質問受付ありがとうございます。
安定型愛着スタイルが何らかの要因で複雑性PTSDをおったケースだと、治療の過程や期間はどうなるのでしょうか?
また学童期や思春期など成人期に入る前にC-PTSDを発症したら、その時点で精神の発達が阻害され、精神年齢が止まったりするのでしょうか?
基本的信頼感のある人は、原則的には、複雑性PTSDになりません。それは、複雑性PTSDを提唱したハーマン(心的外傷とトラウマ)によると、複雑性PTSDは虐待の結果生じることを想定しているからです。基本的信頼感があれば虐待は起こりえないので、安定型の人が複雑性PTSDになることは本当に稀なことになります。
■安定型が複雑性PTSDになる場合
同じような質問をスタンドFMのレターでもいただいて、そちらでも回答しているのでチェックしてみてください。
基本的信頼感のある人が人生の途中で複雑性PTSDになった場合と、基本的信頼感の無い人が複雑性PTSDになった場合ではどちらが治癒に時間がかかるのでしょうか?
基本的信頼感のある人はそれをも脅かされるような経験になり、絶望が大きい気がしますし、基本的信頼感の無い人は恐怖の中、更なる恐怖が重なりこちらも絶望という言葉では言い表せないような気がします。
愛着不全の場合、執着(愛着)がある故に、回復に時間がかかると仰っていたと思いますが、複雑性PTSDの場合でも愛着がある無しで回復にかかる時間は変わるのでしょうか?
このレターへの回答がこちらです。(音声配信です)
ただこの回答でも申し上げているとおり、虐待された体験がなくとも、長引く戦争や類似体験に巻き込まれている場合は複雑性PTSDになります。が、それは今の日本ではかなり稀なことになります。
安定型の愛着スタイルの人が複雑性PTSDを追った場合も、治療は愛着障害に準じます。けれど何が決定的に違うかというと「原因」ですね。ご両親には何の落ち度もありませんから、愛着障害の治療の二軸、➊親がヘンだった、➋安全基地の構築、この➊がなくなるわけで、治療にも時間がかかるでしょう。10年単位になるかもしれませんが、しっかりとカウンセラーと安全基地について取り組めば光は見えてくるでしょう。
また、愛着障害のカウンセリングとは違って、親に手伝ってもらってカウンセリングを進めていく(家族療法)ことも重要になるかもしれません。親子同席カウンセリングですね。こちらにしてもかなりカウンセリングについて、こなれた視点がないとできませんので、カウンセラーなら誰でもできるわけではないでしょう。
■複雑性PTSDと精神年齢
虐待された人は精神年齢は幼児期でストップし、その後「かりそめの成人期」を発達させていきます。
安定型の人が複雑性PTSDに巻き込まれた場合の精神年齢はどうなるかについては、精神年齢は(母)親との関係で発達していくものなので、思春期通過まで親との関係が成立している場合は、普通に発達していくものと思われます。
安定型の人で、思春期以前に何等かの事故・事件にまきこまれて親との関係が切断されてしまった場合は、親との関係が戻ったら、親との関係をやり直していくことになります。ここで先の家族療法が効果を発揮するでしょう。そうやってこころの傷を修復しながら、親への反抗をカウンセラーに見てもらいながら、人生の生き直しを実践していことになるでしょう。
いづれにしてもこちらも稀なケースになると思います。
基本的信頼感はあったのに、複雑性PTSDになったことについて、スタエフでレターをいただきました。こちらの話題に近いので、ここに再録させていただきます。誘拐されて長期にわたり監禁されていた人からのお便りです。