愛着不全は葛藤ではなく不平不満。愛着障害は葛藤する余裕はなく、回復しても執着がないのであまり葛藤しないと理解させていただいてるのですが、先日の質問箱で人を成長させるものは「基本的信頼感」と「アイデンティティ」というお返事をふまえての質問です。
アイデンティティ確立には葛藤がつきもの思ってたのですが、回復した後の愛着不全、愛着障害のアイデンティティは、どのように形成されるのでしょうか?
ホリーや、ラ・ラ・ランドの叔母さんのように、回復というよりは「不時着」だとアイデンティティというより「無垢な心(イノセンス)を永久凍結」という感じでしょうか?
スナフキンは聡明な感じなので「葛藤する間もなく」「わかってる(達観)」してる感じでしょうか…?(葛藤というある種少し余裕のある状態を越えた長い逆境経験で体得してる)
また最近のスタエフで「愛着障害グレーゾーンは子供の頃から葛藤してる感じ」というお話がありましたが、愛着障害グレーゾーンはカウンセリングで回復すると、安定型愛着スタイルのように葛藤していき、アイデンティティをつくってく感じでしょうか?
また、そもそもグレーゾーンの人は回復前の精神年齢はどんな感じなのでしょうか?子供の頃から葛藤してても基本的信頼関係に傷があるので、愛着障害のように乳幼児なのでしょうか?それとも葛藤がある思春期のような感じなのでしょうか?
「葛藤は一生続く/葛藤があることは良いこと」という高間先生のご説明に納得ですし 、ラ・ラ・ランドの歌をきいて「Here’s to the hearts that ache(痛む心に乾杯)」が一番心に響きました。葛藤は苦しいのでできるだけしたくありません。でも自分がどんな人に安心感を感じるといえば「痛みを知る人(葛藤を知る人)」だと思えて、細かくて申し訳ありませんが、葛藤についてのお話を少しいただけたらありがたいです。
それでは、いつも本当にありがとうございます。高間先生の発信を知り、人の心の基本や発達について学び、またこのように直接質問にお返事いただけて、自分をゆっくり振り返れるようになり慢心に気付けました。また人と比べたり多くを望み苦しくなることが減り、心が安定するようになりました。重ねましてありがとうございます。
愛着障害や愛着不全の人々が回復していくとどのように葛藤していくのか、これは説明がとても難しい問題と感じています。私の発信では、ピンポイントで色々と説明をしてきましたが、はて、まとめるとどういうことになるのだろうか、と悩みました。
それでも、私の言葉で説明をしてみようと思います。これまで言っていたことと齟齬が生まれるかもしれませんが、齟齬がある場合は、それが一つの流れの中に吸収されればいいなと願っています。今日の説明では吸収されず、将来的に吸収される可能性がおおいにあるということです。
さて彼らは回復すると、安定型愛着になるのは間違いのないことに思います。けれど普通の安定型か?というと、それは違うだろうと思います。彼らなりの狂気や奇妙さを引きずって安定しています。
これは日常生活は営めるが、マジョリティの人々とはやっぱり一線を画しているということです。ということは、アイデンティティを彼らなりに作り上げているということです。通常、アイデンティティというものは親の生き方と自分の生き方の葛藤状態の中で、破壊と創造を経て、思春期に形成されるものです。愛着に難がある人はこれができないので、何らかの新しい方策を取る必要があります。
ここに登場するのが「友だち」とも言えるかもしれません。母子葛藤で形成されるアイデンティティを、安全な友だちとの関係の中で形成していく。これがいまのところの私の結論です。
東日本大震災のときにアメリカ軍が日本に対して「トモダチ作戦」を展開してくれました。集団としては、ああいうトモダチです。レオレオニはカメレオンの絵本で、かけがえないのない一匹の友だちを登場させました。孤独な私としては、ああいう親友です。ですから彼らのアイデンティティは、普通のアイデンティティではないのでしょう。しかし、
- 普通ではないが、生きるには十分である、ということです。
ならば、それでいいのではないでしょうか。
愛着障害グレーゾーンの方々は、母親との愛着はうっすらとはあるのですが、情緒的ネグレクトの頻発によって、その愛着も、世界を生き抜いていくチカラを持ちえないものになってしまっています。それゆえ、それを壊そうとするチカラ(思春期の反抗)に耐えうるものにはなっていません。だからアイデンティティも在っても無いようなものになります。葛藤も葛藤ではなく、葛藤しているような「感じ」になります。ここが非常に分からりづらい人格になるのですね。グレーゾーンの人は、なんだか非常に分かりづらいのです。
これらの特殊なアイデンティティを構築する下支えをするのがカウンセリングです。彼らがしっかりと自分の言葉で、自分の感情を話し出せるようにサポートする場が、カウンセリングルームです。
回復しても通常のようなアイデンティティにならない確率が高いです。でも生きるには十分なものになります。それでめでたし、めでたしと思います。人によっては実年齢を精神年齢が大きく超えていく人もいますが、それは稀な人なので、こういう場では控えておきます。オフレコ、で。