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ソレア心理カウンセリングセンター

2018.07.13 |情緒不安定・パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害(BPD)の方を周囲から見守る人のための5つのパワーツール

こないだ星和書店という精神医学・臨床心理系の出版社の主催する、ランディ・クリーガーという人のワークショップに行ってきました。2009年にこのワークショップの内容を書籍化するそうです。




彼女は「境界性人格障害=BPD」はれものにさわるような毎日をすごしている方々へ の著者の1人で、作家でもあり、BPDのメーリングリストを主催しています。彼女のBPDCentralというサイトをご紹介しておきます。彼女の笑顔も見ることができます。

http://www.bpdcentral.com/index.php

このワークショップは、家族、パートナー、友達、親戚にBPDの人がいる方および、BPDの援助者が対象で、BPD本人のためのワークショップではありません。

午前中がBPDに現在有効とされているアプローチの話、午後がクリーガー氏が来年出版する書籍にある「5つのパワーツール」の話とクリーガー氏の通訳をされていた女性のBPD体験でした。

特に最後の女性の話は良かったです。これを聞けてこのワークショップに来れて良かったと思います。私はこのような話をもっと聞きたかったと思い、さっそく、上のURLにあるクリーガー氏のメーリングリストに入りました。英語でしか話し合えないですが、辞書片手に毎日メールチェックしています。

これからクリーガー氏の話を具体的にお伝えします。通訳をされていた女性のBPD体験の話は、守秘義務がありますのでお伝えできないのが残念です。

■一般的なこと
クリーガー氏のワークショップの導入部分は一般的なBPDの話でしたが、大きくわけて次の4つに整理できます。

(1)家族としての対応
(2)BPDの原因
(3)一般的な対応
(4)高機能BPD


(1)家族としての対応
BPDは何度も家族をテストしまくります。くらだないことでも「みんなあなたのせいよ!」といちゃもんをつけます。これはBPDの自尊心の低さから来ます。周囲の人はこのやり方に乗らないようにしなければなりません。
この「みんなあなたのせいよ!」の底のほうには、「あなた大嫌い。でも見捨てないで」という気持ちが潜んでいます。この「見捨てないで」というかすかな訴えを拾えるかどうかで、ずいぶんと関係性の築き方も違ってきます。

BPDへの対応として知っておくことは、何かをやったら問題が起きるというわけではなく、何かをやってもやらなくても問題は起きる、という原則です。BPDは、感情を投げかけ、それに右往左往する家族の反応をうかがいながら、自分の中で孤立感をつのらせ、「ここは私の居場所じゃない」と結論をくだすのです。この思考回路を理解する必要があります。

問題は起きます。しかし、ここはあなたの居場所である、ということをしぶとく言い続けることが周囲の人には「できる最善の方法」なのです。周囲の人は、まず自分の感情を確認しましょう。BPDに振り回されるのではなく、自分を大切にしながら、BPDへ愛を送り続けるのです。

(2)BPDの原因
BPDは感情のアップダウンの激しい症状です。BPDは、育ってきた環境ばかりではなく脳損傷により発症することもあります。また、感情というものはIQ(知能)とは関係のないものです。原因の一つとして、自分を変えることができないということがあります。自分1人が変われば周囲の関係性が変わりますが、BPDは、この「変わる」ということができないのです。その結果、自分が周囲を困らせているのに、周囲が自分を困らせていると錯覚するのです(投影性同一視といいます)。この錯覚は他の病態を併発させることがあります。うつ病、双極性うつ病、自己愛性パーソナリティ障害、摂食障害などです。

BPDは、一つ事が終わればそれですべてが終わりということがありません。一つ終わればまた次のものがやってくるのです。予測が難しいのです。ですから、色々な戦略を用意しておくことが必要です。一番大切なスタンスとして、「BPDは変わることはできないが、彼らを支える自分は変わることができる」ということを理解して行動しましょう。

