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ソレア心理カウンセリングセンター

2018.07.12 |こころの発達

エディプス期(4歳~6歳)


4~6歳までをエディプス期と呼びます。



ちょうど幼稚園の3年保育の時期に当たります。この名前の由来はフロイトです。男根期というなんだか恐ろしい日本語訳がついていますが(笑)、性器に快感を得る時期を言います。男の子は母親に、女の子は父親に性的関心を持ち、男の子は父親を、女の子は母親を憎むようになる、という意味です。憎むという表現も結構恐ろしかったりしますね。精神分析ではそのように定義していますが、これは実際は性的な意味合いというよりも、これまで母親一色だった世界へ父親の存在が入ってくる、そのとき新しい世界が見え始める、という意味合いで理解してください。家族システム論ではそのように見ていきますし、そう考えるほうが現実的です。


幼児期後半は自他の区分がされていく時期でしたが、このエディプス期は母親からの自立と父性の登場が大きなテーマです。私は、自立という言葉の代わりに「自己分化」という言葉を使います。聞きなれない言葉かもしれませんが、そのほうが実際に即しているように感じます。自己分化については幼児期前期の話を参照してください。


これまで母親に守られた世界(心理学用語で母子カプセルと言います)の中で生きてきましたが、その世界から一人立ちする、母親と自分を分けていく時期がこの時期です。そして、ここに来て始めて、父親が登場してきます。それまでは父親は子どもと接していても母親の役割をしていたわけです。しかし、4歳になって父性というものが登場してくるのです。


父性は父親がその役割をするだけではありません。これまで父親が母性の役割も代行していたように、母親も父性の役割を担(にな)って子どもに接するようになります。


そして子どもは父性という力を使って母親から自分を分離させ、母子一体(母子カプセル)の世界から離脱し、社会という世界へ足を踏み出していきます。父性とは、(1)母子カプセルに亀裂を入れて風通しを良くする、(2)子どもに冒険をさせる、(3)安全に生きるためのルールを教える、この3つの機能です。


では、どのように父性が子どもの前に登場してくるのでしょうか。


父性とは、夫婦関係が子どもに見えるようになって始めて見えてくるものです。3歳までは父親は母性を分担していて、子どもにとっては父も母も母親(母性)でした。そして4歳頃になると、自分が依存している母の最も愛すべき存在として父親が登場してくるのです。女の子も男の子も、母親を父親に取られたと思います。ここで子どもは自分の「分(ぶ)を知る」ことになります。


これまでのようにずっと母親が添い寝をすることも少なくなります。夜にふと目を覚ましたら隣りに母親が居なかった。どこに居るのだろうと母親を探して明かりのついたリビングへやってきます。そしたらそこで母は父親と楽しそうに話をしている。これまで見たこともないような穏やかな顔をしている母親を見ます。ここで、子どもは、母にとってナンバーワンは父親なんだということを知ります。母親にとって自分が一番だという幻想が崩れ、自分は母親にとっては2番手で、1番目は父親だったのだということを知ることになります。これが分を知るということで、もっとも重要な父性の登場の仕方です。父親が登場して自分から母親を奪っていくのです。


そんなふうに父親が登場してくるので、この時期の子どもは親の性に直面して混乱します。母親、父親としての両親以外に、夫婦としての両親を見ることになります。父と母がセックスする姿を見て、とても怖い思いをして寝たふりをしている子どももいるでしょう。それがトラウマとなって大人になってから依存症へシフトするケースもあります。ですから、この時期は子どもと親が川の字で寝ないほうがいいのです。夫婦がセックスしないのであれば川の字でもいいですが、そんなわけにはいきませんので、この頃から子どもは自分の寝室があったほうがいいのです。


こうやって子どもの方は自分の分を知って、強烈な密着状態であった母子一体の世界(母子カプセル)に分かれを告げて、自分というものを、もっと広い世界(社会)に見つけようとしていきます。これが父性の登場であり、母親から自分を分かちていくのです。同時に、夫婦と子どもの間に世代境界のラインがうっすらとではありますが、このときに引かれていきます。


父親が母を奪うというと何か強烈な印象を受けるかもしれませんが、それまでの母親と一体になっている世界は安全ですが、息ができないくらいの窒息感があったわけです。安心できるけれど息苦しい状態です。「なんだかわからないけど、もう嫌だ!」という感覚があるわけです。父性はそんな子どもに、お前の属している世界はもっと広くて大きいのだぞ、さぁ、冒険をしなさいと、大海の向こうを指し示していくのです。



