自己実現と自分を笑えるということ

-うつ・不安
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マズローという人がいます。

彼は子どもの頃、女と酒に走った父親と宗教に走った母親に育てられ、自分はこうはなるまいと両親を反面教師にしながら学問を目指します。
そして最初は、動物を使って行動を観察するような実験的な心理学をやっていたのですが、ヒトラーがヨーロッパで勢力を伸ばし始めたためアメリカへ渡ってきた、後にネオ・フロイト派と呼ばれるホーナイやフロムと親交を持ち始め、心理学の興味を人間的なものにシフトしていきます。

その頃、クライエント中心主義で有名なロジャーズも活動を始めており、彼らと一緒に人間性心理学という一大学派を立ち上げます。この学派は、フロイトを起源とする精神分析、動物に芸を教える理論のもとになっている行動主義とは一線を引き、自己実現的な様相をメインに出しました。マズローはその中心人物でした。

彼は、欲求階層説という学説を唱えています。
これは人には大きくわけて2つの欲求がある、一つ目は欠乏欲求、2つ目は達成欲求。欠乏欲求は、生理的欲求→安全への欲求→所属の欲求→承認の欲求と、低次から高次の欲求へとだんだん成長していきます。

前の欲求が十分に満たされると次の欲求へ移ることができるとされています。

そして欠乏欲求である承認が満たされると、いよいよ欠乏を卒業して、達成へ行くことができる。なにやら日本の学校制度を思い出したりしますね。つまり小学校→中学校→高校→大学とすれば、最後には大学院がくる。

大学院が欠乏欲求でなくて達成欲求であるかどうかということは、学問という体系を考えると一理あるかもしれませんが、今の大学院は、誰でも行けるようになった分、「達成欲求」的な面はかなり削ぎ落とされている気がします。法律系や臨床心理系の大学院は特にそうですね。あれは、弁護士や臨床心理士という資格を狙うためのもの、まさに欠乏欲求そのものです。(自戒をこめて)

ただ、欠乏欲求だから悪いって勘違いしないでくださいよ。逆に欠乏欲求で満足して何が悪いのでしょうか、と居直る。達成欲求なんて所詮、絵に描いたぼたもち、ほとんどの人が実現できない欲求なんですから。欠乏欲求でとどまって人生オッケーなんです。

そこのところを勘違いして、上へ上へと煽る(あおる)人が最近多くないですか。あなたの周りを見回してみてください。ネットビジネス系の人でも、上昇曲線をえがいていきましょう、とか掛け声かけてる人いますよね。それは勝手にやればいいだけで、人に宣言することでも何でもない。言われた私にとっちゃ、ウルサイだけです。

と、ここで本題に入ってきました。

達成欲求とは、自己実現が達成されることです。

西洋のほとんどの心理療法がめざす自己実現とは何か。ほんとに人間は自己実現するのがいいのか。

マズローは自己実現できる人間はどういう人なのかを言っています。次の11の態度です。ちょっと自分を振り返りながら読んでみてくださいね。

1.現実を的確にとらえ、不確かさを受け入れることができる。
2.自分や他人をあるがままに受け入れる。
3.考えや行動が自然で自由である。
4.自己中心的であるよりは問題中心的である。
5.ユーモアがある。
6.非常に創造的である。
7.無理に型を破ろうとしているわけではないが、文化的になることに逆らう。
8.人類の幸福に関心を持つ。
9.人生における根本的な諸経験について深い理解をもつことができる。
10.多くの人とではなく、少数の人と深い満足的な人間関係を形成する。
11.人生を客観的な見地から見ることができる。

どうでしょうか。
そうそうとか、意外だ、とかあるのではないでしょうか。

1、2、5なんかはカウンセリングをしていて、クライエントさんが力をつけてきたなと思ったとき同じことを感じます。

現実をずいぶんと距離を置いて見れるようになり、自分の不確かさをあるがままに受け入れる準備が整ってきて、自分を笑いの対象としてみることができるようになると、クライエントさんが抱えていた症状が落ち着いてきます。憑き物がとれたように顔の表情が楽になります。

10では、「多くの人とでなくて、少ない人と」なんですね。八方美人じゃなくて、誰にでも愛想よくでもなくて、「この人」という人と、太く長い人生の道を歩くのが幸せへの道なんですね。

ふーん、という感じしませんか?
自己実現とはこういうことを言っているのです。

みなさんの考えている自己実現とはちょっと色合いが違ったりしますか。それとも、うんうんそうだ、と納得されている方もいらっしゃるでしょうか。

いま世間で言われている自己実現は、このマズローの言うものとはずいぶんかけ離れている気がします。みなさんは、ご自分の自己実現は何でしょうか。それをこのマズローの言う自己実現と比べてみてそのズレを感じてみてください。

そのズレが大きいほど、ご自分の悩みが大きいかもしれません。ズレのことも、頭の片隅にちらっと置いておいてくださいね。

私は、5.ユーモアがある、に着目します。これはね、面白いことを言うというわけではないんですよ。自分を笑えるかどうか、ということなんです。

さて、オルポートという人がいます。
彼は「成熟した人」の条件として、5,6個の条件をあげているのですが、その中に

自分自身を笑いの対象にできるユーモア感覚を持ち合わせていること

と言っています。

あたしってさ、なんでいつもこんな恋愛ばかりになっちゃうんだろ。ほんとにアホだよね。アホで間抜けとはあたしのような女のことだよ。

人からアホだとかチョンだとか言われて、それに腹を立てずに、うん、うん、ほんまにそうやわ、ほんまに自分はアホやわ、と(ナゼか関西弁)根っから思うことができて、自分のアホさ加減を遠目でみれることがユーモアの感覚です。

自分を笑えること。これは今も昔も大切なことのようです。

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