(3)一般的な対応
BPDから攻撃や非難を受けて、それを自分がどうしてもコントロールできないと感じるときには、呼吸法というレスキューがあります。まず自分の呼吸に意識を向けます。呼吸の基本はまず「吐く」ことです。相手から受けている非難を自分の体の中からすっかり吐き出すように、深く長く息を吐き出します。(高間注:クリーガー氏は西洋人ですので、まずは吸うことから始めますが、私の経験上、東洋的な吐く息主体のアプローチが効果的であると思いますので、ここは少しワークショップから離れて書いています。)息をすっかり吐いてしまうと、次には横隔膜が下がるしかなくなりお腹が自然とふくれて、吸う動作に入ります。吸う動作は何も意識せずお腹が膨れるにまかせます。この呼吸をしばらく続けます。

この呼吸を続けたあとリラックスできるソファーや椅子へ腰掛けて、頭や肩や首、背中など上半身を始めとして、腰や両足の下半身まで全身が弛緩している感じを味わいます。

その状態で周りの人、BPDを含めて周囲の人を感じてみます。自分と周囲の人がどのような関係にあるのか感じてみます。それは距離だけでなく、BPDから受ける感情の圧迫感のようなものもあるでしょう。それを客観的に見てみます。(フォーカシングという心理療法をご存知なら、それはフェルトセンスのようなものと思っていただいて結構です。)

このコーピングスキルはたやすく習得することはできません。幾度となく失敗するでしょう。しかし続けることでできるようになってきます。それを忘れずに、攻撃を受けたと思ったらこの方法でご自分の感情をスージング(緩和)してください。

またこの方法は、BPD本人にも有効な方法です。BPDを改善するために必要なスキルでもあります。BPDが落ち着いているときに話し合ってお互いに練習するのもいいでしょう。

(4)高機能BPD
さて、BPDにも、機能水準の高い人、低い人がいます。高機能BPDの人は、日常ほとんどの時間を正常に生活しています。この人たちは、社会的に成功者であり、社交的で人当たりがよく、きわめて少数の人の前でしか、BPD症状を現わしません。そのため、ほとんどの周囲の人は、高機能BPDに対して病的な意識を持たないのです。しかし、高機能BPDは、心の奥底では、情緒不安に揺れて行動化を繰り返す機能水準の低いBPDと同じように、感情の嵐のくすぶりを感じているのです。それを隠すのがうまいだけです。よくよく話してみると、彼らは自分のことを理解できていません。ただ成功しているためそれが自分の仮の姿として彼らの目の前に現れて、自分で自分のことを勘違いしているところがあります。

このような高機能BPDと関わるには、自分の考えや感情をはっきりとさせておくことが重要です。これは高機能BPDに巻き込まれないためにも重要なことです。

これまで4つのことを見てきましたが、BPDは適切な治療で必ず良くなる症状なのだということを再確認してください。周囲の人は、BPDは決して治らない障害ではないということをまず理解してください。そしてBPDは女性に多いのですが男性にもある、ということも。

(高間注:男性は反社会的パーソナリティ障害と診断されることもありますが、BPDと反社会性パーソナリティ障害とでは、その病態水準が違います。反社会性パーソナリティ障害はBPDと比較すると行動が計算高いというところが違うようです。BPDも他責的ではありますがそこには計算は入っていないように思います。ただこの2つの病態は互いに独立しているものではなく、併存してダブっていることが多いのですが、どちらかの特性を強く出していることによって病名の付け方が異なるのです。)

さて、これからはいよいよFive Power Toolsの話です。

■5つのパワーツール

BPDをもつ家族、パートナー、友達、親戚にできることは何か。それが今からご紹介する5つのパワーツールです。特に効果的な方法ということで「パワーツール」という言葉が使われています。

さて、5つのパワーツールとは何でしょう。

(1)自分を大切にすること
(2)行き詰まり感の原因を理解すること
(3)理解されるように伝えること
(4)愛情を持って境界設定をすること。本気でやること。
(5)適切な行動が出てきたらそれをサポートする。

この5つです。一つ一つ順番に見ていくことにします。(参考図書も高間が個人的に紹介していますので、利用してください。)

