたり、しがみついたりしてきます。

このような病的不安は、例えば試験のときドキドキするような不安とは区別されます。この恐怖による不安は、そのような不安を遥かに越えているところに、患者さんの苦痛が存在しているのです。
しかし、このような病的不安はどの疾患にも見られるもので、不安障害に限定することは難しかったりします。つまり不安障害は他の疾病と合併して現れることが多いのです。

病的な不安かどうかは、身体症状を確認することによりある程度わかります。

・気持ちが落ち着かなかったり、
・心臓がドキドキして呼吸困難になったり、
・頭が痛くなったり、
・口が渇いたり、
・めまいがしたり、
・手足が冷えていたり、
・手が震えることがないかどうか

などの身体に関する症状です。

また心理的な症状としては、

・些細なことを憂慮する、
・焦燥感(うつの易刺激性と同じです)、
・電話の音など些細な音にも敏感に反応する、
・予期不安がある、
・将来への不安がある、

などです。

これらの病的不安は、その場その場の一時的なものもあれば、非常に長期にわたって取り去ることのできないものもあります。前者を状態不安、後者を特性不安といい、精神医学では不安をこのように2種類に分けて考えます。

この2種類の不安のうち、どちらの不安が強いかを調べるSTAIという心理テストがあります。またロールシャッハテストを取ることで、不安の強さがわかり、その不安が患者さんの周囲の環境からきているのか、それとも元来性格の構えとして出来上がっている不安なのかを調べることもできます。これ以外にもMAS、MMPIなど不安を調べるテストはたくさんあります。


さて、不安に特別な症状名がついているものがあります。

乳幼児が母親から引き離されるときに体験する不安状態を分離不安と呼びます。親など愛着のある人に危険が及ぶのではないか、そういう愛着対象から自分が引き離されてしまうのではないかと過剰に心配し、そばにずっといることを主張し登校を拒否し、不登校になったりもします。引き離されそうになると頭痛、腹痛、吐き気などの身体症状が発生したりもします。

心的外傷となるトラウマ体験した人が、その直後、あるいはしばらく経過してから、その出来事を反復的に思い出し夢に見たり(悪夢など)して再体験し(侵入)、その出来事を想起させるような場面を回避し、目が冴えて眠れずいらいらした気分が続く(過覚醒)不安状態を、外傷後ストレス障害(PTSD)と呼びます。

外傷後ストレス障害はその出来事が発生して1ヶ月以上、上のような症状が続く場合で、急性ストレス障害(ASD)は、その出来事の発生から1ヶ月以内に起こる症状で、侵入と過覚醒はPTSDと同じですが、回避が見られずそのかわり、現実感覚が消失するという辛い解離症状が現われます。

解離症状が現れてくると幻覚や幻聴も登場してきます。

産後の母親が子育てについて心配することを育児不安といいますが、これは病的不安というより、産後うつ病と考えられます。

このような病的不安が急に発生するもの(不安を感じて10分以内にそれがピークとなるもの)を不安発作(パニック障害)と呼びますが、これについては別の項目でお話します。



ここで不安を心理学的な視点からみてみましょう。

不安の解明についてはフロイトの精神分析の研究からスタートします。彼は不安を①現実不安と②神経症的不安に区別しました。現実不安とは、実際に存在する外的な危険性に対しての不安反応で、自分を保護しなきゃ、という欲求の現われです。神経症的不安とは、外的な危険とは無関係に、内的に危険を感知したことにより生じてくる不安です。

例えば人が自分を見ていたとします。その人はナイフを持ってこちらを見ていたら、まずこれはヤバイと思いますよね。これが現実不安です。けれどナイフを持ってなくてこちらを見ていたらどうでしょう。ある人は何も思わないかもしれません。対人的に過敏な人は、こちらへ敵意を向けているように感じるかもしれません。こうやって人によって感じ方が違い、ある人にとってはそれが不安を喚起させるとき神経症的不安と言います。

このような神経症的不安について、どのような時期に形成されたかによって、その不安の種類を分類することもできます。これは精神分析的研究による成果と言えるでしょう。(自分は精神分析はやりませんが、精神分析研究の歴史は100年以上あり、普段の臨床でも活用できる成果が多々あります。)

主な不安は以下の3つです。
1.破滅不安
2.分離不安
3.自尊不安

生後5ヶ月くらいまでに形成される不安を「破滅不安」といいます。被害感、憤り、人間に対する基本的不信感などで、この不安がもとになっている障害として、幼児期崩壊性障害(広汎性発達障害の一例)、統合失調症などがあります。