4歳を過ぎると子どもの成長も目を見張るばかりで体力もかなりついてきます。母親もいつも子どもに関心を持っていなくても、子どもだけでも大丈夫になってきます。母親と子どもの密着度がだんだんと弱くなってきます。ここで弱くならないと困るのです。母子カプセルが元のまま頑丈であるなら、子どもは窒息死するだけです。この時期の子どもは日に日に見違えるように活発になっていきます。危険な遊びにも身を投じる準備ができてきます。父親はこの時期に、手の届く範囲で見守りながら冒険する子どもを応援する役割があるのです。子どももお父さんと遊ぶのが嬉しくなります。お母さんならさせてくれない遊びも、お父さんと一緒ならいいよ、とOKをもらったりします。こうやって子どもは母親との蜜月(みつげつ)を卒業して、社会へ視線を向けていくのです。そのためには、父親は外の世界は楽しいのだということを子どもに示す必要があります。父親が楽しそうにしていないと子どもは父親をモデルにすることができません。これは父親と遊べるということばかりではありません。父親を通して見る社会も楽しいのだと思えることです。父親が隣近所や会社の人と楽しそうに交流している、母親との二人だけの世界にこれまで居たけれど、こんな楽しい社会があるのだ、という実感を与えられるか、ということです。


このとき父と子のかかわりを母親が信頼して見ているということが大切です。お母さんはお父さんのことを信頼しているんだという雰囲気が子どもに伝わることが大切です。


そしてこのとき、ルールを教えていきます。ルールというのは安全ということです。何をすると危険なのか、どうすると安全なのか、そのことを教えていきます。母性は子どもを揺りかごのように包むことで安全を作っていました。父性は子どもを社会へプッシュしながらこうやってルールを守ると安全なんだよと教えていきます。これが躾けです。


この父性ですが、父親だけがやるのではなく母親も父性を分担します。3歳まで父親が母性を分担したように、4歳以降は母親も父性を分担します。父性が登場するためには父親も変わらないといけない。母親も父性を分担するために母親も変わらないといけない。このエディプス期というのは、子どもだけの変化ではなく、父親も母親も大きく変化をする、家族全員が新しい役割へ入っていく時期と捉えてください。



夫婦の関係が悪いと母子カプセルを壊すことができず、いつまでたっても父性が登場しません。父性の登場がうまくいかなかったり、自分は2番手なんだという自覚が生まれにくかったりした場合、母も子も二人で母子カプセルの中に居続けます。この状態が依存症や思春期の問題、摂食障害にも影響します。これらアディクション(嗜癖)の問題は幼児期に源流があるわけですが、エディプス期のつまづき(父性の問題)も大きく影響するのです。


何をやってもうまくいかないという人も、この時期の問題を引きずっています。私はきっと成功する、私はすごいことができるという信念を持って生きている人がいます。これは誇大妄想的で躁的な生き方ですが、成功するという信念を持ち続けるには失敗する現実に直面してはいけないわけです。そのため現実的な行動を避けるようになります。例えば自分が天才的スポーツ選手でいるためにはスポーツをしないでいるわけです。スポーツをしてしまうと化けの皮がはがれます。こうゆうように評論家として生きているわけです。このような生き方では、何をやってもうまくいきません。エディプス期が宙ぶらりんになっている、この時期の成長が完了していないわけです。


AC(アダルトチルドレン)の問題は、父性が登場してこないことも大きく影響しています。家族の中で父親が子どもの役割を演じていたら、父性の登場のしようがないのです。父親が子どもの役割を演じるとは、妻が母親の代役になっている状態のことです。この状態の家族は、父性が登場しないばかりか、母子カプセルに風穴を開けることができないので、カプセルは余計に強化されます。子どもは体力もついてきて冒険したくてウズウズしているのに、いっこうに母子カプセルが割れない。それによって子どもは社会へ冒険を求めることができず、父親を巻き込んだ家族カプセル(あるACのクライエントさんはこれを「沸騰した圧力鍋の中にいる状態」と形容されていました。これはものの見事にその状態を捉えた表現だと感心しました。)の中でなんらかの役割を演じるようになります。4歳の子どもと母親との擬似夫婦関係が生まれるのです。

ACの4つのパターンと言われている、ヒーロー、スケープゴート、ロストチャイルド、マスコットなどの役割の源流はこの父性登場の問題にあると言われています。パターンを簡単に説明すると、ヒーローは他人の責任まで背負ってしまう良い子、スケープゴートは犠牲者、社会に背を向けた生き方をしてしまう行動家です。ロストチャイルドは自分に関心がなく自己主張しない子、マスコットは家族のなだめ役、ピエロ役です。アルコール依存、ギャンブル依存、ワーカホリック、トラブルメーカー、恋愛依存、薬物依存、摂食障害、ジェンダーの混乱、胃腸関連のストレス性疾患などさまざまな嗜癖関係の症状や状態が現れてきます。




参考図書:
カウンセリングに生かす発達理論(遠藤優子)
アセスメントに生かす家族システム論(遠藤優子)
子どもを支えることば(崎尾英子)
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