(1)自分を大切にすること

BPDの怒りに対してはどのように対応すればいいのでしょうか。まず私たちは十分な睡眠をとっておく必要があります。睡眠不足では「事に当たる」ときにこちらの感情が刺激され失敗する可能性があります。そして怒りに対しては「笑い」で応戦するのです。ユーモアは「関係性」という場面でいつでも何かしらの贈り物を持ってきてくれます。これらによって安全な表現をすることが可能になります。ゲシュタルト療法のエンプティチェアという方法も有効です。椅子を2つ用意し、自分が一つの椅子に座り、自分の正面の空の椅子と向き合います。そして空の椅子に空想でBPDを座らせて、そこに話しかけるのです。自分の気持ちを率直に話してみましょう。こうすることでこちら側の体制が整います。これを時間のあるときに繰り返してやってみましょう。

また運動も大切です。うつ病を始めとする精神疾患に散歩が有効なようにBPDに対応するためにも日々の生活に運動を取り入れましょう。これは生活にリズムをもたらすことによる効果をねらっています。リズムある生活を送ることで安定した精神状態を作ることができます。この「安定」がとても大切です。これは自分のためばかりではなく、BPDにとっても大切なことなのです。なぜならBPDは、相手に対して自分の感情を投影し相手が悪いと主張する方法を向けてきますが、この安定性によって、人は自分の好きに動かすことはできないのだ、という当たり前のことに気づかせることができるのです。これに気づくことでBPDの症状も一気に軽快へ向かうこともあります。(高間注:ワークショップではリズムの重要性は強調されていませんでしたが、個人的に話を膨らませて書いています。リズムをつけることはBPDだけでなく、うつ病を始めとするあらゆる精神疾患に有効な手段です。是非「決まった時間に外を散歩する」という運動を取り入れることを実行してみてください。)

孤立しないことも重要です。メーリングリストや家族の会などの自助グループあるいはカウンセラーの主催するワークショップなどに参加し、見聞やネットワークを広げいつでも誰かに相談できる体制を作っておくことです。

BPDというのは性格の問題というより、病気であるということをわかっていること。病気であるから、色んな感情をこちらへ向けてきます。それに対応することに対して疲れることもあります。そんなときは自分を大切にして、「自閉」することも一つの戦略です。

心配事リストを作っておきます。何が心配なのかを書き出します。そしてそのリストを遠めで眺めてみます。これによって心配事と距離を置くことができます。これは高間のカウンセリングでたまに使う方法、増井武士*による心配事と距離を取る処方と似ています。心配事と距離を取ることでそれを客観的に眺めることができます。心配事はなくなりませんが、それを抱えて生きている自分を横目で眺めることで自分がほんとによくやっていることを再認識することができます。あなたが居るからBPDはBPDをやっていることができるのです。

*こころの整理学―自分でできる心の手当て(増井武士)星和書店

(2)行き詰まり感の原因を理解すること

BPDに対応しているとすぐに行き詰まり感が現われてきます。何をやっても良くならない、何をやっても否定される、そんな気分です。

この行き詰まり感は、BPDの持つ「自尊心の低さ」から由来するものです。BPDは自尊心が低い、だからそれを隠す、あるいは認めたくないために、あらゆるものを否定してかかってくる。この事態をあなたは理解し、受け入れることです。受け入れることをしないと何も始まりません。

また、何をやっても良くならないという気分に対しては、「BPDへの対応への選択肢はたくさんある」ということを理解することが必要です。BPDへの治療方法としては、現在多くの治療法が確立しています。一番有名なものでは、マインドフルネス*を利用した治療法でしょう。リネハンの弁証法的行動療法ばかりでなく、ストレスコントロールの方法として、今後このマインドフルネスは多くの領域で取り上げられていくことと思います。マインドフルネスはその技法の一つですが、このように、BPDへ対応できる治療法は色々あるのだということを理解しておいてください。

行き詰まりを打開するには、自分のニーズは何かということを常に考えておくことです。BPDよりもまず自分のニーズが大切です。BPDのニーズを満たしてあげることも必要ですが、それが自分の行き詰まり感を刺激するときは、まずご自分のニーズを満たしてあげてください。BPDは、カウンセリングなどで自分のニーズを確認していくことができますが、周囲の人にとっては、そのように無条件に手を差し伸べてくれるところは周囲に見つけることができないかもしれません。そのため、自分で自分を守るためにも、自分のニーズには敏感になっておくことです。(1) で紹介したメーリングリストに入るというのも、自分のニーズを満たすためには有効でしょう。