生後10ヶ月~2年くらいまでに形成される不安を「分離不安」といいます。抑うつ感、怒り、罪悪感、無気力、空虚感などで、この不安がベースの障害は、躁うつ病、反社会性人格障害、境界性人格障害、依存性人格障害、分離不安障害、不登校(不登校自体は障害ではありませんが不登校児に分離不安が見られるのは先にお話した通りです)などです。

生後2年~6年くらいまでに形成される不安を「自尊不安」といいます。劣等感、恥、失敗不安などで、妄想性人格障害、自己愛性人格障害、神経症などを発症します。神経症という区分はDSM-IVにはありませんが、身体表現性障害や解離性障害など、従来ヒステリーとして呼ばれていた疾患です。

余談ですが、病院などでは、ヒステリーという呼び方はまだまだ使われています。ヒステリーには次の3つのカテゴリーがあります。

1.ヒステリー性格(偽性ヒステリー患者と呼ばれます。)
2.ヒステリー神経症(真性ヒステリー患者と呼ばれます。)
3.ヒステリー精神病

ヒステリー性格とは、自己顕示欲が強く、子どものようで未熟な性格、つまり演技性人格障害がそれです。大抵は境界知能群です。

ヒステリー神経症とは、身体表現性障害や解離性障害などです。演技的でなく内気な患者群です。現実検討力があります。

ヒステリー精神病とは、心理的な影響(心因)で発症し幻覚や妄想などの陽性症状を示すが、話を聞けばその内容は了解できるもので、比較的短期に快復するもので、短期精神病障害(統合失調症の一例)などです。

話がそれましたが、自尊不安のあとは、理想とする自分と現実の自分のズレを感じて不安になる「道徳的不安」(小学生時代に形成)、現実のストレスによる葛藤を感じる「現実不安」(中学生以降に形成)と続きますが、この2種類の不安は、対話による来談者中心療法(ロジャーズ)が良く効果を発揮する不安でもあります。

対話によるカウンセリングでは、不安を人格の成長を促す貴重な契機として捉(とら)え、対話により、不安を自分の中に正しく消化(昇華)していくようにカウンセリングが進みます。これと異なり、行動療法などでは、不安は誤まって学習されたもので除去されるべきものと捉え、そのための様々な訓練を行います。


これはでは心理学的な視点で不安をみてきましたが、次は精神医学的にはどうみているのかをお話いたします。

まず、うつ病の方の不安は4種類に分けられます(広瀬, 1991)。

1. 離人感に伴う不安
2.取り越し苦労
3.心気症状
4.身体化症状

離人感に伴う不安とは、うつの発症に際して、自己の変容感や外界との疎外感を体験することからくる不安や恐怖です。

取り越し苦労とは、うつになると未来がすべて不吉で心配が付きまとうようになります。このような体験をされる人は非常に多いです。認知行動療法の創始者の1人であるベックは、うつ病の方の3つの誤まった認知回路として、自分、周り、未来への否定的考えを言及していますが、そのベックの言うところの未来への心配が取り越し苦労です。

心気症状とは、なにか重大な病気に罹っているのではないかと懸念し、わずかな身体不調にこだわることです。この不安もかなり強い不安で、少々のことではぬぐい去ることができません。

身体化症状とは、心気症状ほど強い不安ではないが、身体のどこも悪いことはないのに、身体的な訴えを続けることです。この体験もうつの人には典型的に見られます。


統合失調症の方の不安は、主に「あせり」からくる不安です(中井, 1985)。

統合失調症の方のあせりは、急性緊張病期に限られたものではなく、発病から寛解(いわゆる治癒)までを通して、「あせり」と「ゆとり」を行ったりきたりしながら、しだいに「ゆとり」へ移行し、寛解へ向います。

ゆとりとは、身体状況に気づくゆとり、緊張を意識できるゆとり、幻覚・幻聴を、ああ、また来たねと迎え入れることのできるゆとり、このように「あせり」と距離をたもてることです。

しかし統合失調症の方は「あせり」を基底に持っているため、せっかくゆとりができても、そのゆとりを性急に行動で消費してしまいがちである、と指摘されています。ここを周囲の人や専門家はバックアップしていかないといけないところです。ちゃんと適切にブレーキを踏んであげることが必要なのです。

中井は、統合失調症の方のみが味わうことのできる最も輝いた生の喜びは、「存在の余裕」でもあると述べています。


不安はこのように様々な症状の根幹をなすものですが、それも薬物療法や専門家によるセラピーが最もよく機能する症状であると言えます。患者さんをサポートしながら、ご自分でその不安と共に生きていけることをサポートすることが私たちの役目だと思っています。
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