初めまして。
現在複雑性PTSDで心理カウンセリングに通っており、愛着形成について調べていくなか高間先生のご著書『「鍋がこわい」という病』にたどり着き購入いたしました。
ご著書やブログに書かれている内容を自身に当てはめて考えると、母との関係においては”愛着が無いわけではなかった”、つまり”愛着不全”に当たると思われますが、家族以外の対人関係において一方的に愛着を強く感じたのちに拒絶してしまうという、愛着障害の脱抑制型に似た症状がよくあります。
また、父はおそらくASD(境界知能または普通域の知能水準)であり、幼少期から断続的に父からの情緒的ネグレクトや心理的虐待を受けてきた自覚もあります。
「愛着形成は主に養育者である母親と行われる」「父親に心理的虐待を受けている場合は、父親による複雑性PTSDになる」(p.114)とお書きになられていたことを踏まえると、母親との関係が愛着不全で、かつ父親からの情緒的ネグレクトや心理的虐待を受けてきた自身の場合「愛着不全と複雑性PTSD」といった見立てになるのではないかと考察しますが、これでは上記でお伝えした愛着障害様の症状に対する説明がつかず、そういった場合臨床専門家の立場からはどういった見立てをするのでしょうか?
お忙しい中大変恐縮ではありますが、ご回答いただけますと幸いです。
「鍋がこわい」という病、お読みいただきありがとうございます。細かく読み込んでいただいているようで嬉しいです。さて、こちらの質問ですが、かなり細かな話になりますので、専門家向けの回答とさせていただきます。質問の方を含め、心理職でない方々には、少々難しい内容に映るかもしれませんが、ご容赦ください。専門家向け啓蒙の意味を込めて解凍させていただきます。以下が回答になります。
もし母親が愛着不全なら、あなたも愛着不全です。そういう人が、父親からの断続的なPTSDがあったなら、「愛着不全の人で、複雑性PTSDあり」と見立てるでしょう。
この見立てにはあなたの年齢も加味する必要が出てくるかもしれません。
この場合、父親からの虐待を受けていたとき、母親がどう対応していたのか、していなかったのか、そういう情報も必要になります。これによって母親からの情緒的ネグレクトはあったのか、なかったのかがはっきり見えてきます。
しかしそれだけではありません。母親の生育歴も追っていく必要があり、それによって、母親が愛着不全なのか、愛着障害なのか、それとも普通の成人期で何らかの要因で子どもへのケアが不十分だったのか、それともその他の要因があったのかを、区別することができます。
また父親からの情緒的ネグレクトや心理的虐待がどういうものだったのか、それを虐待と言えるのか、また父親は本当にASDなのか、その根拠は?そういう見立てもしっかりと行っていく必要があります。
つまり、➊母親をしっかりと見立てる、次に➋父親をしっかりと見立てる、これらが明らかになったうえで➌あなたの見立てがしっかりと見えてきます。つまり、重層的に色々な情報を検討していくことが正しい見立てにつながる、ということになります。これは、カウンセラーの仕事になります。
ここではじめてあなたの治療がスタートするわけです。
ともあれ、現在複雑性PTSDの治療中ということですので、カウンセラーにあなた自身の愛着からみの話を色々としていくことだと思います。それによってあなたの状態像が、よりはっきりと豊かに見えてくるでしょう。そしてそのことは、あなたの治療に大きく貢献するでしょう。