ひょっとするとあなたはBPDの改善に躍起になっていることはありませんか。BPDが良くなることがご自身の何かを高めてくれると誤解していることはありませんか。厳しいことを言うようですが、そしてあなたのBPDに対する愛情も尊いものですが、BPDを改善することが、あなたの自尊心をくすぐっていることはありませんか。それは目的が違います。BPDも1人の人間です。1人の愛すべき人です。あなたに同情を向けられるタイプの人間ではありません。カウンセラーなら、共感はしても同情はしません。しかし、共感と同情を使い分けることは訓練されていない人にとっては難しいことかもしれません。BPDの方への愛情が同情になっていないか、それをチェックしてください。もし同情なら、それをすぐにやめることです。共感をするようにしてください。共感は難しいですが、相手に情けをかけることではありません。人は生きていく上では情け、つまり同情も必要です。しかし、BPDの人に対するときは、同情はひとまずふたをして、共感するようにしてください。*

*マインドフルネスストレス低減法 (J.カバットジン)北大路書房
*フォーカシングで身につけるカウンセリングの基本―クライエント中心療法を本当に役立てるために(近田 輝行)コスモスライブラリー(共感ということで書かれた本ではありませんが、共感の意味を知るためにこの本を推薦します。)

(3)理解されるように伝えること

BPDが向けてくる怒りに対して、その怒りのレベルが自分が持ちこたえるレベルを超えた場合、その場に居ることはやめましょう。その場で議論することを放棄します。そしてその場から逃げ出します。これをタイムアウトと言います。行動療法オペラント技法のオミッション訓練(獲得してしまっている習慣を消し去るための技法)として様々な分野で用いられてもいます。(高間注:私はこれを愛ある撤退と表現しています。)

まず、自分の限界を超えているなと思ったら、相手の背後の上のほうにもう1人に自分が居ると想像してみてください。そしてその背後の自分から、いまの自分と相手が議論している現場を眺めます。(これはとても難しい方法ですが、心の力を抜くことで可能になってきます。(1)で紹介した増井の本にあることを実践することで、この方法を得ることもできます。)こうすることで、たいていは、「私はここで何をしようとしているのか」ということに気が付きます。そして、「大切なのは私たちの関係である」ということに気づきます。これに気づけば、何かを言うことは何のメリットもありませんし解決策にもならないということが理解できます。確かに、相手はゆがんだ考え方を持っているかもしれません。しかし「ゆがんだ感情を持っているわけではない」のです。ここは一番大切です。BPDと関係性を保つときに一番大切にしておきたいことです。

「考え方はゆがんでいるかもしれないが、感情はゆがんではいない。」

これは、考え方を認めたり共感するのでなく、感情に共感する、ということです。BPDのもつ感情はとても純粋なことが多いのです。たとえそれが他責になっていたとしても根っこの感情は、十分に共感できる範囲のものが多いです。そこにBPDとの関係性を修復するためのキーが隠されているのです。

その場で話し合わないということは、話を先延ばしにするということです。どうぞ先延ばしにしてください。BPDとの関係性を愛あるものにするために先延ばし大歓迎です。そして感情に共感してください。

そしてもう一つ、BPDの相手の感情を見ると同時に自分の気持ちを見るようにします。この見方は次の4つの態度から成り立っています。

a.目標をもってコミュニケーションする。ここには境界設定が重要。
b.BPDは考えて行動することが難しいことを理解する。
c.自分と違う意見に距離感を感じてしまうことを認める。
d.まず、流しましょう。

a.境界設定とは何でしょうか。境界設定とは限界の設定のことです。これはBPDと関係を保つための取り決めです。BPDとの関わる方法を盛り込んだ計画をたてて、こちら側の頭を整理するためにも役立ちます。
限界を知るために、BPDと約束事リストを作ります。例えば、怒りがでてきたら10秒だけがまんしてみる、など、ほんのわずかな目標を掲げたリストを作るのです。リストの目標は、スモールステップというより、もっと小さな進み方、ベビーステップ、あかちゃんの歩みでいきましょう。そして、BPDに追いつめられそうな事態が起こったとき目標リストを示して、BPDの理解を得るのです。

