はたしてフレディ・マーキュリーはボヘミアンなのか?|愛着障害、異邦人の視点からながめると…

愛着とトラウマ(虐待)
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このテキストはビデオの補足です。ビデオを見ながらお読みください。

現在上映されている「ボヘミアン・ラプソディ」は、クイーンのフレディ・マーキュリーの自伝的な映画です。今回は、フレディは果たしてボヘミアンなのかどうかということについて考えてみました。

ボヘミアンとはアウトローのこと

ボヘミアンとは、放浪者、流浪の民、ジプシーのことで、アウトローとか異邦人とも言います。みんな同じテイストをもった類語です。世の中からはみ出ているテイストです。ムーミンに出てくるスナフキンももちろんボヘミアンです。ボヘミアン・ラプソディは、「流れ者の唄」という意味になるでしょうか。

フレディは実際、インドで生まれ、アフリカ、イギリスと住む場所を変えていきます。生活ぶりはまさにボヘミアンなのですが、ここはそういう環境の変化の話ではなく、心理的にボヘミアンかどうかを考えます。

心理的にボヘミアンとは、愛着の問題がある人

心理的にボヘミアンというのは、どういう人かというと、母親と愛着を築けなかった人々です。母子関係に愛着がなかった人々です。精神科医の高橋和巳先生が著書で、そのような人を異邦人と呼んでいますが、これはボヘミアンのことです。精神医学の用語でいうと、愛着障害といいます。とすると、ボヘミアン・ラプソディとは「愛着障害の詩」とも言えそうです。

ボヘミアン・ラプソディの歌詞は殺人を犯した少年が母に助けてと訴えます。母親を求めています。そのように母親を求めるなら、母親とは愛着が形成されているように思えます。またフレディが、母親が自分のコンサートを見に来ていることを知ると、母親に向かって英語の性的な4文字を叫ぼうか、と挑発するようなことを言ったそうです。

これも親への抵抗の現れであり、母子の葛藤関係が存在することを匂わせます。愛着が形成されていないと、母親への抵抗もありません。この愛着を匂わせる関係がフレディの「ファンタジー」でなければ、フレディと母親には母子葛藤があった、つまり愛着関係が存在したということであり、フレディはボヘミアンではないことになります。

世界とのつながりを切ったフレディは、本物のボヘミアン

しかし、彼がエイズで死ぬ間際、自分の埋葬場所を誰にも教えるなと恋人に言い残します。両親にさえ知らせるなということです。世界の誰ともつながる必要はない、という彼の固い決意のようなものを感じます。一人になって死んで行く。これまでの自分の人生の総決算をここで成し遂げようとしているようにも思えます。誰ともつながって生きてこなかったから、死んでからも誰ともつながらない、という決心です。いえ、決心というものではありませんね。誰ともつながっていないのですから、自然とそう思ったのでしょう。これはボヘミアンそのものの生き方です。

このことから、フレディは、「根底にはボヘミアンの孤独があった」ということなのでしょうか。フレディの両親は熱心なゾロアスター教徒だったそうです。愛着を示せない親には生き方の一貫性がないのですが、彼らがこのゾロアスター教の信者だったということで、親の側に(形式的な)一貫性があったのかもしれません。それによってかりそめの母子葛藤が生じていたのかもしれません。そうすると、「フレディは核心的にはボヘミアンだが、ボヘミアンではないようにも見えていた」という説明もつきます。

そうやってボヘミアン(愛着障害)の視点から、このボヘミアン・ラプソディの詞を噛みしめると、また違った風景が立ち現れてきます。フレディの苦悩の人生が垣間見えます。歌詞の初めで、彼はそれを「ファンタジー」と言っています。彼は、自分の親子関係をファンタジーだと分かっていたのでしょう。そこに彼の深い孤独があります。

フレディ、誰もあなたを探さないから、
安らかに眠れ。

合掌。

ボヘミアン・ラプソディ 訳詞

ボヘミアン・ラプソディ(高間しのぶ訳)

これは現実なのか
それともファンタジー?
土砂崩れに巻き込まれ
現実から逃れられない
目を開けて
空を見よう
オレは哀れなやつだが、同情はいらない
オレはその日暮らしで気楽にやっているから
いい時も悪い時もある
何が起こっても関係ないね

ママ、いま人を殺したよ
彼の頭に銃をつきつけて
引き金を引いたら死んじゃった
ママ、オレの人生は始まったばかりなのに
全部捨てちまった
ママを悲しませるつもりはなかったんだ
オレが明日戻らなくても
何もなかったように生活してほしい

もう遅いよ、時は来た
背筋がぞっとした
体中が痛い
さよなら、オレはもう行くよ
そして現実と向き合うよ
ママ、オレは死にたくないよ
オレなんて産まれてこなければよかったと思うときがある

小さな男のシルエットが見える
道化師よ、おまえはタンゴを踊るかい?
雷と雷光がオレを恐怖のどん底へ突き落す
ガリレオ、フィガロ、素晴らしいよ
だけどオレはつまらないやつで、誰もオレのことなど愛さない

オレは貧しい家の出で、可哀想なやつなんだ
この悪夢からオレを救ってくれ
オレを自由にさせてくれ

ダメだ、絶対に自由にさせないぞ!

お願いだ、自由にさせてくれ
チッ、悪霊がオレに悪魔をよこしやがったぜ
だからオレに石を投げつけて目に唾を吐きかけるつもりか
オレを愛しながら見殺しにするつもりか
そんなことはオレにはできないよね、愛しい人
それはただの冗談だと言ってくれ

まあそれだって大したことじゃない
どんなことが起ころうと
オレには大したことじゃない

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