乳幼児~3歳までに愛着形成は行われ、この時期に愛着障害が生まれると聞きました。 ということは3歳以降に愛着障害になることはないということでしょうか?
私は赤ん坊の頃から母子家庭で母と祖父母に育てられました。 3歳までは愛されて育ちましたが、3歳の誕生日を迎えた辺りから母が育児ノイローゼになり私を虐待するようになりました(暴言や首を絞めたり、心中をもちかけたり) 孫を庇おうとした祖父が(これまで妻子に一度も手を挙げたことがない人だったのに)、母に毎日DVを行うようになったのもこの頃です。 この状態は約2年続きました。 虐待は5歳の頃にはかなり下火になりましたが、今でもよく覚えています。私はよく、泣きながら母親に「ママは私が大嫌いなくせに好きだなんて言って、嘘つき!」と絡んでいました。
しかし3歳までに愛着形成が成された相手から3歳以降に虐待されて愛着障害になることはあり得るのでしょうか?
まずは基本的なことから考えてみましょう。そこからさまざまなケースが、それぞれに見えてくることになります。
➊愛着があったか、なかったか。これが基本です。
➋愛着があった場合でも、愛着障害になるケースもある。これが応用です。
■愛着がなかった
これは0歳からずっと続いている状態です。なぜなら、母親が愛着を形成する能力に欠けている状態なので、途中からそうなるわけではありません。
この場合子どもは、典型的な愛着障害になります。
愛着を形成する能力がない場合、その母子関係は虐待関係になります。ここで注意すべき点は、虐待は目に見えるもの、目に見えないものがあるということ。
特に、目に見えない虐待は情緒的ネグレクトと呼ばれており、ここを見落とす心理職も多いです。十分な虐待の研修が必要でしょう。
質問者さんの場合について、少し考えてみましょう。
- 3歳まで愛されて育ったというが、それは本当か?と再考が必要かもしれません。
- もし愛されて育っているならば、3歳以降つまりイヤイヤ期に入ったことによる母親の育児ノイローゼであり、虐待ではなかったかもしれません。「ママはわたしが大嫌いなくせに好きだなんて言って、嘘つき!」と抗議できているので、愛着形成はされていたのかもしれません。
- 愛着形成はされていたが、質問者さんが愛着障害になってしまったケース(下記)かもしれません。その場合、質問者さんがどのような症状を、数十年に渡って患っているのかが知りたいところです。
- 3歳~5歳まで祖父から母への暴力と、母の育児ノイローゼが続いたということですが、どうして祖父がその時期にだけ、限定的に豹変したのかも気になるところです。何かの原因があったのでしょう。祖父には精神疾患はないのでしょうか。たとえば躁うつ病とか。
- もし愛着形成がされていなかった場合は、情緒的ネグレクトが優勢であったかもしれません。目に見えない虐待ですね。
■愛着があったけれど、虐待関係であった
こちらはかなり難しいケースであり、まずは基本の➊のケースに多く当たっていくところで、虐待の勘どころが見えてきて、➋に対応できると思っていただいていいでしょう。
- (1) 母親が自閉圏(ASD)の場合
- (2) 母親が統合失調症系の人格障害の場合
- (3) 母親がマウントを取る幼稚な行動をする場合、そしてその行動が行き過ぎている
- (4)その他
上の場合は、すべてが虐待関係になるわけではないので注意が必要です。とくに(3)や(4)の見立ては難しいでしょう。この場合に役に立つのが祖父母の見立てです。
(4)は、母親が養育過程上で、途中、重篤な精神疾患に陥った場合も想定できます。質問者さんの場合、2年間という限定した期間の虐待であるとみると、母親の身に、育児ノイローゼ以外の何かの精神疾患に陥っていたのかもしれません。
■養育者がコロコロ変わるケース
養育者の頻回なる変更も、愛着障害になる要因です。質問者さんの場合は該当しないかもしれませんね。しかし3歳までに、母、祖父、祖母と養育者が変化していた場合は、その他のケースに入るかもしれません。協同して育児に当たっている場合は除外してもよさそうです。
養護施設などで育った場合、一人の養母さんに複数の子どもが愛着を作ろうとし、養母さんもクルクルと変わるので、それが愛着形成に影響を及ぼすときもあります。
幼いころから保育所に預けられていた場合も、このケースに当てはまる場合もありますが、両親と保育士さんが共同して育児に当たっている場合は除外できる場合が多いです。
ソレアにも、こういう環境で育ったことによって愛着障害を発症している人が、たまにやってきます。
■まとめ
このように愛着障害かどうかは、いろいろなケースがありますので、幅広い経験と研修が臨床の大前提になってくるのです。
愛着障害かどうか迷っている方は、まずは愛着を専門に扱っている機関を探して相談してみることをお勧めします。愛着については軽く扱っている心理職もいますので、どこでもいいというわけにはいきません。良いカウンセラーに出会えることを祈っております。