BPDから感情を向けられたとき、この境界を設定していないと、あなた自身どうなるか考えてみましょう。境界を設定しておかないと、崖から突き落とされる気分になるかもしれません。いつもおなかの底に怒りを感じていなければならないかもしれません。自分の感情を表現することができないかもしれません。押しつぶされいるような感覚を持つかもしれません。

境界を設定していると、こちらにも余裕ができて、I(アイ)メッセージで相手に感情を表現することができます。アイメッセージとは、私はこういう気持ちだということを表現することで、「あなたのせいで…」という表現をしない表現方法です。また、こちらの感情表現を、優しく、繰り返して、ポジティブに表現することができます。

そして、設定した境界が守られなかったときの対応策として、タイムアウトがあります。「私には今やり場のない怒りが沸き起こっていて、それに耐えることができない、あなたの感情を受け止める能力がないので、散歩へ行ってきます。1時間たったらまた戻ってきます。」といってその場を去るのです。このとき、何時間たったらまた戻ってくると告げることを忘れないでください。

これには、なかなか合意は得られないかもしれません。しかし、自分ができない(BPDの感情を受け止められない)と思ったら、素直にIメッセージで伝えるという一貫性を保ってください。決して感情的にならず、自分はその能力がないということを一貫性を持って伝えつづけるのです。そのとき境界設定したリストを見せるのも効果的かもしれません。合意を得るためには、一貫性というものが重要になってきます。

そしてもう一度考えてみてください。このように境界を設定することは、あなたにとって長期的にどういう結果をもたらすことになるのかを。あなたはBPDとより良い関係を築きたいと願っています。この期待がブレないように一貫性を持った態度でBPDに接します。そうすることで、二人の関係が重要なのだとBPDが分かるときがいつか来ます。(高間注:BPDは普通の人に比べると数倍、感性が敏感です。あなたが一貫性のない態度を取っているといともたやすく見抜きますが、あなたの熱心さも同様に感じることができる高い共感能力を持っています。共感能力はあるのですが、いまはBPDという症状によってそれが生かされていないだけなのです。)

このように境界を設定するということは、BPDに対してのあなたの思いを整理することができ、よりよい関係性へ向けて進むことができるのです。

さて、BPDが何らかの感情を向けてきたら、実際どのように話し合うのかをご説明します。まずあなたの安全を守ってください。怒りを向けられ危険な状態になったとき逃げることができますか。逃げられる場をまず確保してください。そして、どの程度の時間話し合うのか、話し合う場所はどこがいいのか、を考えます。そして話を始めます。「こういう状況は問題である」ということを落ち着いて伝えます。落ち着くことが重要です。落ち着いて話ができないと、こちら側の感情の揺れの2乗倍になってBPDから感情が返されてくることを覚悟してください。そのためにも呼吸法などで落ち着きます。話は、説明しすぎないことです。

まとめますと、呼吸法などで落ち着いて、設定した境界を示しつつ、一貫性をもってIメッセージを伝えることです。タイムアウトも有効に使って行ってください。そのとき戻る時間も伝えることをお忘れなく。

b.BPDは考えて行動することが不得意です。それは考える能力がないのではなく、常に感情を優先させてしまうからです。このためBPDに考えさせる時間を与えることです。このためには、あなたが落ち着いていなければなりません。また、感情的になっているときは非言語的なもの(しぐさ、視線など)を察することができないのでしっかりと言葉で伝えるようにします。(高間注:BPDはとても共感性が高く、こちらの考えはお見通しのように思います。これはアメリカと日本の文化差もあるかもしれません。私が接するBPDの方は感情の嵐の真っ只中にいるようなときでも非言語的な会話に対してとても敏感であるように思います。)

c.BPDは敏感ゆえ、自分と少しでも違う意見に合うと、自分がけなされたと思い距離感をもってしまいます。これはBPDばかりでなく、我々も大なり小なり普段そのように思うクセがあります。違う意見は自分にとって居心地の悪いものです。その意見は意見として発せられたもので、自分の人格に向けて発せられたものではないと頭では分かっていても感情が少なからず反応してしまいます。このことをBPDへは、分かるように伝えることです。一度ならず、二度三度、何十回も伝えることです。(高間注:精神疾患を持っている方は特に、思考や感情の視野が狭くなっているので、何度でも言うことが重要です。しつこくならずに繰り返すことが重要です。また(1)で紹介した増井武士の本にはこのc.に対処するための方法が書かれていますので参考にしてください。)

d.BPDが向けてくる感情を流すこと。まず一呼吸置きます。そしてユーモアを交えて返します。リラックスして返します。あなたは攻撃を向けられているように思いますが、自分がBPDから攻撃されていると受け取らないようにしてください。これは自分の境界を保つということです。赤ん坊がダダをこねているだけ、自分のニーズだけを優先させているだけと思いながら、ユーモアで返答していきます。これが「流す」ということです。(別の記事にもありますが、自分を笑えるようになること、これはBPDの人にとっても治療の進度を計る上では重要な判断基準になります。自己実現と自分を笑えるということ)

(4)愛情を持って境界設定をすること。本気でやること。

(3)の中で、境界設定のことを詳しく書きましたが、4つ目のツールはこの境界設定を「愛情を持って本気でやる」ということです。決意して本気でやります。繰り返しになりますが、本気でやるときの心構えをお話しておきます。

自分をまず守ること。そして「BPDとの関係を守る」ということです。BPDとの関係をリセットしようとする行為は、関係のみならずBPDの人格まで否定する行為です。そのことを肝に銘じていてください。関係を守るために、タイムアウトをするのです。BPDとの関係の中で、自分に沸き起こってくる恐れ、義務感、罪悪感を避けるためにタイムアウトをします。タイムアウトは本気です。本気ですから、自分のことを本気でBPDに伝えます。自分の気持ちを伝えます。そしてしばらくその場から立ち去ります。これが自分を守ることであり、BPDとの関係を守ることです。

そのためには気持ちの余裕がなければなりません。本気でやるには余裕が必要なのです。普段の生活で自分がリラックスしているときに、呼吸法を活用できるようになってください。普段からユーモアを感じる心を大切にし、自分の中の心の容量を大きく保つことをしてください。これも本気でやってください。

BPDとの関係性とはプロセスであり、それは流れです。BPDとの関係に亀裂が入るのは流れが堰(せ)き止められるからです。いきづまりに直面するからです。そのため流れを阻害するものを正しく理解しておく必要があります。何が原因か、そしてどうしてそれができていないのか、そういうことに気づくことから流れの改善は始まります。

(高間注:クリーガー氏は境界設定のことについて幾度も繰り返し話していました。境界いわゆる限界を設定することは、BPDとの関係にある種の枠組みを明確にしていく作業です。枠にはめるということは、ある種の規制であり、BPDに対しても罪悪感を感じたりする人もいるかもしれません。しかし、もしそれが罪悪感につながっているならば、その枠組みは見直されるべきであるかもしれません。BPDと一緒に決めた枠組みを信頼できる第三者にチェックしてもらうことも有効な手段です。ともするとBPDに巻き込まれている関係になっていると、共依存の関係になっているかもしれず、そのような状態で枠を決めた場合、ムチや飴としての枠を決定してしまう可能性もあります。枠は罰ではないということをまず知るべきです。それが客観的に見て罰になっている場合は、二人で決めた境界をもう一度見直してみてください。)


(5)適切な行動が出てきたらそれをサポートする。

毎日の生活が治癒への道であるということを認識していてください。BPDが適切な行動をしたときは、褒めてあげてください。そうやって手に負えるものが少しづつ増えてくることで、BPDにコントロール感が根付いていきます。このコントロール間はBPDの症状改善に計り知れない効果をもたらします。

これら5つのパワーツールを実践しながら、自分とBPDにとって使いやすいものに修正しながら、手になじむものにしていってください。手になじむものは、お互いにとって負担にならないものです。そして、BDPがすっかり治癒した後でも、日常生活の場で一生使っていけるものになります。
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